後輪駆動ってなに!? 駆動方式の違いによるメリットやウィークポイントはどんなところ?

クルマ選びの際に「前輪駆動」や「後輪駆動」というキーワードが出てくることがあります。その違いはどこにあり、どんな長所や短所があるのでしょうか。そもそも前輪駆動とか後輪駆動というのは、駆動輪が車両の前輪なのか、それとも後輪なのかを区別する言葉。駆動輪とは、エンジンやモーターなどの動力を路面へ伝えるタイヤのことを指します。ちなみに4WDは前後両方のタイヤに駆動力を伝える機能を備えた仕組みです。

前輪駆動は前のタイヤが動力を伝える役割を担う仕掛け。子供が乗る三輪車をイメージするとわかりやすいかもしれません。いっぽう後輪駆動は後ろのタイヤが路面へ力を伝えます。いうなれば自転車と同じ感覚ですね。

前輪駆動の最大のメリットは居住スペースを広く設計できること

かつて乗用車は、後ろのタイヤで大地を蹴る後輪駆動が一般的でした。日本でも1980年代前半までは小型車でも多くが後輪駆動を採用していたのです。しかし今では、前のタイヤで動力を伝える前輪駆動が主流になっています。では、なぜ前輪駆動が主流になったのでしょうか。それはひとことでいえば「効率化」です。

ヤリスのようなコンパクトカーが前輪駆動を好む理由は、居住スペースを広くできるから。(写真:トヨタ自動車)
ヤリスのようなコンパクトカーが前輪駆動を好む理由は、居住スペースを広くできるから。(写真:トヨタ自動車)

乗用車のパッケージングは一般的に「車体の大きさに対してできるだけ広い居住空間を確保する」ことが高効率といえます(ミニバンが分かりやすい例ですね)。そのためにはエンジンルームを可能な限りコンパクトに設計するのがセオリーで、同じサイズのエンジンを積んだとしても一般的に前輪駆動は後輪駆動よりもエンジンルームも前後長を短くできます。これは搭載方法の違いによるものです。

たとえばトヨタでは「ヤリス」、「カローラ」、そして「カムリ」などが代表的な前輪駆動車ですが、いずれも1980年代はじめまでは後輪駆動を採用していました(ヤリスの前身である「スターレット」のかつてのモデルは後輪駆動を採用)。当時は前輪駆動が普及しておらず、小型の乗用車でも後輪駆動が一般的だったからです。前輪駆動への移行は、できるだけ室内を広げるという実用面からのアプローチと考えれば革命的な進化といえるでしょう。

かつてと違い、カムリのように車体の大きなセダンでも前輪駆動を採用する例が増えている。(写真:トヨタ自動車)
かつてと違い、カムリのように車体の大きなセダンでも前輪駆動を採用する例が増えている。(写真:トヨタ自動車)

また、直進安定性がいい、駆動系の部品を減らせるからコストや車両重量を抑えられる、などのメリットもあります。一方で、かつては旋回時のクルマの挙動が不安定という欠点が存在。さらに、高出力エンジン搭載車はパワーを前輪だけでは受け止めきれないという面もありました。
しかし今では、アクセルを多く踏んだ際にハンドルが左右に取られるのを防ぐ等長ドライブシャフトの採用、ハンドル操作量が変わることで生じるタイヤの接地性の変化を抑えて旋回時の挙動を安定させたサスペンションの性能向上、トラクションコントロールをはじめとする電子制御技術の搭載など、技術の進歩によりほぼ解消されています。
さらに、タイヤのハイグリップ化により空転を防いで駆動力をしっかりと路面へ伝えられるようになったこともハンドリング性能の進化につながっています。

ところで、前輪駆動(「フロントドライブ」とも呼ばれる)の乗用車として成功した最初のクルマをご存知でしょうか。実は、誰でも知っているほど有名なクルマです。

それは1959年にイギリスで発売された「ミニ」。アレック・イシゴニスというエンジニアが、小さな車体に最大の居住スペースを確保する方法としてエンジンを前に置き前輪駆動とした「FF(フロントエンジン・フロントドライブ)」を採用したのです。それ以前にも前輪駆動のクルマはありました。しかし、量産乗用車として普及のきっかけとなったのはミニなのです。

前輪駆動のパッケージングを普及させたのが初代ミニだ。
前輪駆動のパッケージングを普及させたのが初代ミニだ。

クルマ作りが進歩し前輪駆動の欠点が解消されていくとともに、乗用車はどんどん前輪駆動化されました。パッケージングやコストなど、後輪駆動よりも前輪駆動の方がよりメリットが多いからです。

後輪駆動は特別なこだわりを持ったクルマが採用することが多い

しかし、すべてのクルマが前輪駆動となったわけではなく、後輪駆動は今でも残されています。トヨタでは「86」「スープラ」「クラウン」などです。それはどうしてでしょうか?

スープラのようなスポーツカーは後輪駆動を好む。(写真:トヨタ自動車)
スープラのようなスポーツカーは後輪駆動を好む。(写真:トヨタ自動車)

理由はもちろん後輪駆動ならではのメリットがあるからですが、なかでも最大のものが走行性能。後輪駆動は“前輪が舵を切る”“後輪が駆動力を伝える”と前後の仕事が分かれているので、タイヤの役割が分担されて能力に余裕が生まれます。そのため運動性能を高めることができるというわけです。さらに前輪が駆動力の影響を受けないので、ハンドルの操作感が素直という長所も。スポーツカーに好まれるのはそれらが理由であり、ドリフトなどダイナミックな走りも後輪駆動ならではです。

ダイナミックな走りを楽しむには86のように後輪駆動が最適。(写真:トヨタ自動車)
ダイナミックな走りを楽しむには86のように後輪駆動が最適。(写真:トヨタ自動車)

また「FR(フロントエンジン・リアドライブ)」では前後のタイヤにかかる重さのバランスが良く、これもスポーティーな走りに向いています。

クラウンのような高級セダンは伝統的に後輪駆動を採用。(写真:トヨタ自動車)
クラウンのような高級セダンは伝統的に後輪駆動を採用。(写真:トヨタ自動車)

一方で、クラウンのような高級セダンが後輪駆動を採用する理由は少し異なります。一般的に後輪駆動車の特徴のひとつは、前輪と後輪にかかる重量の配分を前後均等に近づけられること。それは走行性能を向上するだけでなく、より乗り心地を高めることにもつながるからです。

ちなみに「ハイエース」などのバンやトラックの多くが後輪駆動なのは、スポーツカーや高級セダンとは違った理由です。重い荷物を積んだ際にタイヤが空転しないように考えられているから。こうして駆動方式をみても、好まれる理由にはさまざまな背景があっておもしろいですね。

(文:工藤貴宏 写真:トヨタ自動車 編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

あわせて読みたい!

  • 「ジープ」が大きなきっかけに!「4WD」が一般的な存在になるまで
    「ジープ」が大きなきっかけに!「4WD」が一般的な存在になるまで
  • あのメーカーの創始者はハイブリッド車の発明者?! クルマ界に大きな貢献をしたフェルディナント・ポルシェ博士
    あのメーカーの創始者はハイブリッド車の発明者?! クルマ界に大きな貢献をしたフェルディナント・ポルシェ博士
  • 日本のマイカー普及とともに歩んだカローラ12世代を振り返る
    日本のマイカー普及とともに歩んだカローラ12世代を振り返る
  • キーワードは「直6」。17年ぶりのスープラ復活で知っておきたい歴代モデル
    キーワードは「直6」。17年ぶりのスープラ復活で知っておきたい歴代モデル

コラムトップ

  • コラムトップ
    コラムトップへ