試乗で温泉旅行も行けちゃう!? 「中津スバル」訪問記

「アウトバックのディーゼルでポルシェ・911をついに引き離して……」席に着いて早々、ドイツ・ニュルンブルクリンクでアウトバックを試乗した時のエピソードを話し始めた中津スバルの代田社長。ハイパフォーマンスを当然とはせず、詳細まで話してくれます。お話しするたび、クルマのドライビングテクニックももちろん、コミュニケーションにおいても実に自在な方だと感じるのです。

真新しいアウトバックが私たちを迎えてくれた。悩みのタネは、社長おすすめのこのクルマも含め、売約過多で、現在圧倒的に売り物が少ないとのこと。納期を頂くのは心苦しいところ、と社長は頭を抱えられていた

先日行った広島取材の帰り、前日の真夜中に「中津スバルに寄りたい」と連絡をしたところ、大丈夫とのお返事をいただいたので岐阜県中津川市の中津スバルまでお邪魔することにしました。

お店の隣には、「前の桜があまりにもきれいだから」と「望桜荘」と名付けられた日本家屋がある。ここはスバルブランド50周年を機に整備された記念館だ。中にはまだスバル・360の面影を色濃く残した初代サンバーが納められている。ハンドルは前のオーナーのこだわりで、量産ハイパフォーマンスカーの先駆け「スバル・360ヤングSS」のものになっていたのを私は見逃さなかった。ちなみにその前の木について、この地方の面白い言い伝えというか慣習のようなものを教えてくださった。道路側はカリンの木、奥の方に樫の木が植わっている。何やら「表向きはカリン(借りん)、奥では樫(貸し)」ということらしい。中山道沿いで古くから栄えたこの地方の精神の根底のようなものを垣間みた気がする
望桜荘から見て、木々の向こうに停められているスバル車の数々も拝むことができる。クルマ好きなら落ち着いてなどいられない。しかし懐かしい佇まいの心地よい空間、それが望桜荘だ

地元の人々から厚い信頼を寄せられている社長

昼下がり、到着すると温かく迎え入れてくださった代田社長の傍らでは、何件も商談中。そのあとも敷地内を案内してくださる途中で、大勢のお客様が社長にご挨拶に訪れるのです。商談や入庫ではない方も多数。地域で「クルマのことは代田社長にお任せ」という方が多いようです。

敷地内に足を踏み入れると、この日は2台のレガシイ ブリッツェンが我々を出迎えてくれた。まばゆい赤いボディはひときわ目を引く

店舗の裏手には旧中山道があります。旧街道沿いという立地は、グランツーリスモメーカー「スバル」のディーラーとして、心なしか訪れる者の気持ちを盛り上げてくれるのです。

中津スバルは地域ごとに展開しているディーラーとは少し異なり、独立系ディーラーとして独自の運営をしています。それだけに、顧客の中津スバルへの信頼は厚く、北は仙台にもお客様がいらっしゃるのだそうです。その方は、社長に納車に来てもらいたい、とおっしゃるのだとか。「社長の慣らしの後で乗りたい」というのがその真意の模様です。

BRZも中津スバルお得意の車種の1台。周りのトヨタディーラーでまだ86が売れていない時にすでに相当の受注を抱えていたという。でもそれは「ふだん小型車を販売しているお店でスポーツカーを扱い出して簡単に売れるかといえば、無理もないこと」と語った。切磋琢磨しながら提案してたまたまユーザー層がマッチしたのだという。かつてモーターショーで発表された86のコンバーティブルについて「オープンカーが作れてこそ大人のメーカーだと思うので、あれは実現して欲しかった」と熱く語っていた

試乗プログラム「ドライブエクスペリエ」とは

また、試乗は完全予約制の有料のプログラム「ドライブエクスペリエ」が用意されています。新車のみならず、中古車も扱っていますが、普通「試乗」と言えば、ぐるっとお店のまわりをひとまわりするだけ。代田社長は、「それでは、あまりわからないんじゃないでしょうか?」と思ったそうです。そしてそのクルマの特徴なども、社長自らレクチャーしてもらえます。

ただ、いきなり「お目当てのクルマに、こってりと試乗」ができるわけではありません。

まず、最初に参加することになるAプランは、運転そのものを振り返り、ブラッシュアップできるプラン。これは皆さんが普段乗っているクルマでも良いのです。まず、運転の基本のキ。こういうことに注意して運転をすればより安全に、そしてよりスムーズに運転ができますよ、ということを振り返ることができる内容になっています。

最近ではサーキットでのドライビングレッスンなどもありますが、時々、改めて客観的に指摘してもらうことは案外大事なことだと思います。そこまでしなくても良いだろうという思いが、そもそも事故に繋がる発想。逆にいつも乗っているけど「大丈夫かしら?」というスタンスこそ、事故防止への第一歩なのですから。

そしてBプランとして用意されているのが、2時間ほど中津スバル周辺のオススメドライビングコースを、ご希望のスバル車で試乗ができるプランです。

そしてA、Bプランと体験した方のみが参加できるCプランはスバル車の試乗をしながら「中津川周辺のオススメの温泉などへ旅行に行けるプラン」です。地元に精通した社長が案内してくださるとか! この辺りは素晴らしい温泉にも恵まれた場所。実際にスバル車に乗ったら、アクティブに「お出かけ」してみたいですよね。それを実践できる試乗コースです。

また、これはご希望に合わせてオーダーメイドの試乗コースになるのだとか。こういう活動はスバル車の魅力を発信するだけではなく、地元の良さを多くの人に知ってもらう取り組みとしても大変素晴らしい企画ではないでしょうか。

最近のクルマはアイサイトなど、魅力的で話題の新技術もたくさん盛り込まれています。しかし一方で、厳しい安全基準をクリアしつつ、先代モデルをも凌駕する快適性、質感を求めた結果、「クルマが大きくなった」と言われています。しかし本当に持て余すほど大きいのか、その事実を無視できる取り回しなのか確かめるには、乗ってみないとわからないものなのです。

サンバーオープンデッキはおろしたてのデモカーだという。新たな需要を掘り起こす可能性を持っていると話す。近く試乗会を企画しているのだとか。ちなみに仕様は 4WD×MTだ

遠方からの来客も

こんなユニークなお店だからこそ、仙台ほどでなくても遠方から足しげく通われるお客様も少なくないのだとか。

屋内保管されていたこのクルマは320馬力のS203、貴重な一台だ。このクルマも神奈川のお客様が2週続けて来店、契約して帰られたのだそう

関東に住む方には「甲州街道」国道20号線はなじみ深いですね。日本橋からスタートし新宿を通りほぼまっすぐ東京を西へ。やがて神奈川〜山梨〜長野と進むと塩尻に到達。その道はそのまま国道19号線となり、この中津スバルさんの前を通っていきます。塩尻からの19号はドライブするのに気持ちのいい道です。日本らしい昔ながらの景色が広がりつつ、幅も広く比較的アップダウンも長い距離をかけてゆっくりとというルートが続きます。ドライブがてら中津スバルに寄ってみれば、新しいクルマの魅力に触れられるかもしれません。

「レガシイGT」や「インプレッサWRX」が豊富なのはスバル系のショップ、ディーラーではある程度当たり前のことと言えるかもしれない。しかし、中津スバルには「非GT」「非WRX」のマニュアル車も豊富に在庫されている。特にこのBP系「2.0i」の後期マニュアルは軽やかでトルクもあって楽しいクルマだが、極めて希少。今回2回目の訪問となる筆者、2回とも在庫されている点を看過することはできない。もし希望グレードなどがあればぜひ相談してみて欲しい
トラヴィックの売り物もあった。もともとオペル・ザフィーラをスバルブランドから販売した1台。最近ではかなり少なくなった。全方向に抜かりない印象のラインナップだ

最後に今一番楽しみにしていることは? と社長に伺ったところ、「トヨタ・86 のGRMN に今度乗せてもらえることになっているんだけど忙しくて……。あれはいい。ああいうものが作れるトヨタはいいね」
スバルの優位を良く理解する代田社長。しかしその興味は広く、様々なクルマに向けられています。こういう人が日本の自動車業界にいることの尊さを痛感しました。

ヴィヴィオTトップとMGBが動態保存されていた。この2台は今でこそBRZがあるものの、クーペがなかった時代に縁あって入庫してきたクルマ。「将来またクーペがスバルから出そうな気がするし、出て欲しい」そんな予感と確信もあり、社員の方の教材という意味も含めて取ってあるのだとか
時が経つのは実に早いもの。ちょっと寄るつもりがいつの間にか夕方になってしまった

(中込健太郎+ノオト)

[ガズー編集部]