Team GAZOOの挑戦 2008 クルマ作りの終わらない物語

レース・レポート

旅の始まりは、クラス2位の感動と共に。“クルマの味を探求する”をキーワードに ニュルブルクリンクの4時間耐久レースに出場したTeam GAZO0のIS250は,デビュー戦ながらクラス2位入賞を果たした。味探しの旅は、大きな感動と共に始まった。

VLN4はニュルブルクリンクを舞台に年間10戦が開催されるシリーズの第4戦、24時間レースの2週間前に行われることから、最終実戦テストとして出場するチームも多い。エントリー台数は192台、トヨタ・ヤリス(ヴィッツ)からホンダ・シビック、プジョー、BMW、ポルシェ、コルベットに至るまでの世界の様々なクルマと、10代から60代までの幅広い年齢層、アマチュアから現役のプロまでが集結。台数が多いため、ひとつのピットに4〜5台のマシンがひしめき合う。スタッフウェアをバリっと揃えた有名レーシングチームと、家族や友人同士で結成した即席チームが同居する。そしてそこにはお互いを尊重して助け合う無言のマナーがある。「ビッグな草レースを、思いっきり戦おう、そして一緒に楽しもう!」ピットのそこかしこから、そんな声が合唱のように聴こえてきた。

Team GAZOOの新しい挑戦は“クルマの味探しの旅”。ノーマルのレクサスIS250を素材に、レースやサーキット走行を通じて感じたことを少しずつフィードバック、味付けを施していこうというもの。旅の始まりの舞台は、昨年、アルテッツァのレーシングカーで“腕磨き”を行ったニュルブルクリンク。自動車メーカーが開発テストを行う全長約24キロのサーキットには、世界中の道路の厳しさが凝縮されていると言われる。サスペンションとルールで定められたロールケージやレース用シートベルトなどの安全装備以外はノーマルのIS250は、仙台SUGOサーキットでのシェイクダウンを終えてそのまま聖地へ運び込まれた。

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フリー走行
ニュルブルク城から見渡すと、サーキットが森に抱かれていることがわかる。正面の横長の建物がピットビル。1927年に建設され、64年にはホンダが日本車として初めてF1に出場した。自動車メーカーの車両開発、特に高性能車の仕上げの場所として知られ、非公開のテストデイにはスクープを狙うパパラッチの姿も多い。
フリー走行を前に車検を受ける。GAZOO.comのステッカーを見つけたドイツ人のモータージャーナリストが興奮気味に話しかけてきた。「お帰りなさい。新車、ステキなカラーリングだね。ところで、MORIZOは今年も走るのかい? 楽しみにしているよ。グッドラック!」。
車検場入口には長蛇の列。まるで世界のスポーツカーの見本市のよう。常連チームは慣れたもので、マシンのルーフをテーブル代わりにチェリーとドリンクでのんびりと待つ。車検から公式スケジュールが始まるため、再会の握手を交わしながら情報交換や談笑する姿も見られる。
9日(金)午後4時、2時間のフリー走行がスタート。レーシングマフラーから爆音を響かせながらピットアウトするマシンに交じって、エンジンもマフラーもノーマルのTeam GAZOO IS250が静々とピットロードを進む。唯一台のレクサス、しかも目立つカラーリングだけに視線とフラッシュを浴びながら味探しの旅へと出発した。
10日(土)午前7時45分から全参加ドライバーによるブリーフィング。予選と決勝をワンデイで行うため朝が早い(笑)。ここでは主催者からレースのスケジュール確認や諸注意。とにかく台数の多いレースだけに、一番重要なことは「お互いを思いやること」。
予選
8時30分、いよいよ予選が始まる。ドライバーリーダーのキャップがメカニックと入念な打合せ。新調されたレーシングスーツの胸には日本刀をイメージしたモチーフ、サイドには太刀筋が描かれている。味探しの旅の料理長は長年の経験とテクニックでチームを引っ張る。
レースデビューの昨年よりもかなり落ち着いた雰囲気で、モリゾウ選手がマシンへ乗り込む。レースの世界には“ヘルメットがしっくりと似合うようになった時が本当のレーサーになった時”という言葉がある。チームの誰もが安心した面持ちで堂々たる予選アタックを見つめた。
予選結果は総合182位(192台中)。日本で2日間のシェイクダウンを行っただけで持ち込んだマシンの感触を確かめながらまずまずのタイムを刻んだ。トラブルは皆無。午後の決勝レースでは、3人のドライバーが力を合せてじっくりと追い上げをはかる。
レースに必要な最低限の安全装備以外はノーマルのIS250。
CDやエアコンもそのまま装備されており、ドライバーの気分を盛上げた。
走行後のモリゾウ選手のコメント。「足回り以外はノーマルのクルマでCDをかけて(笑)、音楽と共にニュルを楽しむことができました。昨年より余裕がありますが、その分スピードが上がっているので少し緊張しながらいい汗をかきました。決勝を楽しみにしていて下さい」。
決勝
11時30分、気温24℃・路面温度33℃の好天の下、グリッドに全車が整列。日本から参戦した鮮やかなブルー基調のマシンにたくさんのカメラマンが集まった。スタートドライバーはモリゾウ選手。初の大役にやや緊張の面持ちでヘルメットを被る。
コースサイドでは鈴なりのギャラリーがスタートを見守る。キャンピングカーやテント、ガーデンテーブルにバーベキューセット、山積みのビールにフランクフルト・・・、観戦のプロが多いのもニュルブルクリンクの特長。誰もがこの瞬間を待っていた。
森に囲まれ起伏に富んだ約24kmのコースが舞台。合計200近いコーナーがマシンとドライバーに息つく暇を与えない。「怖いけど楽しいのがニュルの魅力」とは第2ドライバーのクミ選手。ひらりん選手は「ミスなく走って、確実に次のドライバーへマシンを渡すことが大事」と真髄を語った。
Team GAZOOは、もう1台、BMW M3を駆ってキャップを含む3名のドライバーがエントリー。終盤、クラストップを快走しながらもクラッチのトラブルで惜しくもリタイヤ。ライバルから「残念だったが、いいバトルだった」とねぎらいの訪問を受けるシーンが印象に残る。「ありがとう。僕達はきっとまたここへ帰ってくるよ」。
IS250は、BMW M3など3000ccオーバーのマシンと同じSP5クラスを走った。安定したラップタイムで周回毎に順位を上げ、終盤にはクラス2位争いを展開。ゴール間際にM3をくだし2位でチェッカーへ向かう。ピットに歓声が上がった。
総合95位、クラス2位。
表彰式では遠く日本から遠征した友への温かい拍手が湧き起こった。“味探しの旅の始まり”は感動と共に幕を閉じた。
「今回の旅で、どんな味付けを見つけましたか?」レース後、意外にもこの質問を声にすることはなかった。しかし、サスペンションのみのカスタマイズ、エアコンもオーディオも装備したままのスポーツセダンで、世界の名だたるスポーツカーやスポーツセダンと同じ土俵で戦い、素晴らしい成績を収めたTeam GAZOOのメンバーたちは、きっとこう感じているに違いない。「ほぼノーマルのIS250で、こんなにも楽しく、そして緊張し、時に恐怖も感じながらレースを味わえたことが、旅の始まりの最大の成果である」と。そう、“味探しの旅”は始まったばかり。そこから先は、今まさにメンバーの心の中で熟成が行われているのかも知れない。我々は彼らの次なる旅で、その味付けに触れることができるだろう。その瞬間が一日も早く来ることを願ってやまない。
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