抱えきれない喜び、そして悔しさ ~SUPER GT最終戦現場レポート~

SUPERT GT最終戦が、11月2日(土)、3日(日)ツインリンクもてぎ(栃木県)にて開催されました。最終戦にふさわしいドラマチックなストーリーと激しいバトル。逆境に陥ってからタイトルを獲得する展開、タイトル獲得は喜びもひとしおかと。

逆に、タイトルを掴みかけ、逃したチームの落胆は簡単には癒えないでしょう。そんな心を大きく揺さぶられた最終戦を簡単に振り返ります。サーキットにいらした方も、テレビで見た方もシビレちゃったのでは?と思います。

GTファンは、すべてご存じだと思いますが、まず予選。ランキングトップの6号車WAKO`S 4CR LC500大嶋和也/山下健太組は、2番手、フロントロウ獲得です。ランキング2位の37号車KeePer TOM’S LC500平川亮/ニック・キャシディ組は、4番手。6号車よりも後ろです。トムスのピットの雰囲気…、ちょっとだけ重くなりました…。でも、淡々と仕事。6号車は、さらにタイトルを引き寄せました。

予選3番手23号車MOTUL AUTECH GT-R 松田次生/ロニー・クインタレッリ組は、予選でポールポジションを獲得しなければタイトルの可能性はなかった為、タイトル争いからは脱落。

しかし、優勝を射程圏内に捉えました。きっちり狙ってくる強豪チームですので怖い存在。ポールポジション獲得の36号車 au TOM’S LC500と共に、その決勝でのポジションがタイトルの行方を左右する存在になるかも?と思いました。

そして、レースは予想以上の大一番となりました。

オープニングラップでの37号車ニックの躍進がすごかった。もうね、闘志でスタートしたばかりのタイヤを温めた感じですよ。6号車もパスして、序盤でトムス1-2体制。6号車は、状況が一変、苦しい展開となりました。

レースは始まったばかりなのに、トムス逆転タイトル?と思った方も多いでしょう。でも残り周回数はたっぷりありましたよね。テレビの生中継の画面に出るポイント計算も、気が早すぎやしないかい?と感じました。レースは最後までわからないって言うでしょ?まさにでした。

6号車は、ミニマム周回でドライバー交代。今季チームに加入した山下健太選手は、本当に速い、トムス1-2で膠着状態となったレースを早めに打破したいゆえに、彼の速さに期待して送り込まれましたね。いつも飄々としている彼ですが、強い気持ちでいかないとタイトルは獲れない、と思って乗り込んだそうです。

37号車も2位からなかなか前へ出られない状況が続きました。チームメイト36号車を抜かないとタイトルはないのです。6号車の位置にもよりますが。ここでみんながきっと考えるであろうチームの連携プレイ。レースが始まる前に、トムスの舘信秀総監督は、絶対にフェアなレースをしようとチームに伝えたそうです。

チームプレイで勝つのもそう簡単にはいかない難しいレースでしたが、そこはチームの方針。2台のクルマは、それぞれ大きなスポンサーさんを抱えていますし、それぞれが結果を欲しているのは当然のこと。昔っから、チーム内もバチバチなのがトムス。ですからオーダーはナシ。

37号車、平川選手が36号車の関口選手の動きを良く見ていて見事にオーバーテイク、トップへ浮上し、自らタイトルへの道を切り開きました。その後、逃げ切り優勝。この上ない結果ですが、タイトルには届きませんでした…。

昨年も、最後タイトル争いにもつれ込むも、惜しくも獲得ならず。これだけ優勝を喜べないのも、最終戦あるあるです。最終戦での優勝の価値、タイトル争いに敗れると、一転して軽いものとなってしまいますね…。悲しいかな仕方ないことです。

 

2番手の36号車と6号車のバトルは、こちらも後ろから追いかける方が相手の動きが良く見えます。36号車関口選手は鬼ブロックで頑張りましたが、6号車山下選手も冷静でしたね。ここぞと思うところで、しっかりパス。2台でバトルの末コースアウトした際は、とうとうやってしまったかと悲鳴も上げそうになりましたが、コースに戻りました。

このバトルは審議対象になりましたが、レーシングアクシデントの裁定が下りました。この裁定でレースが止まることなく、また、レース中にセーフティカーが出なかったことも最終戦のレースをおもしろいものにしてくれたと思います。もちろん危険な際はセーフティカーが導入されますよ。

そんな展開で、6号車が17年ぶりにタイトル獲得。チームチャンピオンは、37号車が獲得となりました。トムスの落胆ぶりはこの上なく。当たり前だと怒られましたが、2位は要らないプロ集団のリベンジも、来季の楽しみにしています。

タイトルに絡まないチームは、つまらないだろうと思う方もいるかもしれませんが、最終戦は戦績をしっかり残し、来季に繋ぎたいと考えます。だから、空気を読まずって読む必要もないけど、結果を求めるのには変わりがないのです、しかもノーハンデですからね。

今回、日産陣営が気になりましたね。GT-Rのエースが信じられないくらい元気がなく、また菅生ラウンドで投入されたエンジンや、もてぎで急遽、積み替えた12号車のエンジンがブローするなど、信じらない状況が続いてますよね…。心配ですが、来季は当然復調してくるはずですので、待ってますね。

ホンダ陣営は、1号車 RAYBRIG NSX-GTジェンソン・バトン選手のSUPER GTラストランでした。2年前、F1ワールドチャンピオンがまさかの参戦で驚きましたが、初年度でタイトル獲得。もうバイバイですね…。タイトル以上がありませんから、考え方によっては当然ですね。

F1の世界から見たら、日本の国内レースはいろんな意味でチープに感じたかもしれませんが、良さもわかっていただけたかと。チーム国光のみなさんから、きっと感じてくれたのではと勝手に思っています。2年間ありがとうございました。

お子様も生まれて、次は何をするのかな?予選日の夕方、記者会見をホンダさんが開いてくださり、ナスカー参戦か?の質問が飛んでおりましたが、今後の活躍も、遠くから応援してますね。そこで、バトン選手の後のストーブリーグにも大注目ですね!

その他、最終戦のトピックとして、来季のGT500クラスの車両の展示とデモランがありました。3年に一度、新車に変わります。3メーカーが協力して、コストダウンをしても、エキサイティングなレースを展開するクルマを作ってくださっています。

現在、絶賛開発中のクルマですが、9月の発表会以来の公の場への登場、もてぎで見られて良かったです。これからさらに改良、熟成され来年の開幕戦までにどんな変化を遂げるのか、各メーカーの手腕の問われるところ。こちらも楽しみにしてますね。

今回タイトルを獲得したチームルマン。脇阪寿一監督がドライバーとして獲得して以来、17年ぶりのタイトルです。もうね、ドライバーとしてメチャクチャとがってて、近づきがたい脇阪寿一がそこにいましたよ、17年前。飯田章選手とね。

その後、2006年にトムスに移籍。36号車でタイトルを獲ったのは2回。その時のことを思い出しました。もてぎの最終戦は、思い出がいっぱい詰まっています。うれしいことも悲しいこともね。

インタスグラムに書いちゃいましたが、以前は、シリーズ表彰も最終戦でやっていたんですよね。そこでもらったキャップ、ブリヂストンのキャップですが、いただいたんですなぜか私が…。あれ?チャンピオンじゃなかったかな。とにかく表彰式でかぶったキャップが手元に。

当時の脇阪監督のマネージャーさんが表彰式の後すぐに持ってきてね。ねーさんに持ってって!と言われたよと。寿一さんいいとこあるなぁと、言いながらいただいたのです。翌朝、当時のブログを書きながら、いろんなことがあったなぁと、涙が止まらなくてね。朝から泣いてました。

キャップには、ありがとうって書いてあったんです。泣けた…。そして、寿一の字が下手でますます泣けた(笑)。今回、タイトル獲ってサインガードで泣いてる監督さんを見たら、いろんなこと思い出しました。

仕事でバタバタで一瞬でしたけどね。長くなったのでこの辺でやめますが、プレッシャーに押しつぶされそうになった大嶋くん、いつものケンタ、寿一、強いクルマを作った阿部エンジニア、そしてチームのみなさま、天国の山田健二エンジニア!おめでとうございました。特別なレースでしたね!今回。

本当におめでとうございました。長すぎてごめんなさい!

(写真:折原弘之・大谷幸子 / テキスト:大谷幸子)

[ガズー編集部]

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