ニュル24時間 レースレポート
加速し続ける、偉大なる草レース

“世界一の草レース”の異名をとる「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」が今年もドイツで開催された。エントリー台数は222台、レース愛好家によるアマチュアチーム、有力レーシングチーム、そして大観衆が一体となって、年に一度のお祭りを思い思いのスタイルで堪能した。

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1970年に始まった「ニュル24時間」は36回目を迎えた。初年度の優勝マシンは、今やコレクターズアイテムとなっている名車BMW 2002 ti、レーシングカーのベースとなった市販車の最高出力は約120馬力だった。今年、3連覇を達成した市販レーシングカー、ポルシェ911GT3 RSRは約485馬力(出荷時)。時の流れと共にパワーは実に4倍に、スピードも格段にアップしている。しかしながら、「ニュル24時間」のコンセプトに揺るぎはない。比較的緩やかな参加条件で、クルマとレースを愛する全ての者にその門戸を開き続けている。だからこそ、トヨタ・ヤリス(ヴィッツ)、ホンダ・シビック、ルノー・クリオ、新旧ミニといったコンパクトカーから、メルセデス、BMW、コルベット、アストンマーチンに至るまでの多種多様なマシンを10代から60代までのアマチュアとプロが駆り、それぞれのスタイルでレースを楽しむことが可能になる。

舞台のニュルブルクリンクは、1927年に建設された歴史あるサーキット。自動車メーカーの車両開発、特に“走り”に重きを置いた車両の“味付け”(仕上げ)テストの聖地と言われ、非公開のテストデイにはパパラッチがフェンス越しにスクープを狙う。雑誌やネットで見かけることがあるカモフラージュが施されたスポーツカーはここで撮影されたものも多い。全長約25km、170を超えるコーナーの大半がブラインド、山間部に位置するために起伏に富み、コース幅は狭く、さらに路面には無数の凹凸が存在する。サーキットと言うより、クルマにとって難行苦行の山道と呼んだ方が相応しい。ここで鍛え上げられたクルマが世界中のあらゆる道で通用する所以である。

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日本最高峰のスーパーGTなどで活躍するベテランの松田秀士は話題の新型インプレッサで参加。「ニュルは2回目だけど、ここはコース攻略のポイントを見つけるまでがとにかく大変。24時間の終盤になって、やっと本気で攻めることができるくらいの難しさがある。正直なところ危ない(笑)。こんな奥の深いサーキットは他にないよ」。同じく松田晃司は「プレステのグランツーリスモで練習はしてきたけど(笑)、狭いコース幅もアップダウンも未知の世界。初めての練習走行ではいつものように思い切ってアクセルを踏めなくて悔しかった。常識が通用しないコース」。トップドライバーにとっても難行の場である。しかし、苦行であるのか?
と言うと・・・、何人もの選手が「難しいからチャレンジし甲斐がある」、「怖いけど、これはハマル」、「毎年ちょっとずつ得意なコーナーを増やしていけばいい」、「もはやライフワーク」などと楽しそうに語る。そして、毎年1000人近いドライバー達が「ニュル24時間」に集う。


コースサイドにテントやキャンピングカーが並ぶのも最大の特徴のひとつ。サーキットに到着した木曜日の時点で早くもバーベキューやパーティーを楽しむファンの姿が見られて驚いていると、「いやいや、月曜日から陣取っている常連もいるから」と地元の関係者。年に一度のビッグイベントをとことん楽しもうという姿勢はファンも同じ。肉やソーセージを焼く香ばしい煙と積み上げられたビールの空瓶、喉をからしての声援は、練習走行、予選とスケジュールが進む頃にはサーキット全体を覆い尽くす。15年以上連続出場しているある選手は、「これこそがニュル。夕方、コーナリング中にバーベキューの良い香りがしてくると、今年も帰ってきたなと感じるね」。チームが夜を徹して戦えば、ファンは夜を徹してお祭りを味わう。

また、サーキットの入口周辺には参加自動車メーカーの展示ブースや大会スポンサーであるプレイステーションの体験コーナー、ニュルブルクリンクのロゴとサーキット図が映えるお土産品の売店が立ち並び、レースを訪れたファンを楽しませる。レクサスのブースには5月10日に開催された「VLN4」でクラス2位入賞を果たしたTeam GAZOO IS250が誇らしげに展示され注目を集めていた。



レースを制したのはポルシェ911GT3 RSR。地元の雄、マンタイレーシングは序盤にトラブルに見舞われながらも不屈の闘志とチームワークで3連覇の栄誉に輝いた。日本車勢のトップは、終盤、トップ10圏内を走行しながら惜しくもマシントラブルで後退したフェアレディZの23位、田中哲也、星野一樹らがステアリングを握った。レースデビューで注目を集めたスバルの新型インプレッサは、服部尚貴ら日本人4名によるドライブで58位完走を果たした。この他、ホンダ・S2000が29位、シビックタイプRが37位、RX-7が69位、トヨタ・オーリスが127位など29台の日本車が完走を果たしている。

→レース結果


参加222台中、完走150台、66台ものマシンが涙をのんだ。いや、この表現は「ニュル24時間」に限っては適切ではない。チームスタッフが心を込めて整備したマシンをドライバーが強靭な精神力で操り、コースサイドを埋め尽くしたファンは情熱あふれる声援を送り続け、運営スタッフとコースオフィシャルは徹夜で見守った。レースを愛してやまない全ての者が、それぞれの24時間を戦い抜いたというべきであろう。