いつか、クルマのない時代が来る!? 「道路を滑走するオフィスチェア」動画を制作したJAFが訴える“高すぎる自動車税制”

自動車って、買ってしまえば“乗り放題”……というわけにはいきません。駐車場代はかかるし、ガソリン代もばかにならない。その他、保険や車検だって発生します。

あと、やっぱり税金が大きいですよ。本当、高すぎるって! というのも現在、自動車には9種類の税(※1)が課せられ、加えて税金に税金が課せられる(ガソリンは製品本体の価格にガソリン税が加算され、それらの合計額に対して消費税がかけられている)など、過重で複雑なものになっています。

雄大な景観を男性がオフィスチェアで滑走する

この状況を憂うJAFは「Chair Drive(チェアドライブ)」なるタイトルの動画を制作、自動車税制改正を訴える目的で広く発信しています。

雄大な景観を男性がオフィスチェアで滑走していく……という構図が捉えられた今回の動画。深いメッセージが込められているに違いありませんが、まずはインパクト大な映像そのものに惹きつけられちゃいます。

一体、これってどういう風に撮影されたのでしょう。CGか何かですか?

「実際には、オフィスチェアを自転車で引っ張っています。そこから、自転車のみ消す映像処理を行いました」(JAF広報部 以下同)

なるほど、そうやって撮ってるんですね! まるで、むき出しの小型トロッコか何かに見えましたよ……。

ところで、動画のこのシチュエーションにはどんな意図や思いが込められているのでしょうか?

「『日本の自動車の税金はとても高く、このままだと近い将来、クルマがなくなってしまうかもしれない』という意味を込めました。インパクトのある映像に印象的なコピーを表示させ、視聴者に自動車税制の過重さを訴えています」

若者の“クルマ離れ”がささやかれている、この昨今。物理的に自動車がオフィスチェアに変身することは有り得ませんが、道路をクルマで滑走する若者が減少傾向なのは事実。もしかして、動画の状況に時代は近付きつつある……?

何しろ、欧米諸国と比較して日本は消費税を除く車体課税の負担が約2.6~34.4倍もあるとのこと。その“高すぎる”税金は、アメリカ と比べて実に34倍(自動車税制改革フォーラム調べ)なんだそうです。

グラフの前提条件については文末※2を参照
グラフの前提条件については文末※2を参照

「JAFが昨年10月に結果を公表した『自動車税制に関するアンケート調査』では、98%の方が『自動車にかかる税金が負担』と回答しています。しかし、その内の約65%は50代以上。“働き世代”“子育て世代”と呼ばれる30~40代は33%に留まっており、多数の“働き世代”がこの事実を知らないのではと考えました。事実をご存知ない方、はたまた自動車を所有されていない方にも自動車税制のあり方を考えていただくため、今回の動画制作に至りました」

こうして発信された動画「Chair Drive」には、さまざまな反響が寄せられています。
・「自動車先進国のアメリカよりそんなに税金高かったんだ!」
・「新車が売れないのも当然。持っているだけで高額の税金がかかるし」
・「若い人とか低所得者は維持できませんよ」
・「そもそも取った税金って、道路整備以外何に使ってんの?」

ふむふむ。狙い通り、「Chair Drive」が自動車税制のあり方を考える一つのきっかけになっているようですね!

JAFが提案する3つの自動車税制改正案

では、JAFは日本の自動車税制をどのように改正すべきだと考えているのか? それは、大きく以下の3つの案に集約されます。

(1)過重で不合理な自動車税制の抜本的な見直しによる簡素化と自動車ユーザーの負担軽減の実現
1. 自動車取得税、自動車重量税は類似の他の税と事実上二重課税のままとなっており、廃止すべき。少なくとも、自動車重量税に係る「当分の間税率」は即刻廃止すべき。
2. 自動車は生活必需品であり、欧米諸国と比較しても過重な現行の自動車税の負担を見直すべき。
3. ガソリン税等に上乗せされ続けている「当分の間税率」は直ちに廃止すべき。
4. ガソリン税に消費税が課税されるというTax on Taxの解消。

(2)既に過重な税負担を強いられている自動車ユーザーにさらなる負担を求めることは、もはや限界に来ており断固反対
1. 自動車取得税の代替財源を確保するために、自動車税や軽自動車税に環境性能割を上乗せすることは撤回すべき。
2. 自動車税等において一定期間経過した車に一律に課される重課措置は廃止すべき。

(3)先進環境対応車(低燃費車等)と先進安全自動車(ASV技術の導入車)に対する優遇措置の強化
JAFは発足した昭和38年から自動車税制改正に関する活動に取り組んでおり、毎年アンケートを元に「税制改正に関する要望書」を作成、国や政党などに提出しています。

また、アンケート回答者からは、
・「長く大切に乗っている旧車に対する重課措置は納得がいかない」
・「地方では一人一台クルマが必要。生活必需品です」
・「子育て世代には税金を優遇してほしい」
といったコメントが寄せられているようです。

「私どもは、自動車ユーザーが納得できる公平・公正・簡素な税制の実現を引き続き求めていきます」

「Chair Drive」への反響次第では、自動車税制に対するメッセージも発信していきたいとのことでした。

※1
取得段階:自動車取得税、消費税
保有段階:自動車税、軽自動車税、自動車重量税
使用段階:ガソリン税(揮発油税+地方揮発油税)、軽油引取税、石油ガス税、消費税

※2
前提条件:[1]排気量1800cc [2]車両重量1.5トン以下 [3]車体価格180万円 [4]JC08モード燃費値:15.5km/リットル(CO2排出量:150g/km) [5]フランスはパリ市、アメリカはニューヨーク市 [6]フランスは課税馬力8 [7]13年間使用(平均使用年数:自動車検査登録情報協会データ) [8]為替レート: 1ユーロ120円、 1ポンド146円、 1ドル109円(2016年4月~2017年3月の平均) 注:1.2017年4月時点の税体系に基づく試算。 2.各国の環境対策としての税制政策(軽減措置等)は加味していない。 3.各国の登録手数料 は除く。 4.フランスは2000年をもって個人所有に対する自動車税は廃止。

(取材・文:寺西ジャジューカ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]