プリウスの実燃費は? 一般道、山道、東名高速で実証
燃費だけではない新型の魅力
新型2台と3代目のプリウスを連ねて、それぞれの燃費性能を徹底比較。その結果、新型の優れた環境性能と、走りの実力が明らかになってきた。
渋滞の中でも燃費が好転
新型のAプレミアム“ツーリングセレクション”から先代モデルに乗り換えると、同じ名前のクルマとは思えないほどのギャップに戸惑った。ボディのしっかり感に大きな差があり、クルマのクラスが違うようにさえ感じられた。試乗した3代目が5万kmを走行したレンタカーであることを考慮しなければならないが、それにしても隔たりは大きい。
- 17インチと15インチ、異なるサイズのタイヤを装着する2台の新型プリウスをテスト。タイヤサイズの違いは乗り心地とハンドリングに表れていた。
新型でもAプレミアム“ツーリングセレクション”とSでは差があった。Sと比べると17インチタイヤのAプレミアム“ツーリングセレクション”は乗り心地が若干硬い。もちろん3代目からは大きなアドバンテージがあるが、路面の状態をタイヤがそのまま拾って消しきれていないという印象だ。Sのしっとりとした感触は相当にレベルが高い。ただし、ハンドルのしっかり感は明確にAプレミアム“ツーリングセレクション”のほうが上で、2つの性能はトレードオフの関係にある。
神奈川・藤沢に近づくと国道1号線の交通状況は次第に悪化してきた。断続的に渋滞が発生し、遅々として進まない。燃費には厳しい場面である。しかし、実はこういうところでこそプリウスの真価が発揮されることを、思い知らされた。
- 15インチタイヤを履く新型プリウスS。荒れた路面でも、しっとりした乗り心地を実現している。
取材中に撮影を交えると、どうしても走行ペースが乱れ、燃費の悪化をまねいてしまう。渋滞が続けばさらに落ち込むことが予想された。しかし、案に反してモニターに表示される平均燃費はじわじわと上向きになってきた。少し進んでは止まるという状況が続いていたものの、しばらくすると燃費計の数字は25km/Lより上を示すようになった。
- 新型プリウスのモニター画面。燃費の履歴を細かく確認できる。
高速と一般道で燃費の順位は変わらない
渋滞の中にいても、エンジンがかかることはほとんどない。エネルギーモニターを見ていると、バッテリーとモーターの間で電気をやり取りしているだけという印象なのだ。モーターだけでゆっくり動き、減速で充電するというプロセスを繰り返していれば、ガソリン消費がないままに距離が増えていく。だから、大きな燃費の悪化に結びつくことがないわけだ。
- 4代目プリウスのセンターメーター。2つ並んだ4.2インチの液晶ディスプレイに、さまざまな車両情報が表示される。
新型プリウスは信号待ちや渋滞時で動かない時には、ほぼずっとアイドリングストップ状態が続く。3代目はある程度の時間が経過するとエンジンが始動するので、積み重ねで燃費に差が出ているようだ。新型は“EV感覚”が強く、それに比べると、先代のプリウスは、ガソリンエンジンを搭載していることを強く意識される。
- 新型プリウスは全高が先代よりも低められたが、その後席には先代と同等のゆとりが確保されている。
延々とストップ&ゴーを繰り返してきた一隊だが、神奈川県の大磯を過ぎたあたりから渋滞は解消され、ようやくスムーズに走行できるようになった。最終的に、日本橋から小田原まで国道1号線を走った距離は約95kmである。この間の区間燃費は、3代目Sが23.2km/L、新型Aプレミアム“ツーリングセレクション”が27.0km/L、新型Sが28.4km/Lだった。ノロノロ走行が多かったことを考えると、かなり良好な結果である。なおこの順位は、首都高速を走行したときと変わらない。
新型プリウス Aプレミアム“ツーリングセレクション” | 27.0km/L |
---|---|
新型プリウス S | 28.4km/L |
3代目プリウス S | 23.2km/L |
- 箱根新道を駆け上がるプリウス。急坂の登りではエンジンのパワーに頼らざるを得ない。
箱根のふもと、風祭駅の周辺で、トリップメーターをリセット。ここから山岳コースに入った。箱根新道を使って、標高1011mの大観山まで約20kmの道のりを走る。急坂が続き、途中に何カ所か登坂車線が設けられている。さすがに“天下の険”。プリウスのエンジンは常に回りっぱなしだ。「休日のお父さん」を想定したゆったりペースで走ったところで、瞬間燃費は10km/Lを下回ってしまう。
登りの道では燃費の差が縮小
箱根新道を登り切っての頂上付近は、高低差の少ない道になる。おかげで、燃費は少し回復。大観山でモニターを見ると、この間、つまり“箱根の山登り”限定の区間燃費は、3代目Sが11.1km/L、新型Aプレミアム“ツーリングセレクション”が11.4km/L、新型Sが11.8km/Lだった。ここでも3台の順位は保たれたものの、その差は大幅に縮まっている。新型Sは3代目Sを6%弱上回っているにすぎない。ハイブリッドシステムが十分に活躍できない状況では、その利点は顕在化しにくいのだ。
- 新型プリウスはリヤサスペンションが従来のトーションビームからダブルウィッシュボーンに変更されており、乗り心地と走行安定性の向上が図られている。
燃費の差は縮まったものの、ワインディングロードでは、新旧プリウスの操縦性能の違いがはっきりと表れた。ハンドリングうんぬん以前に、路面からのインフォメーションが、両モデルではまったく違う。「どれだけステアリングを切ればどれくらいコーナーで曲がれるのか」という点において、3代目は、4代目ほど確信を持つことができないのだ。
- ラゲージスペースは3代目より12%拡大し、502リッターとなった。
ワインディングロードを走ることに楽しみを見出だせるのが新型だ。スポーツカー並みとまではいかないが、コーナーを抜けるたびに重心の低さと剛性の高さを感じる。開発者は基本性能を上げることで安全性能を向上させることを目指したと話していたが、結果としてファン・トゥ・ドライブなクルマとなっている。
- ワインディングロードの走りには、新型と3代目に大きな差があった。
発売前にサーキットでプロトタイプに乗った時は、3代目と新型の違いはもちろんのこと、新型でも15インチモデルと17インチモデルで明確な差を感じた。フル加速と急減速を繰り返し、タイトコーナーで限界を試すような走りをすると、確かに17インチのアドバンテージは大きいと思えた。ただ、公道ではそんなむちゃなことはしないわけで、常識的なスピードで走るのであれば、15インチでもコーナリング性能にさしたる不満を覚えることはないはずだ。
山道で実感するハイブリッドの強み
箱根の大観山からふもとまでの下りは、自動車専用道路のターンパイクを通った。山頂ではトリップメーターをリセットしていない。上りの損失を下りでどれだけ取り返せるかを検証するためだ。下りではほとんどアクセルペダルを踏む必要はなく、モニターに示される電池容量はどんどん増えていく。下りきったところでは、全車ともにほぼ満充電になった。
- 山道の下りでは回生ブレーキが省燃費に貢献する。
箱根においては、上り下りの合計で52kmほどを走行。この間の燃費は、3代目Sが16.2km/L、新型Aプレミアム“ツーリングセレクション”が17.7km/L、新型Sが17.5km/L。この区間だけは順位に変化が見られ、、新型Aプレミアム“ツーリングセレクション”が首位となった。下りの道は、ハイブリッド車の強みがはっきりと表れるロケーションだ。普通のクルマと違い、減速することでためこんだ電力は、この先の走行で役立てられることになる。
新型プリウス Aプレミアム“ツーリングセレクション” | 17.7km/L |
---|---|
新型プリウス S | 17.5km/L |
3代目プリウス S | 16.2km/L |
- 帰路は東名高速を使って、渋滞にはまることなく東京都心部へと戻った。当然ながら、最も良好な燃費が記録されたのはこの区間である。東名高速の復路における区間燃費は、3代目Sが26.3km/L、新型Aプレミアム“ツーリングセレクション”が32.0km/L、新型Sが35.2km/L。新型Sは3代目を30%以上も上回る素晴らしい燃費である。高速道路では、市街地に比べて燃費のアドバンテージが見えにくいといわれるハイブリッド車だが、新しいハイブリッドシステムは、高速での燃費でもその強みを見せつけた。
新型プリウス Aプレミアム“ツーリングセレクション” | 32.0km/L |
---|---|
新型プリウス S | 35.2km/L |
3代目プリウス S | 26.3km/L |
- 東名高速を行く、新型プリウス。Aプレミアム“ツーリングセレクション”(写真)が32.0km/L、Sが35.2km/Lの区間燃費を記録した。
テストを終えて
今回のテストでは、多少の誤差は生じたものの3車は303km~308kmの距離を走行。満タン法で、3代目Sが24.9km/L、新型Aプレミアム“ツーリングセレクション”が26.2km/L、新型Sが28.1km/Lという燃費を記録した。
新しいプリウスは、環境車としての性能を着実に向上させていた。3代目の燃費だって優秀なものなのだが、この驚異的な数字の前では、それも色あせてしまうというものだ
プリウスのDNAは燃費性能であり、この結果はたたえられるべきだろう。ただ、新型プリウスを最も輝かせている点はほかにあるように思われる。なにしろ、運転していて楽しいのだ。環境車だからといって、我慢する必要は一切ない。基本性能が飛躍的に上がり、スポーティな走りができる。TNGAという新たなクルマ作りの実践により、プリウスは全方位的に進化したと言えるだろう。
新型プリウス Aプレミアム“ツーリングセレクション” | 26.2km/L |
---|---|
新型プリウス S | 28.1km/L |
3代目プリウス S | 24.9km/L |
(文=鈴木真人/写真=田村 弥)
<テストにおける燃費データ>
プリウスAプレミアム“ツーリングセレクション”
①首都高速(79.1km):30.3km/L
②一般道(94.7km 日本橋~小田原間):27.0km/L
③峠道(52.4km 小田原~箱根大観山~小田原):17.7km/L
④高速道路(79.8km 小田原~厚木~渋谷):32.0km/L
トータル306.0km:26.4km/L ※以上、車載燃費計計測値
給油量:11.7リットル
満タン法計測燃費:26.2km/L
【テスト車のスペック】
ボディサイズ:全長×全幅×全高=4540×1760×1470mm
ホイールベース:2700mm
車重:1390kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リットル直4 DOHC 16バルブ
エンジン最高出力:98PS(72kW)/5200r.p.m.
エンジン最大トルク:14.5kgf・m(142Nm)/3600r.p.m.
モーター最高出力:72PS(53kW)
モーター最大トルク:16.6kgf・m(163Nm))
プリウスS
①首都高速(78.9km):31.3km/L
②一般道(93.6km 日本橋~小田原間):28.4km/L
③峠道(52.1km 小田原~箱根大観山~小田原):17.5km/L
④高速道路(78.9km 小田原~厚木~渋谷):35.2km/L
トータル303.5km:27.5km/L ※以上、車載燃費計計測値
給油量:10.8リットル
満タン法計測燃費:28.1km/L
【テスト車のスペック】
ボディサイズ:全長×全幅×全高=4540×1760×1470mm
ホイールベース:2700mm
車重:1360kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リットル直4 DOHC 16バルブ
エンジン最高出力:98PS(72kW)/5200r.p.m.
エンジン最大トルク:14.5kgf・m(142Nm)/3600r.p.m.
モーター最高出力:72PS(53kW)
モーター最大トルク:16.6kgf・m(163Nm)
プリウスS(3代目)
①首都高速(79.6km):27.1km/L
②一般道(95.4km 日本橋~小田原間):23.2km/L
③峠道(52.8km 小田原~箱根大観山~小田原):16.2km/L
④高速道路(81.0km 小田原~厚木~渋谷):26.3km/L
トータル308.8km:23.1km/L ※以上、車載燃費計計測値
給油量:12.4リットル
満タン法計測燃費:24.9km/L
【テスト車のスペック】
ボディサイズ:全長×全幅×全高=4460×1745×1490mm
ホイールベース:2700mm
車重:1350kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リットル直4 DOHC 16バルブ
エンジン最高出力:99PS(73kW)/5200r.p.m.
エンジン最大トルク:14.5kgf・m(142Nm)/4000r.p.m.
モーター最高出力:82PS(60kW)
モーター最大トルク:21.1kgf・m(207Nm)
[ガズー編集部]
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