ホーム > GRMN / G's > マイスターが語るノアG's・ヴォクシーG's-クルマの味づくりインタビュー-

G's ノア/ヴォクシーの最大の特徴となる“走りの味”を監修したGAZOO Racingマイスター成瀬弘氏に“G'sの味”についてお聞きした。

木下:ついに本格始動を開始したG's。デビュー第1弾はなんと、ノア/ヴォクシーである。
「いきなりミニバンからリリースしたことを、意外に感じられる方もおられるかもしれないですね…」
そういって説明をはじめてくれたのは、G'sの開発を取りまとめた沖野さんである。
沖野:「理由はシンプルです。ミニバンのユーザーは走りに飢えているからです。家族のことを優先してファミリーカーを購入された方々ですね。だけど、根底には走りたいという欲求をお持ちなんです。いろんな事情があって、スポーツカーから離れていった。だからそんなお客様にも、走りのいいモデルをお届けしたいと…。それが理由なんですよ」
コンセプトは明快である。家族の団欒を背後で耳にしながら、運転席で耐えるお父さんの姿が思い浮かんだ。
「そもそもG'sをサッカーに例えれば、“Jリーガー”のような存在ですね。“日本代表”は『GRMN』に相当します。マラソンで言えば“ジョガー” がG'sです。『GRMN』は“五輪強化選手”となるでしょうか。その意味から言えば、G'sがノア/ヴォクシーから発売を開始したことの意味は深いと思いますよ」
目をキラキラとさせて語る表情が、爽やかだ。GAZOO Racingの抱える二大ブランドの棲み分けに、迷いはないのだ。





※写真はコンセプトカーです


木下:セッティングを担当したトヨタ・マスタードライバーの成瀬弘さんは、どう認識しているのだろうか?
成瀬:「だいたいねぇ、トヨタという会社は真面目すぎるんですよ。だからせっかくのいい素材があるのに、味が薄れてしまう」
いきなり成瀬節炸裂に身構えた。
「物作りの考え方を、ここで変えてやる、って意気込みですわ。がらりとね…」
いつものように、鼻息は荒い。となれば、ノア/ヴォクシーのあの柔軟な乗り心地を犠牲にしてでも、スポーツ性能を尖らせた硬派なモデルに仕上げたのだろうか?
「とんでもない! ほらっ、操縦性能を高めると乗り心地は悪くなる、って単純な発想にすぐになる。それだからいかんのですわ。その考えを改めたいんですな。乗り心地は凄くいいですよ。だけど、走りもいい」
たしかにメルセデス・ベンツなんて、乗り心地もいいけど、走りも整っている。
「ほらねっ?」
火に油を注いでしまったようで、成瀬節は勢いを増した。
「ぼくはね、乗り心地の悪いクルマは嫌いなんですよ。ファミリーカーはもちろんのこと、スポーツカーであってもね。木下君に乗ってもらっているLEXUS LFA、あれ、乗り心地が悪いですか? とてもいいでしょ?」
たしかに成瀬さんが開発をしたスポーツカーの数々は、驚くほどしなやかな乗り心地を得ている。特にLEXUS LFAは、超ド級のスポーツ性能を発揮しながらも、信じられないほど乗り手に優しいのだ。不快な突き上げは一切ない。
「スポーツカーだってできるんだから、ノア/ヴォクシーも、基本は同じなんですわ!」
そう言って、自信のみなぎる不敵な笑みを浮かべた。
「だってボクはねぇ、セッティングをはじめる時にまず、後ろの席に乗るんですよ。
これはボクの不変のスタイルなんですよ。まず後ろからチェックする」
どんなクルマでも?
「知らなかった?」
開発はすべて?
「なんでも後ろからですよ」
スポーツカーも?
「2シーター以外はね!」
意外な発見である。
「運転席から一番遠いところをまず確認する。すると、その素材の持っている欠点がすごくわかるんですわ」
欠点の見極めは、優れたセッティングを導き出す近道になる。
「リアサスの粗い突き上げは大嫌いなんだ。だからリアからチェックしていく。そんなプロセスでセッティングをしていくんだから、乗り心地が悪くなるわけがないんだよ」
数々のスポーツカーを仕上げてきた成瀬流開発術は、むしろノア/ヴォクシーのようなミニバンでこそ生かされるのだろうと思った。
「だからね、ぼくが作ったクルマがなんと噂されているか知ってる? “妊婦の方にも優しい”って言われているんだよ」
子供にも優しい?
「生まれる前から優しい!」
そう言って豪快に笑った。

どんどん成瀬ワールドに引き込まれていく。その理由は成瀬さんの半世紀に渡る経験と実績に裏付けされた、沸き上がるような自信が源にある。
ただし、ミニバンゆえの苦労もあったはずである。
「だから…」
理解の悪いぼくに成瀬さんは言葉を続けた。
「だからね。難しいことなんてないよ。タイヤがついていれば、どれも一緒だよ。トラックだってなんだって!」
商用車も?
「しかもこのG'sにはボディのスポット増もしているし、ヤマハのパフォーマンスダンパーが組み込まれている。特にアンダーフロアは強化されているんですよ。苦労なんて、ほとんどないんだよ!」
成瀬さんはそう言い切った。
でも、ミニバンは重心高が…。
「だから…。物わかりが悪いねぇ…。地球を走るんでしょ。だったらどれでも変わらないの!ステアリング握ったら、楽しく走りたいでしょ? 特にノア/ヴォクシーのお客さんには、我慢させたくない。だからいいクルマにした。ただそれだけ!」
では、開発を担当して満足度は100点?
「ぼくに満点なんてないの! 満点がないから開発してるんだよ。だから“味づくり”に終わりはないんだよ。ただしこれだけは言える。このG'sノア/ヴォクシーは、乗り心地とスポーツ度のバランスでは、この手のミニバンとしてはナンバーワンだと思うよ。とにかく、乗ってごらんよ!」
成瀬さんの、これほど自信のある表情を見たのは久しぶりのことに思えた。
G'sブランドの第1弾であるノア/ヴォクシーは、これから多くのユーザーを惹き付けるに違いない。


※写真はコンセプトカーです