【プジョー 308 ディーゼル 新型試乗】やっぱり今買えるベストなディーゼル…中村孝仁

プジョー 308 ディーゼル(アリュール BlueHDi)
◆1.5リットルにダウンサイズされたエンジン

現行世代のプジョー『308』ディーゼルが初めてデビューした時、その搭載された1.6リットルディーゼルをタイトルのように評価した。

今回そのエンジンは1.5リットルにダウンサイズされ、しかしそれでいてなお、パワー、トルクは130ps、300Nmとパワーで10psの向上を見ている。1.6リットルならこれくらいかと思っていた最大トルクも、驚くことに1.5リットルにして同じ数値である。

1.5リットルのターボディーゼルと言えば、マツダ『デミオ』がある。こちらのパワー、トルクは105ps、250Nmだ。つまりトルクで見ると2割、プジョーが上回る。今回のDV5と名付けられたエンジンは、英国フォードとPSAが共同開発したものだそうで、年々厳しくなる排ガス規制に対応すべく、尿素を吹くタイプである。

そしてもう一つ大きく変わったのは、トランスミッション。従来の6速から8速に変わった。いやいや、この変化は大きい。まあ、今回の変化は基本的に他にないから、ドライブトレーンの変更ということになる。この新しいディーゼル投入で、従来あったもう一つの2リットルターボディーゼルは308のラインアップから姿を消している。

◆エコモードとスポーツモードのみ


センターコンソールのシフター脇に付くスターターボタンを押してエンジンをかけるのだが、これ、瞬時というわけにはいかず、少々スターターを長押ししてやる必要があった。まあ、要するに操作をきちんとしなさいよ…というレベルの長押しであるが。

アイドリング時のエンジンノイズは、先代となった1.6リットルのそれとあまり変わらないように感じた。少なくとも室内で音を聞く限りはそれなりに静かである。今回も先代の1.6リットル同様前方排気である。アクセルの開度おおよそ30%程度のレベルで発進していく。恐らくこのあたりのアクセルの踏み方が最も効率が良さそうで、非常にスムーズかつ軽快で、十分に流れをリードできるレベルで走る。

どうしても発進から前を急ぎたいような場合はこの限りではないが、いたずらにアクセルを踏み込んだところで、エンジンがやかましくなるだけでそれなりの加速が得られるかというと、どうもそうは感じられない。少なくとも発進に関しては比較的緩やかにアクセルを踏み、シフトアップされた段階からアクセルを深く踏み込んでトルクピークを上手く使った方が、よりトルク感を感じる加速が得られた。

この感触、それをエコモードでやった時とスポーツモードでやった時とではだいぶ感触が違う。一言で言って、スポーツモードはグイグイ加速。エコモードではスイスイ加速という差がある。因みにモード切り替えはこの二つだけ。俗にノーマルモードと呼ぶような設定は存在しない。また、スポーツモードではアイドリングストップがキャンセルされてしまう。

◆先祖帰りしている足回り


このスムーズな加速を実現しているのが、新しい8速ATではないだろうか。アイシン製の最新鋭(プジョーにとってはそうだが、アイシンにとってはどうか知らない)トランスミッションは本当にスムーズでシフトショックも少なく快適である。そしてその快適さをさらにフォローアップするのが、このところ先祖帰りしている足回りだ。

一言で猫足というのは簡単だが、とにかくフランス製のクルマは皆一様に路面のいなし方が上手く、路面のアンジュレーションでボディは揺れるのだが、4輪が路面から離れる印象がまるでない。確かにキャッツアイなどを乗り越えれば、ガツンと衝撃も入るし、不正な路面では特にリアのサスペンションが妙にアンバランスな揺れ方をする。と言ってそれが不安定要素を助長しているかと言えば、そんなことは全くなく、トーションビームという少々古臭くなった形式を持つにもかかわらず、走行安定性は非常に良い。

装備も充実している。もっともナビなどはオプションだ。ACCは標準装備されているものの、ちゃんと停車まで機能してくれるのだが残念な事に発進はしてくれない。つまり、停車した段階でキャンセルされてしまう。だから渋滞では使えないのである。

このサイズの小さなディーゼルを搭載するクルマは今のところマツダが唯一のライバルで、他に競合車種は見当たらない。よって今もってこちらがベストなディーゼルなのである。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

(レスポンス 中村 孝仁)

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