特別取材 「プリウスカップ」の魅力とは?

工夫が数字に出るレース 第3回 TSタカタ(広島県)島下泰久の究極のエコラン

エコドライブトレーニングのインストラクターも務める自動車ジャーナリスト、島下泰久が燃費を競う「プリウスカップ」に挑戦!持ち前の理論を駆使すれば、優勝は間違いなし……ですよね?

  • 『プリウスカップ』レポート動画はこちらから
  • 『プリウスカップ』フォトギャラリーはこちらから

難易度、高いゾ!?

「プリウスカップに出ませんか?」

GAZOOチームの方からそんな誘いの声をかけていただくまで、自分ですらも忘れてしまっていたのですが、実はこのワタクシ、10年ほど前には腕を磨くためにレースに打ち込んでいた時期がありました。
久々のサーキット。忘れかけていたコンペティション。涌き上がる熱情……。

しかし、よくよく聞くと、この「プリウスカップ」は、単に速く走ればそれでいいという競技ではなかったのでした。
“クルマがプリウスだって時点で気付こうよ”という話ですが、競うのは燃費と速さの両方。つまり、あらかじめ決められた基準タイムにできるだけ近い速さで走りながら、なおかつその中で好燃費を狙わなければなりません。難しいですが、これはやり甲斐があるってものです。

やる気を高める要因が、もうひとつ。実は今回、GAZOOチームで一緒に組ませていただいたのが、何とトヨタ・チーム・トムスの舘信秀代表だったのです。舘代表と言えば、古いレースファンの方は「マカオの虎」としてご存知のはずの、元レーシングドライバー。ついでながら後で調べたら、大学の先輩でもありました。
舘会長とワタクシ、そしてGAZOOレディの3人で、いざ出陣です。


広島のTSタカタサーキットに、中国地方から17のチームが終結!


まずはルールをアタマに入れる。気持ちが昂るドライバーズミーティング。


広島戦のGAZOO号は、ブルーのロゴが目印。頭上には青空も広がって……

マシンの特徴も要チェック

本来はメカニックが整備の腕を競うサービス競技の結果によってスタート順が決まるのですが、我々はゲスト参加ということで最後尾からスタートします。スタートドライバーは舘代表。そして2番手がワタクシの番です。
どんな競技でも、やはり直前には緊張するもの。ヘルメットの紐をキツく締め直して、いよいよコースに向かいます。
»サービス競技ルール詳細
»走行競技ルール詳細


走行前、余裕の(?)笑みを浮かべる、筆者(写真左)とTOM'Sの舘会長。


もうひとつの戦いが「サービス競技」。整備の腕の見せ所だ。


GAZOOチームのマシン&ピット。走行順も決まって、いざ練習走行へ。

プリウスのハイブリッドシステム「THS II」は、高膨張比のアトキンソンサイクルを採用する排気量1.5リッターのガソリンエンジンと2基の電気モーターを組み合わせており、走行はエンジンを主体に、モーターが適宜アシストしてくれます。
そのモーターを駆動するバッテリーを充電するのは、エンジンそしてブレーキによる回生。簡単に言えば、減速時に普通のクルマではブレーキによって熱として失われてしまうエネルギーを回生して、それを加速に再利用することができます。これこそがハイブリッドシステムの、まさにキモなのです。

燃費モニターに目は釘付け

プリウスで燃費を稼ぐコツ。それは出来るだけエンジンを使わず、エネルギー回生を利用して効率良く充電を行ない、そしてバッテリーだけで走る時間を増やすことです。それを意識しつつ、タイムも意識しながら久しぶりのプリウスを走らせていた……つもりだったのですが、ふと燃費モニターを見やると、どうも違和感のある数字が表示されています。「あれ? コレが今の燃費? どうしよう? 全然良くないじゃん!」
この時点で、残り周回数はもう半分。ですが、このままじゃ帰れないと、プライドを賭けて、それまで以上に丁寧に丁寧に運転に徹します。すると……燃費モニターの数字が、さっきよりグンと大きくなっています。そう、燃費が良くなってきたのです。やれば出来るじゃん、オレ!

わかったのは、思っている以上にアクセルは踏まなくていいということ。それまでもミリ単位で踏んでいたつもりだったのですが、極端な話、アクセルはペダルに足を乗せる程度で良かったようです。ああ、タイムを競うわけじゃないからと、持参したレーシングシューズではなくスニーカーで挑んだのも失敗だったのかも。

そのうち、上り勾配では徹底的にモーター走行に頼り、スピードの遅いコーナーではEVモードに入れてしまうという荒技まで駆使し出すと、燃費はいよいよ向上してきました。


いよいよ走行競技がスタート! 合図とともに1台ずつ送り出される。


「ペース落とせ」「そのままキープ」各チーム、サインボードで指示を出す。

楽しくて、悔しくて

しかし、追い上げもそこまで。規定周回は終了です。燃費は奇しくも舘選手と同じ19.8km/リッター。最後の3周だけでリッター当たり3.0km分ほども向上していたので、最初からその走り方だったらと思うと……ああ悔しい!

しかも、その悔しさを更に加速させる出来事が起こります。何とチームメイトのGAZOOレディーが、22.9km/リッターという好燃費を叩き出したのです!
うなだれる舘選手とワタクシ。情けない……。

その後、他チームの結果を聞いて、更に驚かされました。最高燃費を記録したトヨタカローラ山口「チームおれんじ〜ず」の姫野悟さんの記録は、何と31.4km/リッター! 同じクルマで同じコースで、こんなに差がつくなんて……。他のメンバーも平均して好成績、しかもサービス競技でも好結果を残した「チームおれんじ〜ず」は、見事優勝を飾ったのですが、まあそれも納得ですね。

初めて参加させていただいた「プリウスカップ」、おかげさまで最高に楽しめました。と、締めたかったのですが、正直言って楽しんだ一方で悔しさもひとしおです。
うーん、やはりこのまま引き下がるわけにはいきません。実はひとつ、作戦も考えています。「プリウスカップ」、雪辱を果たすべく、絶対に再挑戦したいです!


満員の応援席。チームのみんなで仲間の走りを見守る。


力走をみせるGAZOO号。肝心の燃費は……?


抜いてもよし、抜かれてもよし。競うのは、あくまで燃費。

(文=島下泰久)

島下泰久:プロフィール 学生時代から自動車雑誌の編集に従事し、1996年、フリーランスのモータージャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2008−2009日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員もつとめる。著書に『極楽ガソリンダイエット』(二玄社)がある。
舘 信秀:プロフィール 株式会社トムス代表取締役会長。トヨタ車用のカスタマイズパーツを企画製作販売しながら チームを運営する一方、レーサーとして国内外で活躍。 1982年に現役レーサーを引退するも、チーム代表、 監督として“夢”を追う情熱は加速する。 »キーパーソンインタビューはこちら

関連リンク