これぞ男の夢! 著名なジムニーフリークが建てた「尾上茂のジムニー歴史館・JIMNY MUSEUM ONOUE SHIGERU」

2018年、新型モデルが発売されたスズキ・ジムニー。小型の4WD車として、1970(昭和45)年の発売以来、アウトドア好きを中心に人気のクルマです。そんなジムニーに魅せられて、オリジナルパーツを開発し、全国のジムニーフリークに発信し続けるジムニーパーツのスペシャリスト「APIO」創業者の尾上茂さんが、なんと私設ミュージアム「尾上茂のジムニー歴史館」を2018年8月オープンさせました。

ジムニー専門パーツメーカー「アピオ」の創業者・尾上茂さん。
ジムニー専門パーツメーカー「アピオ」の創業者・尾上茂さん。

ジムニーに魅せられ、その魅力を引き出した男

ジムニーの世界では有名人の尾上さん。アピオの前身となる自動車整備業「オノウエ自動車」を興し、当時から多くの自動車パーツを企画・開発・製造してきました。ジムニーとの出会いは、1981(昭和56)年のこと。友人の勧めでSJ30を購入したそうです。しかし、その乗り心地がイマイチだったことから自身で部品を製造し、改造したそうです。

尾上さんが最初に手に入れたSUZUKI JIMNY SJ30-1型
尾上さんが最初に手に入れたSUZUKI JIMNY SJ30-1型

「(車体が)軽くて馬力が無くてね、走っているとぴょこぴょこ跳ねるし、急な坂も登れない。それで、もっと乗り心地が良くならないものか、と思って色々試すことにしたんです。リーフスプリングが硬いものだとわかり、似たようなバネを買ってきて組み合わせてみたら、乗り心地も変わり、ジープではクリアできなかったヒルクライムも走れるようになったんです。そこで『このクルマはちょっと触れば確実に変わっていくんだ』と思って、どんどんのめり込んでいったんだよ」と尾上さんはニコニコ。尾上さんの話ぶりをみていると、夢中になってジムニーを改造している姿が容易に想像できました。

尾上さんが当時製造したリーフスプリング
尾上さんが当時製造したリーフスプリング

リーフスプリングを変更した結果、ジムニーは別物のように乗り心地が良くなったそうです。それからこのリーフスプリングがジムニーユーザーで話題となり、アピオを創業しました(現在は会長)。

「尾上茂のジムニー歴史館・JIMNY MUSEUM ONOUE SHIGERU 」の外観
「尾上茂のジムニー歴史館・JIMNY MUSEUM ONOUE SHIGERU 」の外観

ジムニーの魅力がギュッと詰まった世界

場所は神奈川県藤沢市用田。県道45号線沿いで、周囲に高い建物はなく、富士山も眺めることができます。白い四角いコンクリート造の建物は2階建。1階の道沿いには大きな開口部が設けられ、ジムニーの姿が見えます。また駐車場でもやっぱりジムニーが出迎えてくれます。
延床面積はおよそ660平方メートルで、29台を展示。「20年くらい前からミュージアムを作りたい、と思ってあれこれ考えていたんですよ」と尾上さん。壁にはジムニーの歴史が年代ごとにわかるパネルも展示されているので、モデルチェンジのコンセプトなどジムニーをより深く知ることができます。

中に入ってまず目に入るのは、ジムニー開発のきっかけとなった「ホープスター ON型4WD」。1967(昭和42)年、オート三輪の先駆的メーカー「ホープ自動車」が製造したもので、その後、スズキの当時の社長・鈴木修さん(現会長)が製造権を購入した経緯があります。

ホープスター ON型4WD
ホープスター ON型4WD

ミュージアムを開館するにあたり、尾上さんはなんと新潟県在住のコレクターからこのクルマを借り受けてきたそう。「ジムニーの父」とも呼べるべきクルマ、やはり展示したかったようです。ちなみにその隣には、「三菱 ミニカ」が置かれていますが、これはホープスターのエンジンがミニカのものと同じだったから。どちらも超レトロなクルマです。

SUZUKI JIMNY LJ10-2型
SUZUKI JIMNY LJ10-2型

1階には初期のジムニーを中心に展示。ずらりと並ぶ光景は圧巻です。初代のジムニーLJ10は、尾上さんが入手した当初はボロボロだったとか。そのため、別にLJ20の車体を仕入れて元のフレームを生かしながら補修したそうです。もちろん走行可能。どのクルマも尾上さんの愛情の込もった解説文と共に展示されているので、クルマそのもの知識と自ら車体を触った人ならではの臨場感もあります。

2階は2000年代以降のジムニーを展示。また、ラリードライバーとしての尾上さんの顔を垣間見ることもできます。階段を上ってすぐ前方には、尾上さんが2014〜16年までの計3回出場した「ラリーモンゴリアン」で乗車したJB23Wが展示されています。サスペンションやアルミホイールなど、重要な部品はアピオ製品。これは自社製品への信頼と自信が伺えました。ちなみに2014(平成26)年大会でジムニークラス優勝したそうですよ。

モンゴリアンラリーで乗車したSUZUKI JIMNY JB23W
モンゴリアンラリーで乗車したSUZUKI JIMNY JB23W

ちなみに尾上さんは71歳(2018年12月現在)ですが、なんとラリーは昨年まで参加していたそう。ラリー参戦歴は、1981(昭和56)年頃「富士スピードウェイオフロードレース」に始まり、その後、「オーストラリアン・サファリ」には7回、そして「ダカール・ラリー(パリダカ)」にも9回出場し、3回はスズキエスクードで完走しています。「長年レースに出ているものだから首が痛くてね(笑)。今年は辞退したんだよ」と尾上さん。首が良くなれば、まだまだ参戦する意気込みだそうです。

一台一台、愛情を込めて手をかけられたジムニー。尾上さんはキラキラした少年の目をしながら、「このクルマはね〜……」と教えてくれます。このミュージアムはジムニーの歴史や変遷を通して、尾上茂という男性の人生を垣間見ている心地です。ジムニーに魅せられて、ジムニーとともに歩む人生。これぞ好きが仕事になり、成功した男の夢。ジムニーをはじめ、クルマ好きはもちろんのこと、夢を楽しんで叶えた人のパワーを体感できるパワースポットとも言える場所かもしれません。

<施設情報>
尾上茂のジムニー歴史館・JIMNY MUSEUM ONOUE SHIGERU
神奈川県藤沢市用田2140
0466-90-3011
10:00〜17:00
休:月〜水

(取材・文:別役ちひろ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

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