黄色もある? 意外と知らないガードレールの種類と役割

ドライバーが運転中かならず目にするもの、それはガードレールです。とくに意識せず運転している人が多いと思いますが、実はガードレールにもいろんな種類があり、用途・目的に合わせて違う形状のものが使用されています。今回はガードレールの種類や色、歴史について取材をしてみました。お話をうかがったのは、鋼製防護柵協会の事務局長、青木清二さんです。

鋼製防護柵協会 事務局長、青木清二さん

――ガードレールにはどのような種類があるのでしょうか?

その前に、名称について説明します。一般的には「ガードレール」と言われていますが、我々の協会名にあるとおり「防護柵」というのが総称となります。その中でまず「車両用防護柵」と「歩行者自転車用柵」の2つに分けられます。さらに車両用防護柵はガードレール、ガードパイプ、ガードケーブル、ボックスビームの4種類、歩行者自転車用柵は乱横断防止柵と転落防止柵の2種類に分けることができます。ガードレ-ルが広く使われていますので、すべて「ガ-ドレ-ル」と呼ばれることが多いですが、実際の分類としては防護柵の中の1つということですね。

――車両用と歩行者用は、どのように使い分けているのでしょうか?

車両用の目的は、クルマが防護柵に衝突したときに突破しない(道路に押し戻す)こと。それによって歩行者を守ると同時に、運転手も守る機能があります。
歩行者用の防護柵はパイプが細く、耐荷重を調べて基準値に達していればOKです。一方、車両用は実車実験でクルマをぶつけて、性能が担保されたものだけを使用することができます。
各自治体は道幅、交通量、人通りの多さなどによって、歩行者対象の防護柵かクルマ対象の防護柵かを選んで設置しています。

(左)車両用防護柵  (右)歩行者自転車用柵

――ここからは車両用防護柵についてお聞きしていきます。道路によって違う形状のガードレールが使われているのですか?

道路には制限速度とは別に「設計速度」というのがあり、それに基づいて防護柵を設置します。例えば市町村道で道幅が狭いと、あまりスピードは出さないですよね。県道、国道になっていくとスピードが上がるので、強度が必要になります。
ざっくり言うと市町村道はC種、県道・国道はB種とA種、高速道路の一部区間でSC種とSB種を使っています。SS種は跨線橋などでよく見かけます。鉄道の線路の上に道路が走っている場合、もしそこからクルマが転落したら大事故につながりますよね。それを防ぐような形状になっています。

――素朴な疑問ですが、ガードレールにはなぜ凹凸があるのでしょうか?

強度がでるように折り曲げています。もし平らな鉄板だけだと、クルマがぶつかったときに外へ飛び出してしまうのです。折り曲げをつけるだけで、クルマが衝突したときに耐えられる強度が162倍以上になります。また、折り曲げ回数が多いほど、強度も高まります。

――昔のガードレールは、いまとは違う形だったのでしょうか?

現在のガードレールは昭和47年(1972年)に規格統一されました。それ以前は製造会社によって違う形だったんです。高度経済成長期には新設道路の建設が進み、安全対策としてガ-ドレ-ルの設置が増加したため、複数の会社で施工する機会が増えました。会社によって形状が異なると繋げられないので、統一規格を作ったわけです。

規格が統一される以前のガードレール

――ガードケーブル、ボックスビームは、どのような場所で使われているのでしょうか?

ガードケーブルは雪の多い地域で使われています。ガードレールだと雪がたまってしまうのと、除雪車がぶつかってしまうからです。
ボックスビームは角パイプを使用した防護柵です。表裏がなく、道路の中央分離帯などで多く設置されています。

(左)ガードケーブル  (右)ボックスビーム

――白色以外のガードパイプも最近よく見かけますね。

これは国土交通省が平成16年に設定した「景観ガイドライン」が大きく影響しています。従来のガードレールは安全性を重視し、視認性がよく夜でも目立つ白色でした。しかし、ガードレールは道路と外部の境界線で必ず目に入るものです。安全性を保ちつつ、まわりの景色や街並みとの調和も配慮するべきではないかという議論から「景観ガイドライン」ができたのです。
それにより、向こう側が見えるガードパイプが増加し、色もガイドラインに定められたダークブラウン、グレーベージュ、ダークグレーが多く使われるようになりました。

景観対応型ガードパイプ

――景観ガイドラインというのは、義務ではないのですか? 何か変わった色のガードレールがあれば教えてください。

必ずしも上に挙げた3色でないといけない、というわけではありません。変わった色の例では、山口県には黄色のガードレールがあります。昭和38年の山口国体開催のときに「山口県で何か特色のあるものを」ということから、県道のガードレールを県特産である「夏みかん」の黄色にしたそうです。これは今でも残っていますよ。

――海外ではどのようなガードレールが使われているのでしょうか?

ガードレールは国ごとに基準が異なります。ドイツでは日本よりも早いスピードで走っているので、強度的に高いものをつけているようです。形状や凹凸の深さが微妙に違いますね。

――協会として取り組んでいる活動がありましたら教えてください

昭和47年に基準が統一される以前の、古いタイプのガードレールがまだ残っています。腐食などによる安全性にも問題がありますし、景観も阻害しています。新しいものに変えて欲しいというPRを各自治体に働きかけているところです。

(左)旧型仕様ガードレール  (右)腐食した防護柵

普段ほとんど意識しないガードレールにも、いろんな工夫がなされているのですね。ドライバーのみなさん、ガードレールの役割も知ったうえで、より安全な運転を心がけましょう。


(村中貴士+ノオト)


[ガズー編集部]

取材協力