【トヨタ クラウン 試乗】これまでのクラウンとは異質な存在に仕上がった…中村孝仁
これまで『クラウン』のユーザー年齢層は60代だという。『カローラ』よりは少し若いようだが、それでも十分年寄りのクルマである。そんなクラウンのユーザー年齢層を若返らせよう、そんな指令の元作られたのが、15代目である。
実は、従前の購買層は恥ずかしながら僕の年齢と一致する。そして若返りを試みたのは何も今に始まったことではなく、「ゼロ・クラウン」と呼ばれた時代あたりから始まったように思う。しかし、これまではまだ古いオヤジ世代と新たな顧客層のためなのか、ロイヤルサルーン系とアスリート系のボディを明確に分けていた。それが今回、そもそもロイヤルサルーンだのアスリートだのという名称を廃し、同時にボディも1グレードのみとする変更を断行。さらにすでに昨年の東京モーターショーでコンセプトとして出されていたから、ご存知だとは思うが、史上初の「6ライト」デザインでルーフがなだらかに下る、いわゆるクーペ風セダンのデザインを纏って現れたからビックリだ。
「いつかはクラウン」というキャッチコピーの元、昭和の時代はオトーサンが憧れる存在のクルマであった。当時若かった僕は見向きもしなかったクルマなのだが、それが最近は妙に気になる存在になり、時々乗ってみようかな…とさえ思う。この現象は僕が歳を取ったからではなく、クラウンが僕に近づいてきてくれた結果だと信じて疑わない。そして15代目は完全にこれまでのクラウンとは異質な存在に仕上がっている印象を受けた。
異質と言い切ってしまうと少々問題があるかもしれないが、要は軸足を束ねて開発が一本化された印象を受けるのである。グレードというよりもエンジン系列で3つにわけられていて、2リットル直4ターボと8速ATを組み合わせたモデル、2.5リットルとCVTを組み合わせたハイブリッドモデル、それに3.5リットルV6とマルチステージハイブリッドトランスミッションを組み合わせたハイブリッドの3種。今回試乗したのは2リットルターボと8速ATを組み合わせた最もスポーティーな「RS」というモデルだ。少しややっこしいが、2.5リットルハイブリッドにもRSグレードは存在する。
で、この2リットルターボのRSである。そもそも今回初めてTNGAと呼ばれる基本骨格採用したことで、走りの性能は大幅に向上を果たした。とにかく全域で抜群のしっかり感を与えてくれるし、ステアリングもきわめて正確。切ったなりにきちっと曲がってくれる。ちゃんとしたメカニカルな8速ATが装備されるのも、この2リットルとの組み合わせのみだから、同じRSでも2.5リットルはCVTとの組み合わせとなるから走りは違うはずだ(乗っていないので不明)。
かなり派手目の茜色(アカネイロ)と名付けられたオレンジ色のボディの試乗車、さすがは『センチュリー』を除けばトヨタのトップグレードモデルだけに、ドアを閉めたとたんに外界と遮断された静寂感に包まれる。
新しいクラウンの大きな特徴の一つにコネクテッド、即ち繋がるという機能がある。例えば万一の事故でエアバックが展開すると、自動的に警察や消防に連絡が行き、最悪に備えてドクターヘリの要請なども出来る仕組みだ。また、ナビはAIよろしく、話しかけて行き先を告げれば、自動的にナビ設定をしてくれるし、車外からスマホでそれらを行うことも出来る。こうした機能は今後益々取り入れられていくのだろうが、そのシステムの進化に正直なところ平均ユーザー層である60代が付いていけるかは不安。あるいはそれを承知の上でユーザー年齢引き下げを行っているのか…まあ後者なのだろう。
でも、ターボと8AT、それにTNGAは、昔取った杵柄で腕に覚えのあるドライバーには嬉しいコンビネーションである。それにこのグレードにはリアにパフォーマンスダンパーが採用されているほか、AVSを採用してノーマル、スポーツなどに走行モードを切り替えることも出来る。もっとも、色々あれやこれや試してみたが、それほど大きな変化はなかった。
足のチューニングには、あのニュルブルクリンクにまで赴いたという。しかし、このクルマは日本国内専用車で、輸出はされない。にもかかわらず敢えてニュルブルクリンクでハンドリングのチューニング、足のチューニングを行うことからして、クラウンの変化が読み取れる。
ボタン一つでオペレーターと繋がれるのは、若いユーザーにとっては行きたい場所を教えてもらえるし、年寄りにとっては万一の体調不良でも安心。日本ならではの配慮の行き届いた高級車である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
実は、従前の購買層は恥ずかしながら僕の年齢と一致する。そして若返りを試みたのは何も今に始まったことではなく、「ゼロ・クラウン」と呼ばれた時代あたりから始まったように思う。しかし、これまではまだ古いオヤジ世代と新たな顧客層のためなのか、ロイヤルサルーン系とアスリート系のボディを明確に分けていた。それが今回、そもそもロイヤルサルーンだのアスリートだのという名称を廃し、同時にボディも1グレードのみとする変更を断行。さらにすでに昨年の東京モーターショーでコンセプトとして出されていたから、ご存知だとは思うが、史上初の「6ライト」デザインでルーフがなだらかに下る、いわゆるクーペ風セダンのデザインを纏って現れたからビックリだ。
「いつかはクラウン」というキャッチコピーの元、昭和の時代はオトーサンが憧れる存在のクルマであった。当時若かった僕は見向きもしなかったクルマなのだが、それが最近は妙に気になる存在になり、時々乗ってみようかな…とさえ思う。この現象は僕が歳を取ったからではなく、クラウンが僕に近づいてきてくれた結果だと信じて疑わない。そして15代目は完全にこれまでのクラウンとは異質な存在に仕上がっている印象を受けた。
異質と言い切ってしまうと少々問題があるかもしれないが、要は軸足を束ねて開発が一本化された印象を受けるのである。グレードというよりもエンジン系列で3つにわけられていて、2リットル直4ターボと8速ATを組み合わせたモデル、2.5リットルとCVTを組み合わせたハイブリッドモデル、それに3.5リットルV6とマルチステージハイブリッドトランスミッションを組み合わせたハイブリッドの3種。今回試乗したのは2リットルターボと8速ATを組み合わせた最もスポーティーな「RS」というモデルだ。少しややっこしいが、2.5リットルハイブリッドにもRSグレードは存在する。
で、この2リットルターボのRSである。そもそも今回初めてTNGAと呼ばれる基本骨格採用したことで、走りの性能は大幅に向上を果たした。とにかく全域で抜群のしっかり感を与えてくれるし、ステアリングもきわめて正確。切ったなりにきちっと曲がってくれる。ちゃんとしたメカニカルな8速ATが装備されるのも、この2リットルとの組み合わせのみだから、同じRSでも2.5リットルはCVTとの組み合わせとなるから走りは違うはずだ(乗っていないので不明)。
かなり派手目の茜色(アカネイロ)と名付けられたオレンジ色のボディの試乗車、さすがは『センチュリー』を除けばトヨタのトップグレードモデルだけに、ドアを閉めたとたんに外界と遮断された静寂感に包まれる。
新しいクラウンの大きな特徴の一つにコネクテッド、即ち繋がるという機能がある。例えば万一の事故でエアバックが展開すると、自動的に警察や消防に連絡が行き、最悪に備えてドクターヘリの要請なども出来る仕組みだ。また、ナビはAIよろしく、話しかけて行き先を告げれば、自動的にナビ設定をしてくれるし、車外からスマホでそれらを行うことも出来る。こうした機能は今後益々取り入れられていくのだろうが、そのシステムの進化に正直なところ平均ユーザー層である60代が付いていけるかは不安。あるいはそれを承知の上でユーザー年齢引き下げを行っているのか…まあ後者なのだろう。
でも、ターボと8AT、それにTNGAは、昔取った杵柄で腕に覚えのあるドライバーには嬉しいコンビネーションである。それにこのグレードにはリアにパフォーマンスダンパーが採用されているほか、AVSを採用してノーマル、スポーツなどに走行モードを切り替えることも出来る。もっとも、色々あれやこれや試してみたが、それほど大きな変化はなかった。
足のチューニングには、あのニュルブルクリンクにまで赴いたという。しかし、このクルマは日本国内専用車で、輸出はされない。にもかかわらず敢えてニュルブルクリンクでハンドリングのチューニング、足のチューニングを行うことからして、クラウンの変化が読み取れる。
ボタン一つでオペレーターと繋がれるのは、若いユーザーにとっては行きたい場所を教えてもらえるし、年寄りにとっては万一の体調不良でも安心。日本ならではの配慮の行き届いた高級車である。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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