なぜ「TEAM JAOS」は「アジアクロスカントリーラリー」に参戦し続けるのか?

F1日本グランプリをはじめとする、名だたるモータースポーツの世界選手権が軒並み中止に追い込まれた2020年。毎回、多くの日本人が参加しているアジア最大のクロスカントリーラリー「アジアクロスカントリーラリー(以下AXCR)」も影響を受けた1つ。今年は、タイ~マレーシアのコースが予定されていましたが、当初予定されていた8月の開催が見送られ、現在代替スケジュールの発表を待っている状態です。

今回は、2015年より「TEAM JAOS」を結成しAXCRに参戦し続けている日本のパーツメーカー「ジャオス」の代表 赤星大二郎氏に、このラリーの魅力や長きにわたって参戦を続ける想いを伺いました。赤星さんは、自身もこのラリーの参戦経験者で現在はチームの監督を務めています。

AXCRに参戦し続けて気づいたラリーの魅力

株式会社ジャオス 代表取締役 赤星大二郎さん
株式会社ジャオス 代表取締役 赤星大二郎さん

Q:赤星さんにとってAXCRの魅力とは?

赤星さん:このラリーの魅力は、人と人とを繋いでくれることに尽きるのかなと思います。各々のチームは、資金や時間などを工面し、長く辛い準備期間を経てラリーに参加しています。選手達はもちろん、チームや大会を支えている関係者が国籍・年齢・性別を越えて毎年その舞台に集い、終われば互いの健闘を称え合うという、シンプルでありながら勝負やビジネスといった垣根を越えて共有した時間は、何物にも代えがたいものです。ラリーを通して培った縁やマネジメント力やコミュニケーション力といった人間力は、仕事や私生活にも活かされていると感じています。

Q:印象に残っているシーンを教えてください

赤星さん:「TEAM JAOS」結成前に個人で参戦した2004年は、思い出深い年でした。なにしろ何もわからない中での初参戦でしたから。また、10年ぶりにチームを結成して復帰した2015年も、印象深い参戦でした。片山右京選手や篠塚健次郎選手らとも同じ舞台で戦えたのも、いい思い出です。また、私はコ・ドライバーとして参戦しましたので、高いドライビング技術を持つトップラリーストの隣に座らせていただけたのは、今振り返ると貴重な経験だったと思います。

「TEAM JAOS」結成の10年前、ランドクルーザープラドでAXCRに出場した赤星さん(写真提供:赤星大二郎)
「TEAM JAOS」結成の10年前、ランドクルーザープラドでAXCRに出場した赤星さん(写真提供:赤星大二郎)

AXCRは、日本人にとって比較的参戦しやすい海外ラリーということもあり、元F1ドライバーの片山右京選手や元GPライダー青木拓磨選手、またスーパーGTのドライバーや全日本ジムカーナチャンピオンなど、違うジャンルのドライバーも多く参加しています。

Q:ラリー参戦車両はどうやって決めているのですか?

赤星さん:2015年に「TEAM JAOS」を結成して、トヨタ「FJクルーザー」で参戦しました。当時、発売されていた車種の中で、東南アジアのステージに一番マッチしていたと考えたからです。車重なども考慮しました。その2015年に、タイで見かけた最新の「ハイラックス」の格好よさに一目惚れして、次期参戦車両に決めました。

当時、AXCRで圧倒的に強かったのが、いすゞ「D-MAX」でしたので、心のどこかで「ストップ ザ いすゞ」という気持ちもあったかもしれません。当時、日本では未発売だったため、1台目の「ハイラックス」はタイから取り寄せ、日本で製作しました。このマシンは2016年から3戦出場し、2019年には2代目のハイラックスにスイッチして、現在に至っています。

「TEAM JAOS」最初のマシンはFJクルーザー(2015年 ドライバーは塙郁夫選手)
「TEAM JAOS」最初のマシンはFJクルーザー(2015年 ドライバーは塙郁夫選手)
2016年からはハイラックスにマシンを変更(写真は2017年)
2016年からはハイラックスにマシンを変更(写真は2017年)
2016年からドライバーを務める能戸知徳選手とコ・ドライバーとして参戦した赤星さん。翌年より赤星さんは監督に専念(2016年のゴール、カンボジア アンコールワットにて)
2016年からドライバーを務める能戸知徳選手とコ・ドライバーとして参戦した赤星さん。翌年より赤星さんは監督に専念(2016年のゴール、カンボジア アンコールワットにて)

Q:2台続けてトヨタ車となりましたがその理由は?

赤星さん:実はチーム結成前に参戦した2004年、2005年の時もランドクルーザープラドでした。その時、現地のTRDの皆さんに大変お世話になったという気持ちの部分も、マシン選択に影響しています。また、この時乗ったプラドも、そのあとのFJクルーザーも、AXCRの起点となるタイでは正規販売されていないのですが、トヨタ車であれば流用可能な部品が調達しやすいというメリットもあります。

もちろん、現在使用しているハイラックスはタイで販売されているモデルなので、そのメリットはもっと大きなものとなります。車両自体の堅牢性や信頼性が非常に高いことに加え、部品調達のしやすさは、過酷なこのラリーにおいてとても重要なポイントです。

国境越えもAXCRの醍醐味(2019年 タイ、ミャンマーの国境)
国境越えもAXCRの醍醐味(2019年 タイ、ミャンマーの国境)

Q:今年の参戦体制は?

赤星さん:今年も参戦車両はハイラックスです。また今年は、北米で高いブランドイメージを持つオフロードタイヤ「オープンカントリー」を手がけるトーヨータイヤと、ジャオスがクロスカントリー4WDの楽しさをより多くの人に知ってもらいたい、楽しんでもらいたいという気持ちで手を組みました。

もちろん、「TEAM JAOS」はオープンカントリーでこれからのAXCRを戦っていきます。「オープンカントリーM/T」「オープンカントリーR/T」ともに、テストを順調に重ねています。2020年仕様のハイラックスのシェイクダウンの際には、プロモーションムービーの撮影も行いました。

AXCRにある「ラリー(Rally)」の本質

赤星さんが初めてランドクルーザープラドでAXCRに出場した際にタイでお世話になったTRDへの感謝の気持ちが、のちに同じトヨタのFJクルーザーでの出場に繋がります。かつて、同じAXCRに出場していた能戸知徳選手は、今やジャオスの社員ドライバーとして参戦。また、足まわりの設計を担っているKYBの開発者 田中一弘氏は、2017年より能戸選手と組みコ・ドライバーとして自ら出場し、アジアの大地と格闘しながら、その経験をダンパーに注ぎ込んでいます。

冒頭で「このラリーの魅力は、人と人とを繋いでくれることに尽きるのかなと思います」と述べてくれた赤星さん。その言葉通り「TEAM JAOS」の進化は、まさに人と人との繋がりがもたらしていると言えるでしょう。マシンの整備を行うのは、ジャオスの地元である群馬県の群馬トヨタ。今春締結されたトーヨータイヤとのパートナーシップと2020年の参戦に向け、人と人との輪は一層大きくなっているようです。

トーヨータイヤのムービー撮影が2020年仕様のシェイクダウンとなった
トーヨータイヤのムービー撮影が2020年仕様のシェイクダウンとなった

「ラリー(Rally)」とは、フランス語で「集合させる」という意味の「ラリエ(Rallier)」が語源だそうです。ラリーは自動車競技の一種ですが、その本質は参戦を決めた日からゴールに向け、多くの人と繋がりながら準備を進める、そのプロセスそのものかもしれません。コンペティションでありながら、競技を離れると和気あいあいという、ラリー特有の雰囲気の理由がわかったような気がします。

<関連リンク>

TEAM JAOS
http://jaos.co.jp/contents/teamjaos/team_jaos_index.php?r_year=2020

アジアクロスカントリーラリー日本事務局
http://www.r1japan.net/axcr/index_ja.html

(取材・文・写真:高橋学 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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