クルマの進化の方向性-自動車が抱える課題と、その解決策とは

ガソリンエンジンの自動車誕生から130年。今、日本には約7700万台、世界では約12億台ものクルマが走っている。

日本では少子高齢化が問題になっているが、世界の人口は今も右肩上がりだ。新興国の発展とともにクルマに乗る人も増えるため、2030年には世界の自動車は20億台を超えると予測されている。

今後さらに台数を増やし続ける自動車の、現在の課題と可能性について、全体的に見ていこう。

EVにFCV…、続々と生まれる環境対応車

自動車が抱える大きな課題のひとつが、地球温暖化や燃料枯渇などの環境問題だ。その解決に向けて、各自動車メーカーはさまざまな環境対策車をリリースしてきた。

代表的な存在が、これまで900万台以上を販売したトヨタのハイブリッド車だ。EV(電気自動車)では、日産・リーフが発売5年で20万台を突破。欧州メーカーからも数多くのPHV(プラグインハイブリッド)がリリースされている。

また、次世代をにらんだFCV(燃料電池車)もトヨタMIRAIとホンダ・クラリティがデビューした。もちろん通常のエンジン車も効率アップには余念がなく、驚くほどの燃費向上を実現している。環境対応車は今後も進化を続けていくだろう。

自動運転技術が自動車事故を減らす鍵になる

環境問題に次ぐ大きな課題は、交通事故問題だ。日本では今も毎年50万件以上の交通事故が発生し、4000人あまりの人が亡くなっている。特に高齢者は死亡者に占める割合が高い。昨年(2015年)の交通事故死亡者の54.6%が65歳以上だ。自動車の普及が爆発的に進む中国やASEAN、南米などでも、交通事故は深刻な問題となっている。

事故を減少させるには、「自動運転技術」と「コネクテッド技術」という、互いに関係の深いふたつの技術が効果的だ。交通事故の9割がドライバーなど“人間”に原因があるとされているからだ。クラウド技術を利用した高度な自動運転技術が実用化されれば、そうした人間のミスを劇的に減らすことが期待できる。

実際に、これらの技術の一端は、すでに実用化されている。スバルのEyeSightやトヨタのToyota Safety Senseといった衝突被害軽減自動ブレーキを含む安全運転支援システムは、すでに日本では市民権を得た技術と言っていいだろう。
次なるステップとして、アメリカのテスラ社と日産は、単一レーン内をシステムがステアリング制御しながら走る自動運転技術を量産車に採用した。メルセデス・ベンツの新型Eクラスはその上をいき、レーンチェンジを自動で行う機能も加わっている。

一方でGoogleなどのIT系企業は、ドライバーをまったく必要としない、新しいモビリティの開発に余念がない。日本においても、「2020年の自動運転実現」を合い言葉に、各メーカーが自動運転技術実用化に全力を注いでいる。

IoTが進むとクルマはどう変わる?

「自動運転技術」と「コネクテッド技術」が進化していけば、目の前の問題/課題をクリアするだけでなく、まったく新しいモビリティの在り方という扉が開くだろう。インターネットとつながった自動運転車が実用化されIoTが進めば、現代では思いもよらぬ自動車との付き合い方が、未来で生み出されるはずだ。

「カーシェア」や「パーク&ライド」、「超小型モビリティ」などの新しい自動車の利用方法が定着すれば、ASEANなどで大きな課題となっている都市の渋滞問題解消も夢ではない。そうした新しい利用方法に「コネクテッド技術」と「自動運転技術」が加われば、少子高齢化や過疎問題に苦しむ日本の未来の課題解決にも、大きな期待を抱くことができる。

​これまで、自動車は数多くの問題にぶつかり、そのたびに課題を克服することで技術を磨き上げてきた。これからも壁を乗り越えていくことで、自動車は未来でも人々に幸福をもたらす存在であり続けることだろう。

(鈴木ケンイチ+ノオト)

今後、クルマがどのように変化・進化していくか“クルマの未来予想”を様々な有識者の方への取材の元、毎週火曜日、連載していきます。お楽しみにして下さい。

[ガズー編集部]

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