なぜ右側通行? 日本最長・山手トンネルの防災設備

全長約18.2km、道路トンネルとして日本最長を誇る首都高中央環状線の山手トンネル。もしもトンネル内で事故や火災が起きても大丈夫なの? そこで、山手トンネルの防災設備について、首都高速道路株式会社に聞いてみました。

――山手トンネルではどのような防災設備があるのでしょうか?

「山手トンネルの防災設備は、延長及び交通量から最も高い等級で必要とされる防災設備を設置しており、さらに過去の火災事故等の経験を踏まえ設備の追加、改良を加えています。具体的には迅速な避難のためトンネル内でも明瞭に聞き取れる拡声放送スピーカーや避難時に非常口をわかりやすくするための回転灯(非常口強調灯)等の導入を行っています」

最大350メートル以内に設置された非常口。出口の左右と上部に回転灯が設置されている

「山手トンネルの管理体制としては、トンネル内に死角なくカメラを配置しており、24時間、365日交通管制室で見守っています。画像処理技術により即時に交通異常を検出し、早期の対応が可能です」

交通管制室では様々な情報をもとに事故、火災などの状況を瞬時に判断。警察・消防への要請など24時間体制で行う

「現場では、交通管制室と連携し、山手トンネル開通にあわせて導入したバイク隊がトンネル内での火災や交通事故発生時に現場に向かい、交通規制などの初期活動を行います。それ以外にも、お客様への広報・啓発の実施、関係機関との連携など総合的な防災安全対策を実施しています」

火災発生時の早期対応のため、バイク隊を配備。現場へ急行し、交通処理や避難支援を行う

――山手トンネルでは左右を逆転させ、進行方向左側が反対車線となる区間があると聞きました。

「山手トンネルの湾岸線~渋谷線区間は、山手通りの進行方向右側(中央分離帯側)に首都高速への出入口が設置されています。そこで、山手通りと山手トンネルをつなぐ上で、山手トンネル内を左右逆にすることにより、首都高速への合流または首都高速から分岐する場合、左側車線での分岐・合流となり、より快適な走行が可能になります」

ドライバーからは見えないが、通常左側通行のところ、右側通行になっている

「緊急時にクルマを降りて避難する際には、右側車線を横断することなく、左側車線から非常口を通って反対方向のトンネルに避難することが可能です。また、反対方向のトンネルに避難する際、避難通路の横には広い路肩スペースが確保されます。これにより、避難時の安全性が高まります」

山手トンネル(湾岸線~渋谷線)内に26箇所ある避難連絡坑。右側車線を横断することなく反対側のトンネルに避難できる

――トンネル内で万が一火災に遭遇した時の対処法を教えてください。

「トンネル入口にいるときは信号を確認して停車、トンネル内で出口の手前にいるときは出口から一般道路へ出る、トンネル内で火災現場の手前にいるときは、クルマを路肩に停車し、速やかに近くの非常口から避難をお願いします。また、トンネル内走行時は、カーラジオのスイッチを入れて下さい。発災時に割り込んで情報をお伝えします」

約50メートル間隔で設置された消火器と泡消火栓。使用方法は本体上に記載されている

過去に発生した山手トンネルでの火災は、ほとんどがクルマの整備不良によるものなのだとか。高速道路を利用する前には、クルマの点検を忘れずに行いましょう。

(平野友紀子+ノオト)

[ガズー編集部]