自動運転バスから空飛ぶクルマまで「未来のクルマ」が目の前に! 「CEATEC 2019」

IT・エレクトロニクス分野の企業・団体が参加し、最先端の技術や製品を発表する国際展示会「CEATEC(シーテック)」が、10月15日(火)~18日(金)にかけて千葉県千葉市の幕張メッセで開催されました。その中から、自動運転技術を始めとした自動車関連の展示をピックアップ。自動車の未来を探りました。

あとは法的な問題だけ? ここまで来たバスの自動運転

ソフトバンクの子会社「SBドライブ」では、現在、実地で試験運用している自動運転バス「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」を公開していました。この車両は、政府が2020年までに自動運転車の公道利用解禁を目標に掲げていることを受けて開発が進められているもの。フランスの「ナビヤ」という会社が開発したEVバスがベースで、車内に運転席がないのが大きな特徴となっています。

こちらは車内でゲームを楽しむためのコントローラー……ではなく、緊急時に車両を操作するためのもの。大型二種免許を取得しているスタッフが走行したデータをもとに、あらかじめ決められたルートを無人で走るシステムになっていますが、現時点の法律では、緊急時に内部で操作できるスタッフが必要なため、操作用のコントローラーが設置されているのです。バスをゲームのコントローラーで操作するなんて、驚きますね。

「NAVYA ARMA」は、東京電力福島第一原子力発電所ですでに活躍しており、原子炉建屋までの移動に使われています。バスの運用方法について担当者は「現状ではほかのクルマが存在しないエリアをシャトルバスのように走るシステムになっています」とのこと。

安全性に関しては、車外に取り付けられたカメラが障害物や飛び出しを感知するほか、遠隔運行管理システム「Dispatcher」を導入しており、常時スタッフが監視し、遠隔操作も可能だそう。

「今は、必ず車内にスタッフがいなければいけませんが、これは法律上の問題だけで、技術面ではすでにスタッフがいなくても安全に動かせます」と自信を見せる担当者。現在は、時速15キロメートルほどの速度で試験運用をしていますが、スペック上はもっと速度は出せるそうで、公道でも試験も始めているとか。CEATEC会場では体験試乗会が実施されていましたが、すぐに予約がいっぱいになっていました。注目度合いが伺えます。

近い将来やって来る人手不足と二種免許緩和を考えた「働き方改革タクシー」

タクシーの効率的な配車を実現する配車アプリ「MOV」を都内や神奈川県など提供しているDeNAは、その分野でより実務面に踏み込んだ「働き方改革タクシー」を初公開しました。この「働き方タクシー」は、人手不足が顕著になるといわれている2025年問題などを想定したもの。

現在のタクシー業界は「1日丸々仕事をして1日休む」というフルタイムの業態が普通ですが、AIとビッグデータを活用により乗車状況を予測することで空車時間を減らし、効率よく稼働できるようにすることで、好きな時間を選んで働くリリーフドライバーの雇用を促します。

また、交通事故削減支援サービスアプリ「DRIVE CHART」が、車内に設置されたカメラや専用車載機から運転手の状態を確認。運転の傾向を分析し、運転の癖の把握や改善に役立てるサポート機能も搭載します。

これらの技術を活用することで、業務が可能となる習熟期間の短縮が見込めるそうです。例えば1~3日のセミナー期間を設けるだけで、タクシーが運転できる時代になる可能性もあるとのこと。担当者は「専門的な職業でもテクノロジー面のサポートを活用すれば、必ずしも長時間の訓練が必要ではない時代がやってきました」とアピールします。

なお、現在タクシーを運転するには第二種運転免許が必要ですが、「タクシー業界の要望もあって将来的には制度を緩和し、第二種運転免許がなくても運転できる体制を作ろうという動きが政府にあります」とのことでした。

SF作品で見たような世界が現実になる!? 「空飛ぶクルマ」開発の狙いとは?

「NEC」では、SF作品ではおなじみの「空飛ぶクルマ」を公開していました。構造は、ドローンでよく見られる複数のプロペラで動く「マルチコプター」とほぼ同じ仕組みです。すでに8月に屋内での運用試験を終えていて、将来的には実用を考えているとか。

しかし、現行法では公道はもちろん、屋外で動かすのにも法的な手続きが必要で、屋外での運用はまだまだ先のよう。「クルマといっても、道路交通法の効力が及ぶ車両として動かす計画はなく、航空機として航空法の範囲内で運用するものでもありません。高度120メートル以下の航空法の影響下ではない高さでの運用を考えています」と担当者は話していました。

では、なぜここまで手間のかかるものを研究しているのでしょうか?

「既存の法律でどうするかというよりは、将来的な新しい交通システムを提案するための開発をしています。検証・評価を継続して実施するとともに、法改正も含め、政府にアピールしていく方針です」と担当者。なるほど、新しい交通手段そのものを提案しているんですね。

5G(第5世代移動通信システム)の提供が始まれば、自動運転を始めとした未来技術はさらに加速していくはず。周辺サービスも含めて、クルマの進化は留まることを知りません。

(取材・文・写真:斎藤雅道 編集:木谷宗義+ノオト)

<関連リンク>
CEATEC
https://www.ceatec.com/ja/

[ガズー編集部]

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