【PHVとの生活】コンテナハウス+PHVでオフグリッドな週末を楽しむ

コンテナハウス&PHVの可能性を探る

災害時にPHVは「動く非常用電源」として活躍する。PHVが搭載する大型バッテリーを利用して、電源供給車として活用するケースだ。震災のときに大いに注目されたが、その後も、大雪で停電をした地域で、3日間、PHVを電源供給車両として利用し、ライフラインを確保したというケースも実際にある。

もちろんEVでも車載のバッテリーから電力を供給できる車種もあるが、PHVのさらなる利点は、バッテリーの電力を使い切ったあとも、ガソリンが入っていれば、エンジンで発電して電力を供給することができる点だ。今回の取材に利用した『アウトランダーPHEV』の場合、ガソリン満タンの状態であれば、一般的な家庭の10日分の電気消費を賄う能力がある。

今回の取材報告は、そのような非常時の利用事例だけではなく、毎週末にPHVの給電機能が活躍するシチュエーションの想定だ。コンパクトなコンテナハウスに電力を供給して、オフグリッドな週末ライフを実現することは、果たして可能なのか、というものだ。

取材にご協力いただいたのは、多種多様なコンテナハウスの企画・設計の実績を持つ建築家、株式会社アーキメタルドットジェーピーの大屋和彦さんと、コンテナハウスを購入し、そこで実際に生活をされている水野亨さん。今回は、水野さんのコンテナハウスにお邪魔して話を聞いた。

コンテナハウスの住み心地は?

水野さんのコンテナハウスは南房総の冨浦にある。敷地内からは海も見え、温暖な気候とオーシャンビューで、心洗われるリゾートといった風情。そんな絶好のロケーションに建つコンテナハウスは、一般的な20フィートのコンテナを2本、間隔をあけて設置し、その間にメタルフレームの壁と窓を設えた豪華なもの。

向かって左が設計事務所の大屋氏。右が水野さん。コンテナハウスの中でお話を聞いた。

以前からコンテナハウスには注目していたという水野さん。ご両親の他界をきっかけに、新たな生活をはじめようと考えたそうだ。「景色や環境のいい土地に住みたいと考えていました。予算がある程度限られていたので、以前から気になっていたコンテナハウスを調べたところ、建築家の大屋和彦さんに出会い、お願いすることになった次第です。」

水野さんの場合、コンテナハウスはセカンドハウスとしてではなく、住んでいた町田の家を売って引っ越してきたそうだ。実際の住み心地はどうだろうか。気になるのは、快適性に大きく影響する断熱性能だ。その点、もともと気密性が高いコンテナに、断熱のために壁面に発泡ウレタンを吹き付けた仕様となっており、非常に快適だという。

もともとイタリアンシェフの経験がある水野さんは現在、そんなコンテナハウスの正面に広大なウッドデッキをDIY中。レストランとして使う計画だ。「ピザ窯も設置したいので、まだ時間とお金がかかりそうです。」と笑う。

住まいの概念を変えるコンテナハウスのサステナビリティ

水野さんのコンテナハウスは建築設計事務所である株式会社アーキメタルドットジェーピーが設計し、株式会社2040.jpが施工した。建築家の大屋和彦氏は言う。「中古の貨物用コンテナをポンと置いて、出入口や窓を開けただけでは、暮らしていくうえでいろいろ不都合が生じます。そもそも日本の建築基準に合致していないうえ、貨物用コンテナは壁で強度を確保する構造なので、窓のために穴をあけると、必要な強度が得られず、筐体が歪んでドアや窓が開かなくなったり、サビによる雨漏りの事例もあったりします。」

大屋氏のコンテナハウスは、輸送用のコンテナとは違い、住むための要件をきちんとクリアできるようイチから設計し、作られたものだ。壁で支える構造ではなく、骨格をきちんと入れてラーメン構造とし、大きな開口部を確保できるように作られている。

ではなぜ、輸送用コンテナを流用できないにもかかわらず、専用のハウス用コンテナを日本の建築基準に合わせてわざわざつくるのか。

いちばんの魅力は可搬性である。コンテナとはつまり、世界基準の貨物標準規格であり、船舶、鉄道、トラックなどロジスティクスが確立されており、かつ安い。「生産の場所、設置場所を選ばず、安価に自由に移動させられることができます。使わなくなったハウス用コンテナを中古市場で流通させることもできます。撤去も簡単だし運搬も簡単なので、必要とされるところで永く使ってもらうことができる。コンテナハウスとは、コンテナサイズのモジュールのシステム建築とも言うことができます。そんなサスティナブルなところが、建築家としてのコンテナハウスの面白さです。」(大屋氏)

実際、大屋氏が設計するコンテナハウスは中国の工場で作られている。日本の建築基準をクリアするため、JIS規格の鋼材を使い、日本の溶接工試験に合格した工員によって作られている。中国で安価に製造し、安く運ぶことができる。移動を前提とした構造物だから、耐震性は抜群だ。運搬中は大きく揺れることも、鋭い衝撃を受けることもある。地震の揺れ以上の衝撃を受けながら、コンテナハウスは、それでもビクともしない。

コンテナハウスとPHVで週末ライフは実現可能か

今回お邪魔した水野さんのコンテナハウスは、ガス、水道、電気のライフラインを設置した立派な設えだが、では、週末に利用するためのミニマムなコンテナハウスに、PHVで給電しながら利用する、という利用は現実的なのだろうか。

all-in-oneコンテナ内部。シャワーとトイレ、ロフト形式のベッドがビルトインされている (株式会社コンテナハウス2040.jp提供写真)

「ライフラインを引かず、単独で設置する方法をオフグリッドといいます。PHVで電力を供給するとしたら、ガスは電力で代替することもできますね。トイレはバイオ分解を利用したコンポストトイレを使う方法もあるでしょう。飲料水は持ち込みが現実的でしょうが、今は雨水を濾過するシステムもあります。」

オフグリッドの醍醐味は、ライフラインのインフラがないところにも設置できるという点だ。人里離れた山中や、海の見える岬の突端などにも設置できる。

「all-in-oneコンテナという20フィートコンテナ1本のシンプルなコンテナハウスを企画中です。デザインを工夫することで建築面積を10平米以下として、母屋がある場合は建築確認申請を不要にする予定です。トイレ、シャワー付きで300万円以下を目指しています。来春にはお披露目できそうです」(大屋氏)

300万円のほかに、基礎代は3-40万円から。もし上下水道が近くまで来ていれば、引き込んでもいい。その場合は50万円程度掛かる。いずれにせよ、およそ400万円で、憧れの週末セカンドハウス生活が実現できそうだ。そしてもちろん、災害時は非常用住宅となり、人生設計が変わっても、引っ越したくなったりしても、コンテナハウスならいろいろな選択肢がある。

サスティナブルなコンテナハウスをPHVで給電して週末に使う。コンテナハウスとPHVの”良いとこ取り”なライフスタイルは、憧れるだけでなく、実際に手が届くところにあるようだ。

(レスポンス編集部)

[ガズー編集部]