奈良のバス、100年の歴史を知る「奈良を観る~大和路・バスがゆく~展」

奈良県に初めてバスが走ったのは、大正6年(1917年)5月25日のこと。松山自動車商会が、奈良県宇陀郡松山町(現:宇陀市大宇陀出新)から桜井まで、約13kmの区間で運行を始めたのが最初です。鉄道が通っていない山間部と駅をつなぐことが目的で、事業としても成功したと言います。

そのときから101年目となった機会に、バスを通して奈良近代化の一端を垣間見ようという「奈良を観る~大和路・バスがゆく~展」が、2018年7月10日(火)から8月12日(日)にかけて、奈良市美術館で行われています。

バスの写真を見るだけでなく世代間で思い出が共有できる

ここには、暮らしの中のバスや奈良ならではの旅情を乗せて走る観光バスなど、大正期から昭和50年代までの写真やパンフレットなどの歴史資料、約200点が展示されていました。そしてそれはバスがいる風景、バスそのものの写真、当時の新聞記事やパンフレットなど、すべてにバスが関わっているものでした。

昭和初期の路線図、観光案内パンフレット、バス乗り場での社員の集合写真など。左が奈良自動車、右が大和観光自動車のもの。貴重な資料には個人所蔵のものも多い
昭和初期の路線図、観光案内パンフレット、バス乗り場での社員の集合写真など。左が奈良自動車、右が大和観光自動車のもの。貴重な資料には個人所蔵のものも多い
終戦直後に配給されたトヨタKC型バス。外板はジュラルミンのガソリン車だった
終戦直後に配給されたトヨタKC型バス。外板はジュラルミンのガソリン車だった
奈良(大仏前)―南紀(新宮)直通特急バス開通の広告(昭和38年(1968年))。十津川峡経由で約8時間とある。現在は大和八木駅―新宮駅間を約6時間半で走破する、若干路線は短くなったものの一般道路のみを走行する日本最長バス路線
奈良(大仏前)―南紀(新宮)直通特急バス開通の広告(昭和38年(1968年))。十津川峡経由で約8時間とある。現在は大和八木駅―新宮駅間を約6時間半で走破する、若干路線は短くなったものの一般道路のみを走行する日本最長バス路線
奈良自動車の時刻表・運賃表(手前)、春日奥山観光のガイドの名調子と奈良小唄が吹き込まれたレコード(奥)。どちらも昭和初期の貴重な史料
奈良自動車の時刻表・運賃表(手前)、春日奥山観光のガイドの名調子と奈良小唄が吹き込まれたレコード(奥)。どちらも昭和初期の貴重な史料

奈良市出身の著名な写真家、入江泰吉氏の作品が多数あったのは少々、意外。奈良を撮ることでは一番の氏ですが、寺社仏閣だけでなく、バスが写る街中の写真も多く残されていたのですね。

パネルを見ながら「そんなこともありましたね」なんて、当時の思い出を楽しそうに話す老夫婦の姿も見られました。この展示会は三世代で見に来てもいいかもしれません。子供はバス好きが多いでしょうから、バスの写真や奈良交通作成のビデオを見て楽しめますし、おじいちゃんおばあちゃんや親世代は、懐かしい奈良の景色を見て当時に思いを馳せながら「昔はこんな景色やってんで」と孫と話もできるでしょう。

風前の灯火、ボンネットバス

展示パネルや資料には、個人所蔵の品を借用しているものも多かったのですが、主にボンネットバスの写真を提供されている木村光宏さんという方に館内で出会いました。奈良交通のボンネットバスが大好きで、1台だけ残っているこのバスをできるだけ長く存続させるために”奈良交通のボンネットバスを守る会”を立ち上げ、活動しているとのことです。

「これ以上会員が増えるとボンネットバスに乗りきれなくなってしまうので、会の存在は積極的に広めていないものの閉鎖的な会ではありません」と木村さん
「これ以上会員が増えるとボンネットバスに乗りきれなくなってしまうので、会の存在は積極的に広めていないものの閉鎖的な会ではありません」と木村さん

奈良交通が所有するボンネットバス(いすゞBXD30型)は、昭和41年(1966年)10月13日に新車で導入されたもので、昭和54年(1979年)2月14日を最後に定期路線から引退。その後は定期観光バスや季節臨時バス、市内循環の季節運行などに使われるなど休眠と復活を繰り返し、平成25年(2013年)に奈良交通創立70周年記念に再々度登録され、一年ほど定期観光バスとして運行されました。

やまと号「奈良―新宿線」30周年サボを掲出したボンネットバスと”美人過ぎる広報部員“の竹谷さくらさん
やまと号「奈良―新宿線」30周年サボを掲出したボンネットバスと”美人過ぎる広報部員“の竹谷さくらさん

このあたりで「そろそろヤバい」と感じた木村さんが「守る会」を立ち上げ活動開始。その最初のイベントが、平成26年(2014年)9月30日の五新線跡(未成線)バス専用道廃止に合わせた「さよならバスツアー」だったそうです。その後は、年2回の乗車撮影会が主。使うことで廃車を免れようというわけですね。

バリエーション豊富な奈良交通バスに乗ろう

奈良県下では、最初のバス会社が誕生してから最大時で30近い業者があったものの、統合などを経て徐々に業者数は減り、昭和18年(1943年)7月1日時点であった5社が1社に合併して「奈良交通株式会社」が発足し、現在に至ります。

『奈良交通のあゆみ 発足50周年記念』(奈良交通株式会社)によると、この合併は、昭和17年(1942年)8月に当時の鉄道省監督局長から各地方長官に対して出された「バス事業を府県単位で統合するように」という通達に基づいたものであったとのこと。バスマニア的に現在の奈良交通は、バスの新旧バリエーションが豊富なことが注目点です。

駅~住宅地路線でまだまだ活躍する「日野KC-HU2MPCA型3扉車」(左上)に最古参の「日野U-HU2MPAA型前後扉車」(右上)、もともと希少な「いすゞKC-LV280Q改ワンステップ前中扉車」(左下)、スカニア製連節バス(右下)など、さまざまな世代と種類のバスが走る
駅~住宅地路線でまだまだ活躍する「日野KC-HU2MPCA型3扉車」(左上)に最古参の「日野U-HU2MPAA型前後扉車」(右上)、もともと希少な「いすゞKC-LV280Q改ワンステップ前中扉車」(左下)、スカニア製連節バス(右下)など、さまざまな世代と種類のバスが走る

最古参のいわゆる「U」代から最新の「QPG」代までが一堂に揃うのは、奈良交通ぐらいではないでしょうか。形でいうと、ツーステップ前後扉車、ツーステップ前中後扉3ドア車、ワンステップ前中扉車、ノンステップ前中扉車、加えて2018年3月30日に運行開始したスカニア製連節バスもあります。

「奈良を観る~大和路・バスがゆく~展」とともに、奈良を走るバスを見て乗って楽しむ。そんな夏休みはいかがでしょうか。「ツーステップ前後扉車」に乗るのも、今ではかえって新鮮な体験になるはずです。

▼奈良を観る~大和路・バスがゆく~展
会場:奈良市美術館(奈良市二条大路南一丁目3番1号「ミ・ナーラ」5階)
会期:平成30年7月10日(火)~8月12日(日)
時間:午前10時~午後5時30分(入館は午後5時まで)
休館日:月曜日
観覧料:一般300円(16歳未満・高校生・市内在住の70歳以上の方・障がい者と介護者は無料)
Webサイト:http://www.museum.city.nara.nara.jp/奈良を観る~大和路・バスがゆく~/

(取材・写真・文:大田中秀一 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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