【ミュージアム探訪】池沢早人師 サーキットの狼MUSEUM(中編)

隼人ピーターソンのマシンとして登場したトヨタ2000GT。ミュージアムには青のクーペに加え、映画『007』の劇中車をモチーフにした白のオープン仕様も展示されていた。
隼人ピーターソンがドライブしたマシンとしては、流石島レースに登場したBMW 3.0CSLも展示。隣に並ぶデ・トマソ・パンテーラも、「悪役のクルマ」として作品を飾っている。
スーパーカー時代のアイドルであるランボルギーニ・カウンタック。劇中ではハマの黒ヒョウのマシンとして登場している。
車内に「乗り込み禁止」のプレートが置かれている「カウンタックLP400S」だが、場合によってはシートに座れることも。興味のある人は、スタッフに声をかけてみよう。

芦川さん(ミュージアムの運営会社で専務取締役を務める芦川元昭さん)いわく、「はい。潮来のオックスことSさんというのは、すぐ近くの潮来市にお住まいの実業家で、何十台ものスーパーカーやクラシックカーなどを所有されているエンスージアストです。池沢先生はかつて『実はSさんのことを描くために、サーキットの狼という漫画を描いたんだよ』っておっしゃってましたね。で、池沢先生とSさん、そしてわたくしどもの会長が協力して、こことは別の場所にまずはスーパーカーだけの博物館を設立したんです。そして今から6年前、池沢先生のデビュー40周年を記念して『先生の名前を付けたミュージアムを作ろうじゃないか!』ということになり、ここサーキットの狼ミュージアムが誕生したわけです」

なるほど、世に一大ブームを巻き起こした『サーキットの狼』という漫画は、元をたどれば「Sさんという人のことを描きたい!」という池沢早人師氏の情念からスタートしたものだったのか。そんな秘話があったとは……。そして芦川さんの“秘話”はまだまだ続く。ちなみに来館者が比較的少なめなときであれば、取材班に限らず誰でも、こういったさまざまな秘話を聞くことができるだろう。

芦川さん「例えばこちらのトヨタ2000GTですが……」

おおっ、これは悪役だった隼人ピーターソン(『ふっほほほほ!見せてやるぜ!ユーとミーのテクニックの差をな!』等のセリフでおなじみの登場人物)が乗っていたアレか!
芦川さん「はい。これもですね、とある方が池沢先生に『俺の2000GTも漫画に登場させてよ!もう悪役でも何でもいいからさぁ!』と懇願したところ、本当に悪役として登場してしまったという裏話があります(笑)」

人とクルマに歴史あり、そして隼人ピーターソンのセリフにも歴史あり……なんだな。ちなみにハマの黒ヒョウが乗っていたこのカウンタックLP400Sですが、「乗り込み禁止」ってプレートが付いていますから、乗っちゃダメなんですよね?

芦川さん「いや、どうぞどうぞ。せっかくですから、ぜひ座ってみてください」

マジですか!苦節40年、カウンタックLP400Sのコックピットに座るという夢が今、かなうのか!中年になってしまったため、低くて狭いカウンタックの運転席に体を入れる際はギックリ腰になりそうですが!

芦川さん「一応は乗り込み禁止とさせていただいておりますが、わたくしどもの時間があるときには、極力ご希望に添えるようにしたいとは考えています。ですのでこのカウンタックは、もしかしたら『世界で一番乗降回数が多いカウンタック』かもしれませんね(笑)」

(文=伊達正行/取材協力=アニメディア・ドット・コム)

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[ガズ―編集部]