国産スポーツだけじゃない。クルマ好きを熱狂させる「GT-R」という名車たち

「GT-R」といえば多くの人がイメージするのはやはり「日産GT-R」でしょう。しかし、「GT-R」はそれだけではありません。日本はもちろん、世界を見渡すとたくさんの「GT-R」が存在するのです。そこで今回は、世界の「GT-R」の一部を紹介します。

クルマ好きの憧れ!「日産GT-R」

世界でもっとも有名なGT-Rが、「日産GT-R」ということに異論を唱える人はいないでしょう。1,000万円程で買える量産市販車ながら世界トップレベルの走行性能を誇り、多くのクルマ好きが憧れる日本を代表するハイパフォーマンスカーです。

搭載するエンジンは専用設計の排気量3.8L V6ツインターボで最新モデルのエンジン出力は570ps。高性能仕様の「GT-R NISMO」では600psまで引き上げられています。速さだけでなく、超高速領域での抜群の安定感、日常での実用性、そして快適性とトータル性能の高さも注目されている理由。かつては「スカイラインGT-R」と呼ばれていましたが、2007年にデビューした現行世代はスカイラインから独立して「日産GT-R」となっています。

日産GT-Rはもっとも有名な「GT-R」。(写真:日産自動車)
日産GT-Rはもっとも有名な「GT-R」。(写真:日産自動車)

一億円オーバーのスペシャルなGT-Rも!

GT-R誕生50周年を記念し、「日産GT-R」をベースに作られたスペシャルなモデルが「GT-R50 by イタルデザイン」。前後のデザインだけでなく、天井を約50mm低くしトランクへのアクセスはリアウインドーごと開くハッチバックとするなど、ボディーも大幅に改造された特別なGT-Rです。エンジンパワーは720ps。世界限定50台とはいえ公道走行も可能な市販モデルで、価格は驚きの1億円オーバー!

「GT-R50 by イタルデザイン」は日産GT-Rのなかでも、特に特別な仕様。(写真:日産自動車)
「GT-R50 by イタルデザイン」は日産GT-Rのなかでも、特に特別な仕様。(写真:日産自動車)

クルマ好きの記憶に残る、日産以外の日本車「GT-R」

「GT-R」というモデル名の日本車は、日産GT-Rやその前身である「スカイラインGT-R」だけではありません。その中の1台が「セリカGT-R」。かつて、セリカのスポーツエンジン搭載トップグレード(4WDを除く)には伝統的に「GT-R」という名称がついていました。

「GT-R」はセリカのグレード名としても使われた。(写真:トヨタ自動車)
「GT-R」はセリカのグレード名としても使われた。(写真:トヨタ自動車)

しかし、トヨタの「GT-R」はセリカだけではありません。その兄弟車のコロナクーペをはじめコロナ、カリーナに「GT-R」というグレード名を設定。いずれもスポーツエンジンを搭載した走りのモデルで、トヨタにおいても「GT-R」は特別な意味を持っていたのです。

4AGエンジンを積んだ後輪駆動の「カリーナGT-R」は86レビン&トレノのセダンのような感覚。(写真:トヨタ自動車)
4AGエンジンを積んだ後輪駆動の「カリーナGT-R」は86レビン&トレノのセダンのような感覚。(写真:トヨタ自動車)

「GT-R」というグレード名に特別な意味を込めたメーカーは日産やトヨタだけではありません。マツダも「ファミリア」の7代目モデルに「GT-R」を設定。WRC(世界ラリー選手権)への参戦を前提に、高出力ターボエンジンと4WDを組み合わせたエボモデルでした。

コンパクトボディーに高出力エンジンを搭載した「ファミリアGT-R」。(写真:マツダ)
コンパクトボディーに高出力エンジンを搭載した「ファミリアGT-R」。(写真:マツダ)

また、マツダは2代目の「RX-7」にもグレードとして「GT-R」を設定していましたが、こちらはなぜかベーシックグレードという位置づけ。ときにはそんなGT-Rもあります。

海外の最新「GT R」は、超ハイパフォーマンスモデルの称号

「G」「T」「R」という3文字のモデル名は、海外にも存在。ただし「GT R」もしくは「GTR」と日本車とは異なり「-(ハイフン)」がないことが多いようです。

いま、クルマ好きの間で話題になっている最新の「GTR」が、メルセデス・ベンツの超高性能モデル「メルセデスAMG GT R」。「AMG GT」という車種の最高峰となる仕様です。エンジンは4.0L V8ターボで530ps。さらに過激な仕様を望むなら、公道走行可能車両でありながらサーキット仕様に仕立てた「GT R PRO」もあります。

(写真:メルセデス・ベンツ)
(写真:メルセデス・ベンツ)

海外ではレースを前提とした市販モデルも多数

海外ではレースに出場するために造られた市販モデルも多く存在します(公道走行が可能なものと不可能なものがある)。もっとも有名なのは、マクラーレンが「マクラーレンF1」というスポーツカーをベースに「ル・マン24時間耐久レース」に参戦するために開発した「マクラーレンF1 GTR」でしょう。初参戦した1995年には、日本人レーサーの関谷正徳選手もドライバーとして活躍したチームが優勝しました。

ル・マン24時間耐久レースで勝つために開発された「マクラーレンF1 GTR」。(写真:マクラーレン)
ル・マン24時間耐久レースで勝つために開発された「マクラーレンF1 GTR」。(写真:マクラーレン)

そんなマクラーレンはサーキット専用モデルに「GTR」という名称を好んで採用。「P1」や「セナ」など1000ps級を誇る超高性能モデルで、基本的にはナンバープレートの取得ができません。

マクラーレン「P1 GTR」。「GTR」ではない通常の「P1」を持つオーナーだけに購入資格があり、価格は3億円を超える。(写真:マクラーレン)
マクラーレン「P1 GTR」。「GTR」ではない通常の「P1」を持つオーナーだけに購入資格があり、価格は3億円を超える。(写真:マクラーレン)

実は、BMWにも「GT-R」が存在します。それが、2001年にレースに出場する資格を得るためにわずか10台だけが市販されたホモロゲーションモデルの「BMW M3 GT-R」。380psの排気量4L V8エンジンは通常の「M3」とは異なりドライサンプ(エンジンの重心を下げるための複雑なエンジンオイル潤滑方式)を採用。ボディーにはカーボンを多く使い、価格は日本円にして約2700万円でした。

手前が公道走行可能な市販モデルの「M3 GTR」で、奥はレース仕様。(写真:BMW)
手前が公道走行可能な市販モデルの「M3 GTR」で、奥はレース仕様。(写真:BMW)

しかし、究極の「GTR」といえるのはメルセデス・ベンツの「CLK GTR」かもしれません。レースに出場する資格を得るために、車体構造もエンジンも超本格的なレーシングカーと同じまま、最小限の安全装備と快適装備だけで販売されました。ナンバー取得可能なモデルは世界でたったの25台。まさに公道を走れるレーシングカーです。1999年に発売されたときの価格は、日本円換算で約2億5000万円と常識外れ。

どう見てもレーシングカーですが、法規はクリアしているのでナンバープレートを取得でき公道走行可能な「CLK-GTR」。(写真:メルセデス・ベンツ)
どう見てもレーシングカーですが、法規はクリアしているのでナンバープレートを取得でき公道走行可能な「CLK-GTR」。(写真:メルセデス・ベンツ)

そもそも「GT-R」という言葉の意味は?

ところで、「GT-R」(「GT R」「GTR」)という3文字のアルファベットにはどんな意味が込められているのでしょうか。「GT」とは「グランドツーリング」の略で、「長い距離を快適に走れるクルマ」や「長距離を快適に走れる性能」といった意味を持ちます。そこへ「レース」や「レーシング」に由来する「R」を加えることで、高性能モデルであることをアピールしているのです。

(写真:日産自動車)
(写真:日産自動車)

今回紹介したモデルは、どれも高い走行性能を備えていることからもわかるように、「GT-R」という言葉のイメージは多くの国で共通となっているのでしょう。

(文:工藤貴宏 写真:日産自動車、トヨタ自動車、マツダ、メルセデス・ベンツ、マクラーレン、BMW 編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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