京都大学 高坂会のホームページ

日本を代表する国際政治学者であり、熱狂的なトラキチ、そして、ちょっとだけタレントとしても活躍された故・高坂正尭先生の門下生(ゼミ生)で作る高坂会のホームページです。会員の交流&情報発信の場として利用させていただきます。世界各地を飛び回っている高坂先生の教え子の近況や今後の日本の針路に関する真剣な議論を公開させていただきます。

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高坂先生13回忌に寄せて[奥 総一郎/17期]

今日は高坂先生の13回忌の命日です。あらためて先生の生前の偉業を振返るとともに、少なからず教えを頂戴した者の一人として、感謝し、微力ながら先生のご遺志を受け継いで実現していきたいと気持ちを新たにしました。さて、そんな同期の一人、17期の奥くんが寄稿してくれましたのでご紹介します。


銀行に就職するようなヤツは罰金や!

17期 奥 総一郎

 高坂先生は、銀行に就職した私の顔を見ると、事あるごとに「銀行は嫌いや」と言っておられた。ゼミ総会の二次会でご一緒した際に「銀行に就職するようなヤツは罰金や!」とおっしゃって、本当に罰金を徴収された記憶もある(笑)
 ただ、そうおっしゃる時の先生は、いつも例の調子でニコニコされていたように思う。
しかし、95年初夏に同期の前原誠司君の披露宴で久しぶりにお目にかかった時、いつもと全く違った様子で顔を真っ赤にされて、以下のような強烈なお叱りを受けた。
 「奥!銀行はとんでもないで。バブルの時に浮かれて料亭のおかみに何千億円も貸し込んだり、さんざんいい加減なことしといて、焦げ付いてどうにもならんようになったら、今度は税金入れてもろて生き延びようとしとる。おまえら、ほんまにしっかりせなあかん!」
 私は銀行員のはしくれとしてひたすら平身低頭するしかなかったが、一方で、先生にこのように真正面からハッパをかけて頂けたことを嬉しく思う部分もあった。
 だが、私はその直後に英国に赴任することとなり、結果としてこれが私にとって、先生の最後の言葉になってしまったのである。

 私が海外でハイイールド債や、MBO劣後ファイナンス(メザニン)、ディストレス(企業再生)業務等、当時日本人があまり近寄ろうとしないものの、将来の日本の金融市場に役立ちそうな業務を必死で学ぼうとしたり、日本に帰国してからも、自ら進んで企業再生業務に携わったり、あるいは銀行を退職してPEファンドの運営に参画し、企業へのリスクマネー供与のために汗をかいたりと、周囲から「モノ好きだなぁ」と呆れられるような仕事ばかりしているのも、やはり先生の最後の叱咤・激励に何とか少しでも応えたいとの思いによる部分が少なからずある。

 金融業界は今、極めて厳しい環境に置かれている。
 過去10数以上にわたり、金融システム維持のために、95年の日本の量的緩和を皮切りに、市場クラッシュが起るたびに各国の中央銀行が資金供給を続け、実態経済と釣り合わないマネーを市場に溢れさせたツケが回ってきている感じである。
結果として、今回のサブプライムショックなど、市場クラッシュのインパクト(システミックリスク)が雪ダルマ式に大きくなる一方で、日本のみならず欧米まで低金利となって(国債価格が上昇)、中央銀行による金融調節の効力が薄れるだけでなく、従来は、かかる信用収縮が起った際に国債購入に向かっていたリスク回避資金が、国債価格が上昇し過ぎて価格下落リスクが大きくなり(低金利⇒金利上昇リスク大)、原油・金等の「商品」に逃げてしまうという現象を引き起こしているように見える。
 本来なら国債購入⇒市場金利低下⇒景気刺激・回復というサイクルが生まれるはずが、資金が商品に流れると、原料価格高騰⇒企業の仕入価格上昇⇒収益圧迫、物価上昇⇒消費低迷といったネガティブスパイラルに陥り、実体経済への影響も現実のものとなりつつある。

 そのような状況を目の当たりにして、改めて私がまだ学生だった20数年前に、高坂先生が「ええか、これからは金融自由化っちゅうのが進んでな、実需とはかけ離れたところで、中東のオイルマネーという膨大な資金が市場をかく乱することになるから、金融業界は難儀なことになるで。」と言っておられたことを思い出した。
 当時は先生の言葉の意味もよくわからず、罰金を取られてまで銀行に就職してしまった訳だが(苦笑)、今になって先生の予言が何十倍ものマグニチュードで襲ってきて、凡人の私にもようやくその言葉の意味が骨身に染みて理解できたと共に、政治のみならず金融にまでこれだけの先見の明を持っておられた先生の凄さに改めて敬服するばかりである。

 私には、高坂先生に認めて頂けるほどの業績はとても残せないかもしれないが、せめて天国から「まあ、奥もそれなりによう頑張っとるな」と思って頂けるように、これからも微力ながら力を尽くしたいと思う。
(レゾンキャピタルパートナーズ株式会社)

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