【BMW X2 試乗】若者へのアピールはわかるんだけど…中村孝仁

BMW X2
BMWが国内の宣伝用に、タレントを起用してプロモーションを行うのはこれが初めてのことだという。起用されたタレントは香取慎吾。そして彼がプロモーションするクルマは、BMW『X2』である。

そもそもこのクルマ、SAC、即ちスポーツ・アクティビティー・クーペだそうだ。つまりはBMWが提唱しているSUVのクーペ版。これまでも『X6』のように、なだらかにスロープしたルーフラインを持つ本当のクーペ風モデルは存在したが、X2をクーペと言いくるめられたところで、少なくとも僕はそれに反応したくはない。残念ながらこのクルマはクーペ風に見えない。

『CS』という名が付けられた、かつてのBMWクーペ同様、Cピラーの根元にBMWエンブレムをあしらうなどしているが、どう見てもチョップドルーフのSUVにしか見えないのである。ただ、普通のSUVと比較した時、明確に若々しいスタイリングとスポーティーなイメージは持っているのだから、敢えてクーペと呼ぶ必要があるのか少し腑に落ちないのである。

それはともかくとして、日本専用のプロモーションを敢行するなど、このクルマにかける意気込みはすごい。同時に若者へのアピールも凄い。コンセプトは『UNFOLLOW(アンフォロー)』「常識や周囲の評価起点ではなく、自分の道はいつも自分で切り開く」だそうで、このアンフォローを僕なりに解釈すれば、「既存へ迎合しない」ということになる。そうした意味では、このクルマのスタイリングは納得できるもので、どこからどう見てもクーペに見えなくても、言い張ってしまえばそのうちにクーペなんだと、既存の側から寄ってくるかもしれない。

ではクルマは? これは、正直言うと完全にBMWの既存である。今回試乗したのは「X2 xDrive20i M SportX」というグレード。最上級の4WDモデルである。まず、ベースとなっているのはUKLと呼ばれるFWDのプラットフォーム。『MINI』やBMW『2シリーズ』に使われているもの。これに4気筒2リットルのツインパワーターボを搭載して、8速のステップトロニックATと組み合わされる。というわけでここに関してはすべて既存であり、実にBMWらしく俊敏で軽快な運動性能を披露する。

冒頭でチョップドルーフのSUVと書いたが、SUVとしてはかなり車高も低い。全高は1535mmだそうで、ちゃんと日本市場の立体駐車場にも収まる車高とされている。低いから当然ながら重心高もそれなりに低いのだろう。そして今回の試乗車には20インチのタイヤが装着されていた関係もあって、どっしりとした安定感と、高いコーナリング性能をを示してくれた。

ご存知の通り、近年はSUV市場がどんどん肥大化し、この中でだけで自動車のジャンルをすべて完結させるような動きになっている。だからSUVには、3列シートのミニバン風もあれば、クーペスタイルのモデル、超高級、そしてスポーツカーのようなモデルと、何でもござれだ。唯一無いとすればそれはセダン。こうなるとセダンの存在感は、僕の中ではいやがうえにも高まってしまう。

まあ、自動車に求める能力というか、機能というか、あるいは使命は、今と20世紀の時代とは全く違ってきているのかもしれない。X2がどのようなポジショニングかといえば、コンパクトスポーティーといったところだろう。ただ、そのコンパクトスポーティーのお値段が、このクルマの場合車両本体価格(オプションを含まない)で515万円。オプションを含めた乗り出し価格は600万円を超える。

41歳(だそうである)という、決して若者ではない香取慎吾を使って、今までよりも若い層にアピールすることを狙ったプロモーションだが、現実的な購入層はというと、若ぶったオヤジというオチになる可能性が高い。若者へのアピールはわかるし、うまくいけばよいのだが…。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

(レスポンス 中村 孝仁)

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