【BMW X1 試乗】エンジンが縦だろうが横だろうが「そんなの関係ねぇ」…中村孝仁
デビュー当初に乗せてもらったのは、ガソリン仕様の2リットルエンジン搭載車。あれから『X1』には試乗していなかった。今回はディーゼル仕様の「xDrive」(4WD)である。
その昔、BMWジャパンのある御仁が、「BMWですよぉ~!ディーゼルなんか出すわけないじゃないですか!」と宣った。断っておくが遥か昔のことだ。そう80年代。スポーティーで鳴らしたBMWが、どんくさいディーゼルなんか作るわけがない、というのが彼の言い分。確かに当時のディーゼルはどんくさかった。ホントに臭いし、ホントにトロイし、音はうるさいわ加速は鈍いわ。でもヨーロッパではディーゼルは当時から主流で、誰もそんなことを気にも留めず、ディーゼル車を買っていた。ライバルであるメルセデスは、その昔からそのどんくさいディーゼルを作り続けていた。そんなところがメーカーとしてのBMWとメルセデスの差なのかな?と漠然と思っていた。それが80年代。
あれから30年たって、BMWには超高級モデルや性能を標榜するようなクルマ以外はすべてのモデルラインナップにディーゼルが存在する。それどころか、頑なにスポーティーさとドライビング・プレジャーの追求から前輪を操舵し、後輪で駆動するFRというレイアウトに拘り続けてきたのに、あっさりとFWDを作るようになった。変節である。
しかしこの変節。BMWを良い方向に転がしたように思う。かつては随分と突っ張ったクルマが多くなったように感じていたが、今は丸さを感じ(性格的な話だ)、誰にでも受け入れられて、それでいながら適度なスポーティー感と快適性、それに高級感を感じられるブランドに進化したからだ。
X1も初めて乗った時はこちらが構えていたせいもあってか、FWDに対するアレルギーがあったように思うが、2年たって今やこれが当たり前と感じられるようになった。それにしても初めてBMWのFWDに乗った時は、まだまだ少なからず違和感を感じたものだが、今やそんなことは全くない。
今回はレジャーと仕事を兼ねて伊豆までのドライブ。40:20:40に分割可倒式のリアシートを倒して荷物を積めばその容量に驚かされるし、日本的な積載を考慮して、かつてのような直方体一辺倒のラゲッジスペースとされていないから、ゴルフバッグを真横にしてリアゲート直前に積むこともできた。
18dのパワーユニットは、ドライブトレーンごとそっくり基本的に『2シリーズ・アクティブツアラー』などと同じだから、こちらにとっては勝手知ったるものなのだが、改めて思ったことは、2シリーズと比べてもこのX1の方が遮音性が高いのか、静粛性が高いということ。とりわけエンジンをかけた状態で表に一旦出て、その車外音を確かめた後でもう一度室内に入りドアを閉めると、その遮音性の高さを実感できる。だから、走り出してしまえばディーゼルであることなど完璧に忘れてしまうし、箱根の登りや伊豆スカイラインのワインディングなど、改めてその力強さと軽快な身のこなしに感銘を受ける。エンジンが横に積まれていようが縦に積まれていようが、「そんなの関係ねぇ」と言わんばかりである。
もう一つ、最近のBMWで「良いな」と感じているのがACC(アダプティブ・クルーズコントロール)である。何が良いかと言うと、普通、このACCを作動させるためにはまずメインスイッチでACCを起動させ、しかる後に設定したいスピードでスイッチを押すことによってはじめてACCモードとなる。つまり、スイッチを2度押す必要があるのだが、BMWの場合X1に限らず、今クルーズしたいなと思えば、ステアリングのACCスイッチを1回押すだけ。それでその時点のスピードでACCが作動する。スピードを変えたければその後でいかようにも変えられる。だから非常に直感的だし、頻繁に使おうという気になる。これで長距離の移動の際、特につまらない高速での走行は、こいつに任せておくことが出来て、疲労度半減となるわけだ。
とまあ、FWDベースのAWDではあるわけだが、快適でロングドライブで疲れにくく、サイズだってそこそこで、室内は快適だし荷物もたっぷり積める。そこで比較したいのが新しく出たMINIのPHEV『クロスオーバーSE』だ。
まずサイズは、X1の全長4455×全幅1820×全高1600mmに対し、MINIは4315×1820×1595mm。全長で140mmの差がある以外はほぼ同じ。そしてお値段もMINIのPHEVが479万円からであるのに対し、X1はxDriveに限定してディーゼルという条件で、グレードにさえ拘らなければ、449万円からある。因みに試乗車「Mスポーツ」の場合は495万円。このグレードの良いところはスポーツシートの心地良さと抜群のサイドサポート。もちろんスポーツサスペンションを装備するが、快適性は完璧に担保されている。
というわけで、全長を除けばサイズだって、性能だってあまり変わらないMINIクロスオーバー。ミニ独特のデザインや存在感は認めるとして皆さんはどっち派だろうか。僕はBMWに軍配を上げる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
(レスポンス 中村 孝仁)
その昔、BMWジャパンのある御仁が、「BMWですよぉ~!ディーゼルなんか出すわけないじゃないですか!」と宣った。断っておくが遥か昔のことだ。そう80年代。スポーティーで鳴らしたBMWが、どんくさいディーゼルなんか作るわけがない、というのが彼の言い分。確かに当時のディーゼルはどんくさかった。ホントに臭いし、ホントにトロイし、音はうるさいわ加速は鈍いわ。でもヨーロッパではディーゼルは当時から主流で、誰もそんなことを気にも留めず、ディーゼル車を買っていた。ライバルであるメルセデスは、その昔からそのどんくさいディーゼルを作り続けていた。そんなところがメーカーとしてのBMWとメルセデスの差なのかな?と漠然と思っていた。それが80年代。
あれから30年たって、BMWには超高級モデルや性能を標榜するようなクルマ以外はすべてのモデルラインナップにディーゼルが存在する。それどころか、頑なにスポーティーさとドライビング・プレジャーの追求から前輪を操舵し、後輪で駆動するFRというレイアウトに拘り続けてきたのに、あっさりとFWDを作るようになった。変節である。
しかしこの変節。BMWを良い方向に転がしたように思う。かつては随分と突っ張ったクルマが多くなったように感じていたが、今は丸さを感じ(性格的な話だ)、誰にでも受け入れられて、それでいながら適度なスポーティー感と快適性、それに高級感を感じられるブランドに進化したからだ。
X1も初めて乗った時はこちらが構えていたせいもあってか、FWDに対するアレルギーがあったように思うが、2年たって今やこれが当たり前と感じられるようになった。それにしても初めてBMWのFWDに乗った時は、まだまだ少なからず違和感を感じたものだが、今やそんなことは全くない。
今回はレジャーと仕事を兼ねて伊豆までのドライブ。40:20:40に分割可倒式のリアシートを倒して荷物を積めばその容量に驚かされるし、日本的な積載を考慮して、かつてのような直方体一辺倒のラゲッジスペースとされていないから、ゴルフバッグを真横にしてリアゲート直前に積むこともできた。
18dのパワーユニットは、ドライブトレーンごとそっくり基本的に『2シリーズ・アクティブツアラー』などと同じだから、こちらにとっては勝手知ったるものなのだが、改めて思ったことは、2シリーズと比べてもこのX1の方が遮音性が高いのか、静粛性が高いということ。とりわけエンジンをかけた状態で表に一旦出て、その車外音を確かめた後でもう一度室内に入りドアを閉めると、その遮音性の高さを実感できる。だから、走り出してしまえばディーゼルであることなど完璧に忘れてしまうし、箱根の登りや伊豆スカイラインのワインディングなど、改めてその力強さと軽快な身のこなしに感銘を受ける。エンジンが横に積まれていようが縦に積まれていようが、「そんなの関係ねぇ」と言わんばかりである。
もう一つ、最近のBMWで「良いな」と感じているのがACC(アダプティブ・クルーズコントロール)である。何が良いかと言うと、普通、このACCを作動させるためにはまずメインスイッチでACCを起動させ、しかる後に設定したいスピードでスイッチを押すことによってはじめてACCモードとなる。つまり、スイッチを2度押す必要があるのだが、BMWの場合X1に限らず、今クルーズしたいなと思えば、ステアリングのACCスイッチを1回押すだけ。それでその時点のスピードでACCが作動する。スピードを変えたければその後でいかようにも変えられる。だから非常に直感的だし、頻繁に使おうという気になる。これで長距離の移動の際、特につまらない高速での走行は、こいつに任せておくことが出来て、疲労度半減となるわけだ。
とまあ、FWDベースのAWDではあるわけだが、快適でロングドライブで疲れにくく、サイズだってそこそこで、室内は快適だし荷物もたっぷり積める。そこで比較したいのが新しく出たMINIのPHEV『クロスオーバーSE』だ。
まずサイズは、X1の全長4455×全幅1820×全高1600mmに対し、MINIは4315×1820×1595mm。全長で140mmの差がある以外はほぼ同じ。そしてお値段もMINIのPHEVが479万円からであるのに対し、X1はxDriveに限定してディーゼルという条件で、グレードにさえ拘らなければ、449万円からある。因みに試乗車「Mスポーツ」の場合は495万円。このグレードの良いところはスポーツシートの心地良さと抜群のサイドサポート。もちろんスポーツサスペンションを装備するが、快適性は完璧に担保されている。
というわけで、全長を除けばサイズだって、性能だってあまり変わらないMINIクロスオーバー。ミニ独特のデザインや存在感は認めるとして皆さんはどっち派だろうか。僕はBMWに軍配を上げる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
(レスポンス 中村 孝仁)
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