中国初のスーパーカーも! フランクフルトモーターショー2019で見かけた気になるコンセプトカー

グーテン・ターク!(ドイツ語で「こんにちは」)。

ドイツのフランクフルトで開催された国際的なモーターショー「IAA(Internationale Automobil-Ausstellung)」に出かけてきました。日本では「フランクフルトモーターショー」と呼ばれているこのイベントは、ドイツを代表するモーターショーだけあって各国の自動車メーカーが新型車をお披露目する場となっています。

昨今はモーターショーの地盤沈下が叫ばれていて、フランクフルトモーターショーも例外ではありません。残念なことですが、以前に比べると出展ブランドの数や規模が縮小しているのは事実です。とはいえ、今年も地元のドイツメーカーをはじめいくつものブランドが新しい車両を用意。そんな展示の中から、注目コンセプトモデルを紹介しましょう。

コンセプトモデルはそのまま発売されるわけではありませんが、なかには今後の市販モデルを示唆している車両もあります。

メルセデス・ベンツの提案は、大型セダンの電気自動車

「EQ」という電動車(電気自動車だけでなくハイブリッドも含まれる)のサブブランドを立ち上げているメルセデス・ベンツ。そのなかでも「EQC」などのように“EQ+アルファベット1文字”の車名を持つ車両は、電気自動車として独自開発されたモデルです。

今年のフランクフルトショーにおけるメルセデス・ベンツの主役となった「VISION EQS」は、大型セダンの電気自動車。「VISION」はメルセデス・ベンツが将来を示唆するコンセプトカーに付ける名称で、メルセデス・ベンツの大型セダンと言えば「Sクラス」です。「将来はフラッグシップセダンの『Sクラス』も電気自動車にしますからね」というメッセージが聞こえるように思えるのは、気のせいでしょうか。

アウディが提案する電動オフローダー

ここ数年、アウディは「AIシリーズ」と呼ばれるコンセプトカーを各地のモーターショーでお披露目していますが、「AI:TRAIL quattro」はその最新作。電気自動車のオフローダーで、舗装路では自動運転、悪路では運転補助とAI技術を駆使してドライバーをアシストしてくれるのだそうです。

見るからに市販には遠そうですが、提案している技術のいくつかは将来的に市販車へ搭載されるかもしれませんね。

それにしても大きな窓。アウディによると「ヘリコプターのような視界」なのだそうですよ。なるほど。

999馬力のエンジンを積むハイパワーオフローダー!

東欧ベラルーシにある「ラムズモービル」という会社が発表した「RM-X2」。まるで映画から飛びだしてきたかのようなデザインで、「これが似合うのはバットマンか、それとも悪役か?」というくらいの威圧感です。

単なるコンセプトカーかと思いきや「2022年に市販予定」とのこと。エンジンは数タイプ用意されるようで、もっともハイパワーな仕様はコルベット用のスーパーチャージャー付V8エンジンでなんと999馬力を発生。なんという力強さ。停止状態から時速100キロまでわずか3.3秒で加速するという俊足マシンです。それにしても、不気味すぎる!

電動パワートレインを積む、BMW「M」のスーパーカー

「BMW Vision M NEXT」は、BMWの“Mシリーズ”のスーパーカーをイメージしたコンセプトカーで、600馬力を発生するプラグインハイブリッドシステムの搭載を想定しているとのこと。Mシリーズといえばハイパワーエンジンを搭載した走りのモデルですが、そこにも電動化の波が押し寄せていることを感じますね。

ところで、デザインといい雰囲気といい、BMWのプラグインハイブリッドスーパーカー「i8」の次期型のように見えなくもないのは、単なる偶然でしょうか?

これは近いデザインで市販されそう。BMW「コンセプト4」

3シリーズのクーペ版である「4シリーズ」の新型をイメージさせるBMWのコンセプトカーが「コンセプト4」。伸びやかで、とっても優雅です。市販時にはもう少しおとなしいデザインになることでしょうが、イメージはこのままいかされると考えていいでしょう。

最大の注目はフロントグリル。「キドニーグリル」と呼ばれるBMW伝統のデザインですが、ついに、こんなに大きく大胆になっちゃいました。「ナンバープレートはこうやって取り付けるんだよ」と言わんばかりに、車名のプレートが装着されていますね。

あの“紅旗”がスーパーカーをお披露目

漢字で「紅旗」と書くこのブランドは、中国のVIP御用達のクルマとしておなじみ。もともとは “中国のセンチュリーロイヤル”とでも表現すべき国家元首や共産党指導者しか所有できない特別な大型セダン専門ブランド。まさに雲の上の存在でしたが、最近はスポーツセダンやSUVなどを発表し、民主化が進んでいます。ちなみに日本では「こうき」とも呼ばれますが、正しくは中国語読みの「ホンチー」ですね。

そんなホンチーがフランクフルトで突如発表したのが「S9」と呼ぶハイブリッドのスーパーカー。1400馬力以上というパワーからしてすごすぎですが、停止状態から時速100キロまで加速するのに必要な時間はわずか1.9秒、最高速度は400キロ以上なのだとか。それって、世界でも最高峰の速さということになりますが……!?

しかも、数量限定で販売という噂まであって……あの「紅旗」がまさか本気でしょうか? 共産党御用達のブランドのはずなのに、一体どこへ行こうとしているの?

そして紅旗からは、電動の大型SUVも

さらに紅旗ブースでは、「E115」というもう一台のコンセプトカーもお披露目されました。

こちらは電気自動車の大型SUV。ずいぶんとデザインのまとまりがいいように見えますが、実は紅旗のチーフデザイナーはかつてロールスロイスでチーフデザイナーを務めていたテイラー・ジャイルズ氏。彼はロールスロイス「カリナン」のデザインも担当していて、E115にもその手腕が生かされているのでしょう。

ちなみに、紅旗のデザインセンターのひとつは、欧州のデザイン哲学を中国車に取り入れることを目的にドイツのミュンヘン(BMWの本拠地)にあるそうです。意外ですね。

中国では大型SUVが人気なので、これにガソリンエンジンを搭載して市販する道筋なのかもしれません。

昨今の自動車業界の雰囲気は、どうしても「エコ」とか「電気」になりがち。しかし、こうして発表された注目コンセプトカーを並べてみると、「電動化」を盛り込みつつも、やはりモーターショーの華となるのはスーパーカーやハイパフォーマンスカーなのだということを改めて感じたような気がします。

あと1ヵ月ほどで東京モーターショーとなりますが、どんなコンセプトカーが発表されるのか楽しみですね。

(文:工藤貴宏 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

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