路上で故障するクルマは年間でおよそ28万台!?

これから運転をしようとするとき、ほとんどの人は「この後、故障してクルマが動かなくなる」と考えることはありません。しかし国土交通省が発表した「令和元年路上故障の実態調査結果」によれば、令和元年(2019年)の9月から11月にかけて、およそ7万件の路上故障が発生しています。単純計算すれば1年間(12ヶ月間)に、およそ28万件の路上故障が発生したことになります。これは決して少ない数ではありません。

ここでは「令和元年路上故障の実態調査結果」の内容から、路上ではどのような故障が多いのか、その原因と防ぐ方法を考えます。

調査は一般道と高速道路で行われる

国土交通省が実施する「路上故障の実態調査」。クルマの不具合に対するユーザーの関心を高め、適切な使用や保守管理、及び不具合発生時の適切な対応が促進されることを目的として実施されています。JAF(日本自動車連盟)の協力のもと、特定の期間(令和元年は9月から11月まで)に発生した自動車の路上故障について、装置別及び部位別の故障発生状況を調べます。

調査は「一般道」と「高速道路」の道路別に行われ、それぞれ装置別、部位別にワースト10が公表されます。

一般道で発生する路上故障。原因となる装置のトップは電気装置、部位はタイヤ

令和元年度の調査では、一般道で発生した路上故障の総計は61,569件。装置別のワースト10は以下になります。

順位   故障装置   発生件数      %
1       電気装置      24,504  (39.8)
2       走行装置      22,162  (36.0)
3       エンジン本体    5,560      (9.0)
4       動力伝達装置    2,938      (4.8)
5       冷却装置      2,733      (4.4)
6       燃料装置      1,289      (2.1)
7       電子制御装置    846         (1.4)
8       潤滑装置      750         (1.2)
9       制動装置      476         (0.8)
10       かじ取り装置    311         (0.5)

※( )は、各総計に対する発生件数割合(%)を示す。

次に故障した部位別のワースト10です。

順位    故障部位          %
1    タイヤ           35.6
2    バッテリー         27.8
3    オルタネータ        5.9
4    冷却水           2.3
5    クラッチ          1.5
6    トランスミッション(A/T) 1.5
7    潤滑油           1.2
8    スタータ          1.1
9    ファンベルト        0.9
10    ラジエーターファン     0.7

ワースト3に入ったタイヤ、バッテリー、オルタネータ。それぞれの故障状況は以下になります。

■タイヤの故障状況
・パンク、バースト
・空気圧不足

■バッテリーの故障状況
・過放電
・破損、劣化
・端子部接続不良
・液不足

■オルタネータの故障状況
・ブラシ不良
・レギュレータ不良
・ダイオード不良
・コイル断線

この調査結果から一般道での故障は、バッテリーとタイヤのトラブルが7割を占めていることが分かります。

高速道路で発生する路上故障。原因となる装置のトップは走行装置、部位はタイヤ

令和元年度の調査による高速道路で発生した路上故障の総計は9,118件。装置別のワースト10は以下になります。

順位   故障装置   発生件数  %
1     走行装置   5,454  (59.8)
2     エンジン本体 1,131  (12.4)
3     電気装置   787   (8.6)
4     冷却装置   551   (6.0)
5     動力伝達装置 441   (4.8)
6     潤滑装置   415   (4.6)
7     燃料装置   188   (2.1)
8     電子制御装置 98     (1.1)
9     制動装置   33     (0.4)
10     かじ取り装置 20     (0.2)

※( )は、各総計に対する発生件数割合(%)を示す。

次に故障した部位のワースト10です。

順位     故障部位          %
1     タイヤ           59.3
2     潤滑油           4.6
3     冷却水           3.8
4     オルタネータ        3.6
5     クラッチ          1.6
6     トランスミッション(AT)   1.5
7     バッテリー         1.4
8     ファンベルト        0.9
9     ラジエーターファン     0.7
10     クリップ・ハブ・ベアリング 0.5

ワースト3に入ったタイヤ、潤滑油、冷却水、それぞれの故障状況は以下になります。

■タイヤの故障状況
・パンク、バースト
・空気圧不足

■潤滑油の故障状況
・オイル不良
・オイルパンからの漏れ

■冷却水の故障状況
・不足、水漏れ
・汚れ
・凍結

高速道路では圧倒的にタイヤのトラブルが多く、原因の6割近くを占めます。ワースト2位の潤滑油(エンジンオイル)と3位の冷却水のトラブルは、高速走行というエンジンの回転数が高い状態が続き、また移動距離が長いことで発生しやすいトラブルです。

帰省や長距離運転の前には点検を忘れずに

一般道と高速道路、共にタイヤのトラブルによる故障がもっとも多く、平成30年以前のデータでも同じ傾向が出ています。主な原因であるパンクは防ぎようがありませんが、バーストと空気圧不足は目視による摩耗や破損の確認によりある程度、防ぐことができます。特に高速走行中のタイヤトラブルは大変危険なので、高速道路に乗る前やガソリンスタンド等で定期的に空気圧をチェックしておきましょう。

一般道ではワースト2位、高速道路では7位に入ったバッテリーのトラブル。トラブルの原因の中でも、バッテリーの破損、端子部の接続不良、液不足は、目視による確認で防ぐことができます。劣化や過放電を目視で確認するのは難しいのですが、定期的に交換することである程度、防ぐことができます。長くクルマに乗らない期間があったら、ディーラー等でバッテリーのチェックをしておきましょう。

高速道路でのワースト2位である潤滑油トラブル、3位の冷却水トラブルは、発生するとエンジン本体に大きなダメージを与え、寿命を短くしてしまいます。発生を防ぐため、日頃からエンジンオイルの劣化や不足、ラジエーター冷却水の劣化や不足を確認しておきましょう。

せっかくの帰省や旅行です。移動中の故障で予定を狂わせたくありません。日頃から愛車のコンディションには気を配り、楽しい思い出を持って帰りましょう。

<関連リンク>
国土交通省
https://www.mlit.go.jp/

(文:糸井賢一 編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

あわせて読みたい!

  • 溝の深さだけではない。雨の日の安全のために、タイヤは新しい方がいい理由
    溝の深さだけではない。雨の日の安全のために、タイヤは新しい方がいい理由
  • ワイパーの交換のタイミングと、ワイパーの選び方
    ワイパーの交換のタイミングと、ワイパーの選び方
  • ここがポイント! スタッドレスタイヤの保管方法
    ここがポイント! スタッドレスタイヤの保管方法
  • ドライブ前に知っておきたい!冬場にありがちなトラブルと対策
    ドライブ前に知っておきたい!冬場にありがちなトラブルと対策

コラムトップ