ル・マンに勝つのと、このクルマが世に出るのはどっちが先か! ~GRスーパースポーツコンセプト~

今年の東京オートサロンは、びっくりからスタートしました。もう既にご存知かと思いますがTOYOTA GAZOO Racingの出展の目玉! GRスーパースポーツコンセプト!幕張に行かれた方も多いと思いますが、ご覧になられましたか?え?市販するの?って思いませんでした? 驚かせんといてトヨタさん!と…。これで合ってますかね関西弁。

ホントに?が、頭をよぎるばかりだったのですが、まず、このクルマを受け入れる心の準備として(笑)、ロードカーという言葉がヒントになりました。普段、レース畑で仕事をしている私は、WEC(世界耐久選手権)で、ル・マン24時間などを走っているTS050が将来市販車として出るという事態が、もうプロモーションビデオの世界で、なかなか受け入れ難く(笑)。でもね、ロードカー…、車検通って公道を走ることができるようになる!と考えたら、まず自分の中の第一段階をクリアしました(笑)。そうかそうかと。

堂々と走ることができるようになったら第二段階。会場でこのクルマを見ながら、食いしん坊のわたくしは、市販化されるということは、これでドライブスルーに行くことも有りうるわけよねと(コラ)。えっと、ドアは前に開くから…注文するマイクには届くのかな? 商品を受け取る際に店員がびっくりするなあ、それよりポテトの匂いが車内に充満するなあ、コーヒーこぼしたくないなあ、デパートの駐車場大変だなあ、近くのスーパーの買い物なら私は多分大丈夫かなあ、コインパーキングに停めちゃう? 高速はETCないとダメよねー、チャイルドシートが付けたい場合は?旅行に行きたいんだけど、トランクは? とりあえずコーティング、スタンドで窓はお拭きしますか?と聞かれたら、とりあえず拭いてもらって、レースのピット作業みたいになってしまう店員さんを中から応援しようなどなど、通常起こりうるパターン(?)を思い描いて、説明員にぶつけておりました(笑)。

第三段階。そもそもお値段は?たくさん楽しいドライブを妄想したところで、そもそも買えるのかしらと。見た瞬間から、庶民の私には到底手の届かないものだと思っておりますが、妄想だけで終わる事でしょう。でも、まず「目」で見て憧れを抱くには、充分すぎる事は間違いなく…。きっと購入層は、ドライブスルーなんか行かない、コインパ停めないとか、笑っちゃう妄想の数々かもしれないけれど、世の中のスーパーカーを見かけると、そんなくだらんことを考えるのも楽しくて…。楽しい妄想0円、スマイル0円な訳です。気持ちが少し落ち着いて来ました(笑)。

そして、クルマをあらためて眺め頭を整理しますと、市販車を開発の段階でモータースポーツからの知見で鍛えていくのが、TOYOTA GAZOO Racing。今回、発表されたGRスーパースポーツコンセプトは、会場のど真ん中に鎮座しておりましたが、そのクルマの後ろに開発車、またその後ろにWEC(世界耐久選手権)現役のTS050と、現役車からの誕生の経緯を現すレイアウトでした。TS050からの誕生ね。ふむふむ、モータースポーツからの…のレイアウトを受け入れすんなり納得。

いやいや、ちょっと待て…。違う違う、全く違う!TS050というモータースポーツを生みの親に持つ市販車が誕生するという、これまでに無い流れじゃないの!お気づきでしたか?非常に大事なポイントを見逃してしまう所でした。うっかりしていたのは、私だけでしょうか? すみません…。モータースポーツという大切なキーワードを、頭の中に埋め込むことが、逆にそうさせてしまっていました。スペックは、リリースをご参照のこと。

〇リリース
TOYOTA GAZOO Racing
GRスーパースポーツコンセプトを東京オートサロンで初公開
-WECで鍛えられたハイブリッド技術を生かした、次世代のスーパースポーツカー
http://toyotagazooracing.com/jp/pressrelease/2018/0112-01.html

次世代のスーパースポーツを目指し、現在も開発中とのことです。スーパーって言葉は、日本人が好きな言葉なのかなという思いは、まず置いといて…。その衝撃のルックス、まんまTS050だから驚きも数倍。レース用の太いタイヤは、私にとってサーキットで見ている身近さがありましたが、市販車としてのインパクトが非常に大きいです。そして、何より見た瞬間、開口一番“トヨタが本当にコレを出すの?”と(失礼)。口をついて出ました。

コンセプトカーをこれまでも沢山手がけ出展をしているけれども、斬新な姿であればあるほど、そして既存の市販車のデザインからかけ離れれば離れるほど、コンセプトカーの「域」から飛び出すことは無いんだろうと勝手に思っていました(またもや失礼)。こちらの驚きと同時に、メーカーにとってもこれまでと違う道筋でクルマに命を吹き込む“新しい挑戦!”になる訳ですよね。ふむふむ。

開発者を代表してトヨタ自動車古場博之さんに、少しお話を伺いました。
「クルマ本来の操る楽しさにポイントを置いてみると、ル・マンで培ったレーシングハイブリッドの技術を市販車に投入すると、火力発電所並みの熱効率50%くらいでEVのクルマと何ら変わらないものが“軽量”でできます。充電も30分もかからなく(コンセプトモデルは、電動車)、いつ何時でも自由に出かけられるクルマです。これはトヨタ自動車として実現するのは中々難しいのですが、チャレンジを続けるTOYOTA GAZOO Racingという小さなトヨタだからできるクルマづくりですね。

こういうクルマを出すことで、われわれが小さい頃に憧れのスーパーカーを見てスゴイ!カッコいい!と「夢」を抱いたことの実現にもなるし、レースで培った技術を市販化すると、こんなにクルマって楽しいんだと思うと同時に、レースも大事という思いも生まれます。クルマづくりにこのような“こだわり”を見せることで、クルマ好きが広がっていって欲しいですね」

いつ市販されますか?の質問には、できるだけ早く販売にこぎつけたいという回答でした。本当に売るんだ!と、ここに来ても未だ信じられない自分がいますが、今般のイベントの中のWECトークショーで、ステージに登場した小林可夢偉選手は、このクルマを買う!と宣言しました。買うで!ってね。中嶋一貴選手は、ワクワクすると表現し、買わないのか?と小林選手に質問されていましたが、答えは近い将来出るのかも。そして、開発中の富士スピードウェイを走る映像も流れました。小林選手も参加されたそうです。それ見て、また本当に売るんだ!と何度も確認する私…。

そして、今般のビッグニュース!東京オートサロンで毎年行われる東京国際カスタムカーコンテストの発表が最終日にあり、「GRスーパースポーツコンセプト」がコンセプトカー部門の最優秀賞を受賞しました!詰まっている技術も私の大好きなモータースポーツでもありますし、ファンでもあるWEC、応援し続けているル・マン24時間ですのでうれしい限りです。このクルマ、話題な訳です、ブースはすんごい人だかりで歩くのも大変でしたからね。

生みの親となったTS050。今年は大幅にWECも変わりますが、ただただル・マンを制覇を応援しています。その思いはファンのみなさまも強くなっていると思います。何より完走しない事には勝利できないですので、メーカー参戦が減ったところで自分たちとの戦いでもありますよね。ル・マン24時間に勝つのが先か、このクルマが世に出るのが先か、見届けたいと思います。愚問をタイトルにしましたが、市販車の開発には時間がかかることも伺っていますので、ル・マンを先に制覇すると信じています!そして、GRスーパースポーツコンセプトが将来名前を変え市販された暁には、東京オートサロンにカスタマイズされたクルマが展示される事にも期待!近い将来にワクワクを抱き続けます!では、また!

(写真 折原弘之、テキスト 大谷幸子)

[ガズー編集部]