何メートル先から見える? 事故防止に役立つ「反射材」の効果

本格的な冬になり、日暮れの早さを実感する今日このごろ。気をつけなければならないのが、夜間の交通事故です。そこで、夜間の事故防止に役立つ「反射材」について取材をしてみました。お話をうかがったのは、一般社団法人 日本反射材普及協会の副会長、金子実さんです。

一般社団法人 日本反射材普及協会副会長 金子実さん (反射材を織り込んだネクタイとジャケットで撮影)

――日本反射材普及協会とは、どのような団体なのでしょうか?

反射材の材料メーカーと、それを応用した商品を販売している企業が集まってできた協会です。交通安全をベースとしており、内閣府や警察庁と連携して啓蒙運動を行っています。また、「一般財団法人 全日本交通安全協会」とも協力して、春と秋の交通安全運動やイベント等で一緒に活動しています。

――協会が認定している「JPマーク」とはなんですか?

JPマークは、一定基準をクリアした高い反射効果を有する製品に付与しているマークです。内閣府、警察庁、交通安全協会や学識経験者により構成された委員会で審査認定しています。100円ショップで売られているような反射材の中には、クオリティ(輝度)が低いものもありますからね。

JPマーク認定された反射材製品の一例

――反射材の原理について、簡単に説明していただけますか?

反射材は、「再帰反射」という性質を持つ特殊な素材です。 再帰反射は普通の反射とは異なり、光を一方向から当てると光源に向かってそのまま反射するように開発された反射方法です。

反射材を身に着けているときにクルマのヘッドライトが当たると、その光は光源であるクルマに向かってそのまま反射します。このためドライバーは、遠くからでも着用者の存在を確認することができます。

反射材は大きく分けて「ガラスビーズタイプ」と「プリズムタイプ」の2種類です。ガラスビーズタイプは道路標識など、プリズムタイプは夜間工事用の作業着などに使われています。

――どれくらいの効果があるのでしょうか?

反射材を身に着けていない状態では、ドライバーから歩行者が見える距離は、着用している衣服の色によって異なります。ヘッドライトがロービームのときには、一般的に黒っぽい服で約26m、白っぽく明るい服装で約38m。一方、ドライバーが歩行者を発見して停止できるまでには、60km/hだと44mもの距離を必要とします。つまり、60km/hで走っていると、歩行者を認識した瞬間にブレーキを踏んでも間に合わないのです。

反射材を身につけた場合は、最低でも約57mの視認距離がありますので、60km/hでも歩行者の確認ができ、手前で停まることができます。反射材の面積が大きければ、100mぐらい離れていても見えますね。

――かなり効果があるんですね。どういった商品が多いのでしょうか?

靴に貼るタイプやリストバンド、タスキなどですね。ノベルティとして配られているものもたくさんあります。自転車用やキーホルダーも広く使われていますね。

――警察官やパトカーに見える「パト看板」も反射材なのですね?

はい。これは各警察署の交通安全課などが、事故の多い場所に設置しているようです。

――夜間の道路工事など、作業服に使われているものも反射材ですか?

夜間工事作業者は、常に危険と隣り合わせですよね。交通事故も少なからず起きているようで、反射材のウエアはなくてはならないアイテムです。これから東京オリンピックに向けて道路工事も増えていきますので、それに合わせて「高視認性安全作業服」の着用を義務付ける動きも出てきています。

――ほかにも反射材を使ったものはありますか?

毎年1回、定番商品とともに新しい企画商品を展示する「反射材エキシビジョン」を開催しています。ここでは、反射材を活用したカジュアルな洋服やスポーツウェア、ユニフォームなども展示しています。

大学やファッション系の専門学校とコラボレーションして、学生さんの作品も展示しています。いくら「安全のために、反射材を身につけましょう」と言ってもなかなか広がっていかないので、若い方が身に着けたくなる服を提案しているんです。

――今後はどんな展開を考えていますか?

電球からLEDになってヘッドライトの質や性能も変化していますし、クルマの種類によっても違うので、より厳密な検証が必要だと考えています。近年はブレーキ性能など、クルマの安全性も向上していますからね。あとはみなさんが手軽に反射材商品を購入できるよう、販路も広げていきたいと思っています。

今回の取材で、思っていた以上に反射材の効果が高いことがわかりました。最近は高齢者事故のニュースもよく見かけます。反射材を活用して、事故に遭わないよう気をつけましょう。

(村中貴士+ノオト)

[ガズー編集部]