春から社会人! 自動車整備専門学校生に「将来の抱負」を聞いてみた

今春、新社会人として新しい一歩を踏み出す人もいるでしょう。そんなフレッシュマンと接することで、社会人歴が長い人も、初心に返って気持ちいい新年度を迎えられるのではないでしょうか?

そこで今回は、自動車整備の専門学校へ行き、この3月に卒業した学生をインタビューしてみることにしました。若者のクルマ離れが叫ばれるなか、どうしてクルマの専門学校へ入学したのか? 4月からどんな仕事に就くのか? そして、将来の抱負について語ってもらいましょう!

春から新社会人! トヨタ東京自動車大学校の卒業生5人に聞いてみた

やってきたのは、東京都八王子市にある「トヨタ東京自動車大学校」。トヨタ自動車直営の専門学校で、国家1級小型自動車整備士を目指す「1級自動車科(4年制)」や国家2級整備士を目指す「自動車整備科(2年制)」などの学科があります。

学生数は全体で約1000人、そのうちの30人が女子学生だといいます。「“男しかいない中でも勉強するぞ”という強い志を持った学生が多いです」と同校の先生。ちなみに、1級整備士の資格合格率は全国平均30%前後ですが、同校では平成27年の合格率は98.8%だったとか。

敷地内に着くと、すれ違う学生たちから「こんにちは!」と元気な挨拶をされ、“なんて、礼儀正しい学生たちなんだ……”と感動を覚えました。後から調べたところ、同校のスローガンは「技術を磨け、そして人間性も」。まさに、その教えが学生に浸透していますね。

今回取材に協力してくれたのは5人の卒業生。まずは貴重な存在である女子学生さんからお話をお伺いしましょう。

今春、自動車整備科を卒業した住吉美香子さん。なぜクルマ業界に興味を持ったのでしょうか?

「小さい頃は、よく親が運転するクルマで出かけていました。出かけると、大抵ガソリンスタンドに寄るじゃないですか。そのときに女性が働いている姿を見て、“あ、女の人でも働けるんだ”と思ったんです。それで高校1年生のときに、近所のガソリンスタンドでアルバイトを始めました。それから見事にクルマにハマってしまいましたね」

学生時代の思い出は、車検や定期点検を時間内にどれだけミスなく正確にできるかを競う「メカコン」に女子学生2人で出場したことだといいます。ちなみに整備をするときはつなぎを着ているんだとか。

「メカコンの結果は散々だったけれど、整備をしているときが何よりも楽しいです! 4月からはNetz東京で整備士として働きます」

同じく貴重な女子学生で、自動車整備科を卒業した簗場美彩穂さん。

「クルマに興味を持ったきっかけは、父が『頭文字D』のアニメを見ていたことです。真子ちゃんという女性の登場人物が、かっこいいんですよ! あとクルマは男女の区別がないのがいいと思いました。例えば、バスケットボールなどのスポーツだと体力に差があるから、女子は女子、男子は男子でプレーするじゃないですか。だけど、クルマだと男女対等です」

学生時代の思い出は、国家2級整備士の試験のために1日10時間以上勉強したことだそう。「今までで一番勉強して、もう死ぬかと思いました(笑)」とも。簗場さんは、4月からトヨタカローラでサービスエンジニアとして働きます。

「他の会社だと、営業は営業、整備士は整備士と職種で分かれ、整備士はお客様と接する機会がないんです。でもトヨタカローラなら、整備士もお客様と接します。“この整備士さんがいるから、このお店に行こう”と思ってもらいたいです」

自動車整備科認定後に、スマートモビリティ科(2年制)へ進学した高橋拓也さん。

スマートモビリティ科とは、ハイブリット車や電気自動車など、未来のクルマについて勉強する学科で、主に、水素で走る「MIRAI」の整備や点検の仕方などを学びます。

「父がレース好きで、小さい頃からスポーツランドSUGOや筑波サーキット、ツインリンクもてぎに連れて行ってもらっていたので、自然とクルマに興味を持ちました。学生時代の思い出は、学科の仲間と参戦したERK Cup Japanで総合優勝したことです!」

そんな高橋さんは、4月からはトヨタディーラーのトヨペットで働きます。 

「僕は福島県出身です。数年後には、きっと東北でもMIRAIのようなクルマが普及すると思います。そのときに、この科で学んだことを活かして、先頭に立って修理していきたいです」

続いて、1級自動車科を卒業した石田侑大さん。意外にも、クルマに興味を持ったきっかけは農機具だったそうです。

「実家は静岡県で農家をやっています。農機具が壊れると、修理屋に持っていくのではなく、祖父や父が自分で直していました。それを小さい頃から見ていたので、家に誰もいないときに興味本位で芝刈り機を修理しようとしたら、締めつけが強くて、ねじを切ってしまったんです……。“絶対に怒られる”と思っていたら、父は怒るどころか、ねじの取り方などを教えてくれました。そのときに、父が教えてくれたのが面白くて、もっと勉強したいと思うようになりました」

学生時代の思い出は、国家1級整備士の実技試験のために居残り勉強したことだといいます。

「授業時間内にうまく故障を直せなかったのが悔しくて、毎日夜8時頃まで1人で練習しました。辛かったけれども、実技試験は無事に合格。目標を達成できたときは、本当にうれしかったです。僕は、トヨタエンタプライズに就職します。壊れたから修理するのではなく、開発段階で安全安心なクルマをお客様に提供したいです!」

最後に紹介するのは、1級自動車科を卒業した園部正英さん。高校卒業後は一般大学に進学するも、クルマに携わりたく中退し、トヨタ自動車学校に進学しなおしました。

「祖父と父がクルマ関係の仕事をしていたので、小さい頃からクルマやメカが大好きでした。にもかかわらず、中途半端な気持ちで大学に進学してしまい、後悔しました。クルマ業界の道へ進むことを決心したときに、クルマの知識では誰にも負けたくないと思い、1級自動車学科へ入学しました」

学生時代の思い出は、1~2年生のときにレポートを書いたことだそうです。すべて手書きで、誰が見てもわかりやすいように色使いやレイアウトを工夫したといいます。

「丸1日スケッチに費やす日もあって、僕は美大に入学したのかな……と思うこともありました(笑)。今ではこのレポートは財産です!」

園部さんは、4月からトヨタ自動車に入社します。

「まだ配属先は分かりませんが、国家1級整備士の資格を持っている人が入社すると、国内外にある販売店の方を相手にクルマのフィードバックをしたり、販売店では修理できないものを原因究明して、改善したり。あとは、特殊工具SSTを開発したりします。トヨタは、日本が誇る世界の自動車メーカーなので、僕自身も世界で通用する人間になりたいです」

未来のクルマ業界を支える若者5人の抱負とは?

では最後に、将来の夢や抱負をスケッチブックに書いてもらいました!

「みんなから信頼される整備士になる。」

「車を持つ喜びをお客様や子どもたちに伝えたい」

「スマート社会を引っ張れるようなエンジニアになる。」

「明るい自動車社会をつくる」

「安心・安全・真心を込めた車づくりで 美しい地球を子供たちへ。」

キラキラと輝いているフレッシュマンに触れ、身が引き締まった方もいるのではないでしょうか。未来のクルマ業界を支える彼らの今後の活躍に期待です!

(名久井梨香+ノオト)

[ガズー編集部]