2017 D1GP 第3戦「TSUKUBA DRIFT」は驚きの連続だった【イベントレポ】

お台場で行われた第2戦「TOKYO DRIFT」から、約2ヶ月。6月25日(日)に第3戦「TSUKUBA DRIFT」の決勝が行われました。

今年の筑波D1の目玉は、12年ぶりに順走競技が行われたこと。最終コーナーから第1ヘアピンまでとコースの半分を使った長い競技区間が特徴です。ただすべてが計測区間ではなく、計測するのは下記5つの区間のみ。その間は空走区間で、今大会はこの空走区間をうまく使えるかどうかが勝負の鍵となりました。

(1)最終コーナー~ホームストレート入口
(2)メインスタンド前
(3)ピットレーン出口~1コーナー飛び込み
(4)S字コーナー後半~ヘアピン入口
(5)ヘアピン立ち上がり

単走決勝:デビュー初戦でまさかの100点超え!

梅雨入り直後の茨城県・筑波サーキットは朝早くから強い雨が降っていましたが、イベント開始前のチェック走行には雨が上がり、10時からの単走決勝開始時にはほぼドライコンディションに。路面温度はぐんぐん上がり、最終区間のヘアピンで派手なドリフトが見られると、多くの観客がヘアピンに集結していました。

単走決勝:デビュー初戦で
単走決勝:デビュー初戦で

今回の単走決勝がデビュー戦となるマシン「GULF RACING ZESTINO TIRE S2000」を駆る日比野哲也選手は、ハイスピードかつスピンギリギリの超ドリフトアングルで驚異の100.15点を記録! 筑波サーキットにいた全員に衝撃を与え、勝利を飾りました。このマシンは、織戸学さんが経営する「MAX ORIDO RACING」で、ホンダ・S2000にトヨタ・スープラの2JZエンジン(1000馬力)を搭載し、大会直前にシェイクダウンしたばかりでした。

久しぶりの自分専用のマシンのデビュー戦、100点超えの優勝で満面笑顔の日比野選手。単走ランキングでも2位にアップ
久しぶりの自分専用のマシンのデビュー戦、100点超えの優勝で満面笑顔の日比野選手。単走ランキングでも2位にアップ

2位と3位には「Team TOYO TIRES DRIFT」の川畑真人選手、末永正雄選手が入賞。また、もう1台の注目マシン、斎藤太吾選手が駆る「SUNOCO MONSTER CORVETTE(WANLI)」は、日比野選手に負けず劣らずのドリフトアングルを披露するものの5位入賞となりました。

惜しくも日比野選手には及ばなかったものの高得点を獲得する川畑選手のテクニックはさすが。単走ランキングトップに立つ

お話を伺った藤墳裕次さん(左)
惜しくも日比野選手には及ばなかったものの高得点を獲得する川畑選手のテクニックはさすが。単走ランキングトップに立つ
足回りの中身が見えるぐらいの切れ角でドリフトする斎藤太吾選手。本人いわく「もう少しエンジンにトルクが欲しい」とのこと
足回りの中身が見えるぐらいの切れ角でドリフトする斎藤太吾選手。本人いわく「もう少しエンジンにトルクが欲しい」とのこと

追走トーナメント:空走区間が勝負の明暗を分けた

1対1の勝ち抜きトーナメント戦となる追走トーナメントは、波乱の連続でした。

追走トーナメントのポイントは空走区間(次の競技区間までの間)にマシンの姿勢を安定させ、十分なスピードまで加速させること。つまり1コーナーの立ち上がりからS字の入口までがポイントとなります。間隔が空いてしまうと前走者にプレッシャーを与えられないどころか、心理的に追い付こうとしてドリフトが浅い角度になってしまいアピールが弱くなってしまいます。

GLMが手がけるEVスポーツカー、トミーカイラ・ZZ
日比野選手(S2000)VS林選手(86)の対戦は、日比野選手のミスにより林選手が勝利。ベスト8進出を決めた

まずはベスト16のハイライトから。単走決勝でS2000のデビューウィンを飾った日比野選手は、「広島トヨタ team DROO-P」の86を操る林和樹選手との対戦で、勢いがつきすぎてドリフトがストップしてしまう事態に……。そのまま敗退を期してしまいます。単走で86勢最上位の7位だった今村選手と対戦した畑中真吾選手は、規定セットを超えたタイヤ交換のペナルティーで2ランクダウン。今村選手に勝利を譲りました。

「運も実力のうち」というが、林選手はまさにそれを体現するD1筑波ラウンドだった。ベスト8、林選手vs寺町選手
「運も実力のうち」というが、林選手はまさにそれを体現するD1筑波ラウンドだった。ベスト8、林選手vs寺町選手

ベスト8では、林選手がシルビア使いの寺町邦彦選手と対戦。先行時のヘアピンでオーバーランしてしまいますが、寺町選手もそれにつられてしまいハーフスピン! 林選手が運を味方につけてベスト4に進出しました。

川畑選手vs末永選手のチームメイト対決。デモランのような2台のR35 GT-Rによるツインドリはとてもレアな場面!
川畑選手vs末永選手のチームメイト対決。デモランのような2台のR35 GT-Rによるツインドリはとてもレアな場面!
筆者が撮影した川畑選手vs末永選手の対決

ベスト4では、なんと「Team TOYO TIRES DRIFT」の川畑選手と末永選手のチームメイト対決が! 昨年の川畑号を操る末永選手と、「GT-R NISMO 17年モデル」ベースの「GReddy 35RX spec-D」を駆る川畑選手のツインドリは、会場のテンションを一気に上げる対決でした。結果として2本目の1コーナーで先行した末永選手のオーバーランにより、川畑選手が勝利。決勝へ!

ベスト4対決、もう1組は斎藤太吾選手(コルベット)vs林選手(86)。コルベットの加速は圧巻。ドリフト角度も深く林選手を圧倒!
ベスト4対決、もう1組は斎藤太吾選手(コルベット)vs林選手(86)。コルベットの加速は圧巻。ドリフト角度も深く林選手を圧倒!

決勝戦は、驚異的な加速力と思い切ったドリフトで並みいるライバルを撃破してきたコルベット駆る斎藤太吾選手と、ハイスピードかつ正確無比なGT-Rのドリフトでチームメイトにも競り勝った川畑真人選手の対決となりました。

今回の試合を取材していて、GT-Rの安定感はFRに変更されても失われていないという印象を受けた
今回の試合を取材していて、GT-Rの安定感はFRに変更されても失われていないという印象を受けた
ここ一番での勝負の駆引き、テクニックの引き出しは川畑選手が一枚上手といったところ
ここ一番での勝負の駆引き、テクニックの引き出しは川畑選手が一枚上手といったところ

今まで空走区間の加速で差をつけて対決を有利に進めてきた齋藤選手ですが、川畑選手もGT-R のパワーを生かして食らいつき、ヘアピンで横に並んでアドバンテージを獲得。齋藤選手も負けじと単走のような真横に向いたドリフトで川畑選手に接近しましたが寄せきれず……、川畑選手の優勝が決定しました。川畑選手の勝利は、2015年の筑波以来!

次戦、大阪は川畑選手の地元。勢いを維持したまま連勝を狙いたいところ
次戦、大阪は川畑選手の地元。勢いを維持したまま連勝を狙いたいところ

今回の追走トーナメントは、「いよいよ本領発揮」といった雰囲気で川畑選手が今シーズン初勝利を飾り、ドライバーズランキングでもトップに躍り出ました。7月22日(土)に行われる地元・大阪ラウンドで連勝を得られるのかに注目です。

また、単走優勝を飾ったS2000を駆る日比野選手にも大いに期待したいところ。惜しくも追走ではベスト16敗退となりましたが、S2000と日比野選手のコンビネーションの高さは証明されました。次回はさらに完成度をあげてくるはず。大阪ラウンドも目が離せません!

(クリハラジュン+ノオト)

[ガズー編集部]

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