【小説】 女子オプ!−自動車保険調査員・ミキ− 第4話#15

第4話「スパイ事件を調査せよ!」

​3rd ミキ、仁、純のビミョウな関係。
#15 告白の返事

わたしはホワイトデーの夜に、弁護士の河口仁と恵比寿でフランス料理を楽しんでいた。
​高級チョコが高級フレンチに化けたのだ。たぶん、価格的には10倍くらい。
「ミキちゃんの会社の松井社長がさ、いい人材を紹介してくれたって、いつも感謝してくるんだよ」
仁が笑顔で言った。
「え、もしかしてわたしのことですか?」
「『危険な調査から外してやってくれ』って言っているのに、『もう頼んじゃいました』って、社長は聞く耳持たなくってさ」
「おじさまのお陰で、毎日充実しています」
「それならいいけどね。わたしは心配してばかりで、心臓に良くないよ」
そう言いつつも、仁は嬉しそうだ。
トイレに行ったタイミングで時計を見ると、22時近くになっていた。席に戻ると、「じゃあ、行こうか」と促される。
会計は済ませた様子だ。
「御馳走さまでした」
まだ電車は動いている時間だったけど、タクシーに乗せてくれる。
「じゃあね、今夜も思い出に残る時間を過ごせたよ」
「こちらこそ、ありがとうございました」
自宅に到着してほどなく、河口純から着信があった。
今夜、純の父親である仁と食事に行くことはメールで伝えていた。仁からも誘われたけど、「あなたの父親と先に予定が入っている」と断ったのだ。
<親父とのデートはどうだった?>
第一声は茶化すような口調だった。
<自分では絶対に行けないような高級レストランで、美味しいものを御馳走になっちゃった>
<まあ、年取ると、それくらいしか頑張れないからな>
<そんなことないよ。本当に楽しかった>
<ところで、急かすわけじゃないけど、あれから考えてくれているの?>
<うん、もちろん>
<それは、期待していいのかな>
<ひとつだけ気になっていることがあって……>
少し間が空いた。
<なにか障壁になっているものがあるのかな>
<仁先生には、なにも言わないつもり?>
<ああ、まだなにも言ってないや。やきもち焼かれそうだしね>
そう言って純は笑った。
<まあ、それは冗談だけど、面倒なことを言われそうな気もするし。仕事では毎日話すけど、一緒に住んでいるわけじゃないから、あんまりプライベートの話はしないんだよね>
<仁先生もそう言ってた>
<まあ、OKもらえたら、もちろんすぐ話すけど>
わたしは少し酔っていることもあり、すぐに言葉が出てきた。
<じゃあ、タイミングの良い時に、伝えてくださいな>

(続く)

登場人物

上山未来・ミキ(27)
上山未来・ミキ(27):主人公。新米保険調査員。父の失踪の理由を探っている。愛車はトヨタスポーツ800。

周藤健一(41)
周藤健一(41):元敏腕刑事。なぜ警察を辞めたのかも、プライベートも謎。社長の意向でミキとコンビを組むことに。

桜川和也(29)
桜川和也(29):ミキの同僚。保険調査の報告書を作成するライター。ミキのよき相談相手。彼女あり?

成田真由子(27)
成田真由子(27):ミキの中学校時代からの親友。モデル体型の美人。大手損保に勤務する。時間にルーズなのが玉に瑕。

河口仁(58)
河口仁(58):河口綜合法律事務所の代表。インスペクションの顧問弁護士で、ミキの父親の友人。なにかと上山家のことを気にかけている。

河口純(30)
河口純(30):河口仁の息子で、ミキの幼馴染。ちょっと鼻につくところはあるが、基本的にいい人。愛車はポルシェ911カレラ。

小説:八木圭一

1979年生まれ。大学卒業後、雑誌の編集者などを経て、現在はコピーライターとミステリー作家を兼業中。宝島社第12回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、2014年1月に「一千兆円の身代金」でデビュー。宝島社「5分で読める!ひと駅ストーリー 本の物語」に、恋愛ミステリー「あちらのお客様からの……」を掲載。

イラスト:古屋兎丸

1994年「月刊ガロ」でデビュー。著作は「ライチ☆光クラブ」「幻覚ピカソ」「自殺サークル」など多数。ジャンプSQ.で「帝一の國」、ゴーゴーバンチで「女子高生に殺されたい」を連載中。
Twitterアカウント:古屋兎丸@usamarus2001

イラスト車両資料提供:丸田章智さん

編集:ノオト

[ガズー編集部]