ガソリンスタンドで見かける「静電気除去シート」って、なんだ?

セルフガソリンスタンドで見かける「静電気除去シート」。給油前に一度触れることが推奨されていますが、そもそも「静電気除去シート」とは何なのでしょう?触ったら本当に静電気は起きないのでしょうか?ガソリン計量機の製造メーカー「株式会社タツノ」営業本部の森英泰さんにお話を聞きました。

クルマに乗っている時も帯電している

身体の帯電量を計測する器具
身体の帯電量を計測する器具

セーターを脱ぐ時やドアノブを触ろうとした瞬間、バチっと痛みを感じる静電気。実はクルマに乗っている時もシートとの摩擦が生じ帯電しています。もしナイロンやポリエスチルなど化繊の衣料を着ていたら、なおさら電気を帯びることになります。帯電した電気は何かに触れれば放電されますが、一番効率よく放電されるのが金属。ガソリンスタンドのスタッフの制服や靴には、電線を織り込むなど導電性に優れた素材を使用し、電気を逃がしやすいものになっています。

ガソリンは「揮発性が高い」ということ

「揮発(きはつ)性が高い」といわれるガソリン。「揮発」とは、常温・常圧時に液体から気体へ変化する現象のこと。実はガソリンの発火点は(可燃性物質を加熱し、自然に発火する温度)300℃とそれほど低くありません。しかし引火点(可燃性物質を加熱し火を近づけた時、瞬間的に引火する最低温度)は-40℃以下ととても低いのです。つまり、ガソリンは液体の状態では発火しないですが、気体になりやすく、気体になった時に引火しやすいというものなのです。

気化した物質のことを「ベーパー」といいます。引火点が-40℃以下と低いガソリンが入っている給油キャップを開ければ、目には見えませんが、すぐにベーパーが外に放出されます。

給油口からベーパーが放出されるイメージ
給油口からベーパーが放出されるイメージ

ガソリンは引火点が非常に低いため、このような状態で万が一、バチっと静電気がきたらとても危険です。そこで静電気除去シートの出番となります。

安心安全を担保する

給油機に取り付けられた静電気除去シート
給油機に取り付けられた静電気除去シート

給油キャップを外せばガソリンベーパーが溢れ出し、少し離れてもガソリンベーパーが含まれた空気が広がります。そんな時に静電気は禁物です。つまり、静電気除去シートに触れるタイミングは、給油キャップを外す前がベストなのです。

タツノによると、「静電気除去シートは、厳密にいうと消防法で設置を義務付けられているものではない」とのこと。では、なぜ全国のセルフガソリンスタンドでこのシートが取り付けられているか。それは「より安心・安全な給油を確実に行うため」。セルフでの給油が増えてきたことから、初めて給油する人でも安全に、安心して給油機(計量機)を使えるように、という観点からタツノが開発したそうです。

静電気除去シートは何でできているかというと、プラスチックに金属を混ぜて作られています。このシートを触ることで帯電していた電気は給油機を介し、地面へと放電される仕組みです。
ちなみに、タツノが製造したシートが、全国のセルフガソリンスタンドに取り付けられているシートの統一基準になっているそうです。

給油キャップを開ける前には必ず静電気除去シートを触りましょう
給油キャップを開ける前には必ず静電気除去シートを触りましょう

もちろんドア(金属)を開けたり、車体を触ったり、給油直前までに何らかの形で除電されていることがほとんどですが、これだけ引火しやすい液体を取り扱うのですから、静電気除去シートを触って確実に除電するに越したことはありません。
皆さん、自分で給油する時は必ず、給油キャップを外す前に静電気除去シートを触りましょう。

(取材撮影・文:別役ちひろ 編集:奥村みよ+ノオト)

<関連リンク>
株式会社タツノ
https://tatsuno-corporation.com/jp/

[ガズー編集部]

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