最新のVRシミュレーター「T3R VR edition」を試してみた

リアルなドライビングの再現性から、プロドライバーの練習にも用いられるようになっているドライビングシミュレーター。ここにもVR(バーチャルリアリティ)化の波がやってきました。

今回、NASCARドライバーの古賀琢麻氏が代表を務める株式会社アイロックが開発した、最新鋭のVRレーシングシミュレーター「T3R VR edition」を体験してきましたので、その様子をご紹介します。

タイヤのグリップ感までも再現する本格的シミュレーター

「T3R VR edition」は、VRデバイスである「Oculus Rift」を採用し、バーチャルリアリティの中で、今まで以上にリアルなドライビング体験ができる、本格的なドライビングシミュレーターです。こちらは古賀琢麻氏によるデモンストレーション!

ゆりかご型のフレームの上にドライバーズシートが設置される「3D フルモーションテクノロジーフレーム」は、ベースとなった「T3R」と同じ独自のフローティング構造。この構造により、加減速時やコーナリング時のクルマの傾きはもちろん、タイヤのグリップ感までもリアルに再現することができます。

T3R VR editionにいざ試乗!

レース向けのバケットシートに身を沈めてからOculus Riftを装着し、ピントを合わせて準備をします。走り出す前にまず驚いたのは、「ハンドルとの距離感」です。

VRでは、画面内にバーチャルなハンドルが映し出されますが、今までのVRでは、画面内のバーチャルなハンドルと現実の物理的なハンドル位置に若干の差がありました。それがこのT3R VR editionでは、まったく差を感じることなく、VR内のハンドルがある位置に手を持っていくと、自然と現実のハンドルを握ることができます。このわずかな差が、VRで運転するにあたっては大きな違いとなるのです。ちなみにソフトウェアは、SteamやPS4/Xbox One向けに販売されているOculus Rift対応ソフト、「Assetto Corsa」を使用していました。

VRなので、首を上下左右に動かすと、車内が見渡せます。しばらく、インテリアの雰囲気を楽しんだあと、アクセルを踏み込んでいざドライブへ! 2Dの画面でプレイするゲームとは、スピード感はまったく違いました。その臨場感は、それほど飛ばしていなくても「怖い!」と思うほど。

最初にコブラで首都高環状を走って感覚を掴んで、次にフェラーリ・488 GT3で、高速サーキットであるモンツァを本格的にアタックしてみました。250km/hを超えるとてつもないスピード感に甲高いエキゾーストノート、そして高速コーナーで踏ん張るタイヤの感触…。気分は、GT3マシンを操るプロドライバーです。コーナーの先を見るのに視点を変えるのも首を動かせばいいので、本当に運転しているかのように違和感がありません。

普通の道を一般的なスピードで走ってみたらどうなるんだろう? そう思って今度は、SUVのマセラティ・レヴァンテで峠道へ。60km/h程度でワインディングを走ってみると、現実世界で峠道をドライブしている感覚でした。カーブに差しかかってゆっくりとブレーキングしながらハンドルを切っていくと、それに合わせてゆっくりとシートが沈んでいくんです! ドライブを終えて、Oculus Riftをつけたままシートから降りると、クルマの外観を見ることもできました。

30分ほど試乗しましたが、いわゆる「VR酔い」を感じることはありませんでした。それは、T3Rならではのフローティング構造によるものだと考えられます。

シートの制御に4本のシリンダーを使っていた今までのシミュレーターではシートの動きや傾きがどうしても不自然になりがちで、VR内の映像から得る脳内のイメージと差が生まれてVR酔いの原因となっていたのです。T3Rでは、自由度の高い動きが可能となったことから動きが自然となり、身体の感覚と視覚との差が小さくなったのでしょう。また、適切なハンドルの距離感も、VR酔いを防いでいる要因のひとつだと思われます。

T3R VR editionのお値段は468万円と非常に高価ですが、目からウロコが落ちるような体験をしてみると「高くないかも?」と思ってしまいました。ちなみに今回試乗させていただいたシミュレーターは、トラックの荷台の中に設置されたもの。全国のイベントで体験できる形にしたとのことで、どこかで見かけたらぜひ試乗してみてくださいね。きっと、リアルなドライビング感覚に驚きますよ!

(クリハラジュン+ノオト)

[ガズー編集部]