廃棄される「エアバッグ」を丈夫なバッグにリサイクル ―yoccattaTOKYO(ヨカッタトーキョー)―

衝突時に展開し、乗員を保護する自動車のエアバッグ。もちろんそれが作動する瞬間に出会わないことが一番ですが、それはクルマに組み込まれたほとんどのエアバッグが、「一度も役目を果たすことなく廃棄される」ということでもあります。この「廃棄される」という運命を変えようと、廃棄エアバッグを再利用したバッグを開発しているブランドがあります。今回は、エシカルブランド「yoccattaTOKYO(ヨカッタトーキョー)」の伊藤さん、広瀬さんにお話を聞きました。

エンジニアの話をきっかけにプロジェクトがスタート

企画が始まったのは2014年。俳優の伊勢谷友介さんが仲間と立ち上げた、未来における生活を提案する「株式会社リバースプロジェクト」が、ファッションデザイナーを対象に廃棄エアバッグ・リサイクルの説明会を行なったことに端を発します。伊藤さんはそこで、ある自動車メーカーでエアバック開発を担当するエンジニアから、「廃車するクルマに付いている未作動のエアバッグは、安全上再びクルマに使用することはできない。仕方ないことだけれども、日の目を見ないまま処分するしかない」という話を聞きました。

現代の自動車は、その素材の90%以上が再利用されますが、エアバッグとシートベルトは有効な活用方法がなく、焼却されています。そのエンジニアからも「捨てられるのは忍びない。ぜひ再利用の方法を探して欲しい」と頼まれたそうです。そこで、ファッション業界の仲間とチームを組んで、まずバッグを作ることになります。

「yoccatta」の製品第1号となった「ダブルハンドルトートバッグM」。
「yoccatta」の製品第1号となった「ダブルハンドルトートバッグM」。

「ブランド名にもなった「yoccatta(ヨカッタ)」にはさまざまな意味が込められています。『エアバッグが作動しなくてヨカッタ』、『捨てられなくてヨカッタ』、『バッグになってヨカッタ』など、感謝の気持ちをブランド名にしました」とのこと。

人を守るエアバッグの素材だから強い!

「yoccatta」は、白いエアバッグ生地をそのまま活かしたトートバッグやバックパックなど、複数のタイプを製品化。持ち手やベルトの部分は、再利用したシートベルトが使用されています。もともと折りたたまれていたエアバッグ生地をそのまま使うことによる「シワ」も、味わいのひとつ。

2wayバックパック(税込19,440円)
2wayバックパック(税込19,440円)

この「yoccatta」が優れている点は、丈夫であること。「人の命を守るエアバッグ素材は、強度があるんです」と広瀬さん。エアバッグは「ナイロン66」という素材でできていて、バッグ業界ではよく使われているタフな素材だそうです。その素材を活かしているので、丈夫なバッグが生まれます。

サコッシュ(税込:9,504円)
サコッシュ(税込:9,504円)

素材が丈夫であるがために、生地の裁断に苦労したそう。また、すでに縫製され立体的な形状のエアバッグをどのように裁断し縫製するかや、エアバッグを取り出す際につく火薬臭の除去など、商品化までにたくさんの試行錯誤があったようです。

新色「黒」も登場。他企業とのコラボ商品も計画中

ファッションの染色技術を使って染めたブラックカラーも新登場。シックな印象だ
ファッションの染色技術を使って染めたブラックカラーも新登場。シックな印象だ

「yoccatta」は現在、リバースプロジェクトのオンラインショップやカーグッズの関連イベントなどで販売されています。徐々に知名度も上がり、販売数を増やしているそう。当初は、エアバッグ素材そのままの白だけでしたが、ファッションの染色技術を使って染めた黒もラインナップに加わっています。

最後に、ブランドの次なる展開について広瀬さんに伺うと、「他企業とのコラボレーションしたプロジェクトも進行中です」と教えてくれました。これからもっと廃棄エアバッグの再利用商品が広まって、「ヨカッタ」という気持ちが浸透していくことを願っています。

(取材・文:斎藤雅道 写真:yoccattaTOKYO 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]