【トヨタ RAV4 新型 雪上試乗】3つのAWDには「ダイナミック」な違いがあった…桂伸一
18年11月、ロサンゼルスショーに合わせて行なわれるWCA(ワールドカーアワード)の選考試乗会で初対面した新型『RAV4』にギョッとした。フロントは上からの眺めで八角形、キャビンから後方は横から見ると八角形をクロスさせて組み合わせるデザインと、その顔つき(マスクは六角形)にである。
どうしてこの奇抜なスタイリングが必要なのか?! 聞けば、なるほどアメリカでは威厳というか、威嚇できるツラ構えを含む造形がとくに女性ユーザーには重要で、男連と対等に渡り合うために堂々と見せる必要があるのだと言う。
事実、RAV4でロスのダウンタウンを行くと、目ざとい男たちはRAV4を見つけるや否や思いっきりサムズアップである。つまりその存在感の強さ認める一方、女性は”流し目程度”だったが…。
◆3タイプの4輪駆動システムを持つ特異な存在に
今年3月、北海道士別にあるトヨタのテストコースは一面雪景色。生まれ故郷日本で見るRAV4は、既に見ていたせいか、驚きはなかった。しかし、雪上での試乗では“驚愕”と言える目の覚める走りを見せつけられた!! それは新4WDシステム「ダイナミックトルクベクタリングAWD」の威力である。
2リットルガソリンエンジンの「アドベンチャー」と「Zパッケージ」に標準のそれは、遂にトヨタも曲がる機能を持つ画期的な4WD(AWD)システムを手に入れたのだった。さらに4WD走行が必要ないと判断した場合は後輪への駆動をカットする、ラチェット式ドグクラッチを採用。世界初となるこのディスコネクト機構はもちろん、燃費に貢献する。
RAV4には合計で3種類もの4WDシステムが用意された。もっともアクティブに曲がる仕様がこの「ダイナミックトルクベクタリングAWD」で、前後の駆動配分は50対50だが後輪左右は0対100~100対0に左右に独立したカップリング(クラッチ内蔵)の操作で、駆動トルクを後輪の左右輪に移動させて旋回性能を引き上げるものだ。
ブレーキ制御のみの“消極的”なトルクベクタリングとは違い、コーナーに対して後輪外輪が内輪よりも早く回転する事で“積極的”に曲げる力が働く。
既に世の中には三菱のAYC(アクティブヨーコントロール)やアウディのスポーツデファレンシャルが同様の機能を持つが、トヨタ/レクサスも含めて初の画期的な機械式「ダイナミックトルクベクタリングAWD」機構は、RAV4の開発時期と重なった事と世界で販売される重要なモデルだけに初採用された。
2リットルガソリンの「G」と「X」には「ダイナミックコントロール4WD」の駆動ユニットが載る。これはセンターカップリングを持つ前後駆動配分50対50に後輪左右は50対50。つまり通常のデファレンシャルを持つ。
ハイブリッドは2.5リットルガソリン+モーターのE-Four。エンジンで前輪を駆動し、モーターで後輪を駆動する4WDだが興味深いのは前後駆動配分を100対0から最大20対80まで可変する。後輪左右は50対50だが、やはりほとんど後輪駆動車になる前後の駆動配分が見もの。
と言う事で、じつに3タイプの4輪駆動システムを持つ特異な存在になったRAV4。ま、名称はもっと整理して欲しいものだが。
◆3タイプを雪上で乗り比べ、その性能に驚いた
肝心の走行性能はどうなのか、というと雪上とは思えない旋回性能を披露するのはやはり「ダイナミックトルクベクタリングAWD」装備のアドベンチャー。要するに驚く程良く曲がると言う意味で、とくに旋回中の後輪が外側に滑らない、振り出さない!! と言うと語弊はあるが、左コーナーのセンターラインを後輪が越えにくい点は、驚き以外の何ものでもない。
もちろん速度やタイヤと路面の喰い付き具合が深く関係するが、その動きを注視すると後輪から前輪を曲げに行くような印象を覚える。
同じ2リットルガソリンのGグレードは「ダイナミックトルクコントロール4WD」を搭載。駆動力として文句なく進むが「ダイナミックトルクベクタリングAWD」を知った後では、曲がる能力にモノ足りなさを感じてしまう。
挙動としてどう違うのかというと、極めて滑りやすい状況で、ステア操作に対してノーズがインに入るのを“待つ”必要がある。待てずにアクセルを踏み込むとアンダーステアが顔を出す。トルクベクタリングAWDのほうはアクセルオフで旋回を始めると、トルクベクタリングが機能して舵角の方向に積極的に曲げよう曲げようとする動きに対して、ごく普通の挙動を示すのがトルクコントロール4WDの特性だ。
一方、E-Fourはスムーズこの上ないモーター走行がハイブリッドならでは。2.5リットルの力強さは、2リットルガソリン仕様に対して60kg重いハイブリッドGの車重を考慮しても十二分に活きる。これもステア操作に対してノーズがインを向くのを待ってからと、以外なほどリアからの押し出しも強く、若干パワーオーバーステア気味の挙動も示す。2.5リットルエンジンとモータートルクは3モデルのRAV4のなかで最もエンジン回転と車速の伸びがダイレクト(空転感なし)で気持ち良い。
◆ドライでも明確にわかる「ダイナミックトルクベクタリングAWD」の恩恵
ということで今回は雪上試乗のみをお伝えするハズだったが、4月に入り公道試乗が可能になったので、その触りを少し。
雪上の滑りやすい路面だから判りやすい「ダイナミックトルクベクタリングAWD」の威力は、ドライの公道でも実に明確に作用する。ダート路面での試乗も叶ったが、そこでもやはり後輪から前輪を曲げに行く作用が強く、曲がり過ぎてカウンターステアで旋回の修整を行なうほど。この制御のオーバーシュート感は時間をかけて行き過ぎを抑える必要はありそうだ。
やはりハイブリッドGのドライでの走行性も魅力満載。しかし4輪駆動の制御に拘りを持つのなら、迷わずダイナミックトルクベクタリングAWDを選ぶべきだろう。
初対面のギョッ…とした状況から一転、トヨタ/レクサスで最高に良く曲がる4輪駆動システムの持ち主として、個人的に俄然気になる1台に昇格した。
桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、 読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマー ティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。
(レスポンス 桂伸一)
どうしてこの奇抜なスタイリングが必要なのか?! 聞けば、なるほどアメリカでは威厳というか、威嚇できるツラ構えを含む造形がとくに女性ユーザーには重要で、男連と対等に渡り合うために堂々と見せる必要があるのだと言う。
事実、RAV4でロスのダウンタウンを行くと、目ざとい男たちはRAV4を見つけるや否や思いっきりサムズアップである。つまりその存在感の強さ認める一方、女性は”流し目程度”だったが…。
◆3タイプの4輪駆動システムを持つ特異な存在に
今年3月、北海道士別にあるトヨタのテストコースは一面雪景色。生まれ故郷日本で見るRAV4は、既に見ていたせいか、驚きはなかった。しかし、雪上での試乗では“驚愕”と言える目の覚める走りを見せつけられた!! それは新4WDシステム「ダイナミックトルクベクタリングAWD」の威力である。
2リットルガソリンエンジンの「アドベンチャー」と「Zパッケージ」に標準のそれは、遂にトヨタも曲がる機能を持つ画期的な4WD(AWD)システムを手に入れたのだった。さらに4WD走行が必要ないと判断した場合は後輪への駆動をカットする、ラチェット式ドグクラッチを採用。世界初となるこのディスコネクト機構はもちろん、燃費に貢献する。
RAV4には合計で3種類もの4WDシステムが用意された。もっともアクティブに曲がる仕様がこの「ダイナミックトルクベクタリングAWD」で、前後の駆動配分は50対50だが後輪左右は0対100~100対0に左右に独立したカップリング(クラッチ内蔵)の操作で、駆動トルクを後輪の左右輪に移動させて旋回性能を引き上げるものだ。
ブレーキ制御のみの“消極的”なトルクベクタリングとは違い、コーナーに対して後輪外輪が内輪よりも早く回転する事で“積極的”に曲げる力が働く。
既に世の中には三菱のAYC(アクティブヨーコントロール)やアウディのスポーツデファレンシャルが同様の機能を持つが、トヨタ/レクサスも含めて初の画期的な機械式「ダイナミックトルクベクタリングAWD」機構は、RAV4の開発時期と重なった事と世界で販売される重要なモデルだけに初採用された。
2リットルガソリンの「G」と「X」には「ダイナミックコントロール4WD」の駆動ユニットが載る。これはセンターカップリングを持つ前後駆動配分50対50に後輪左右は50対50。つまり通常のデファレンシャルを持つ。
ハイブリッドは2.5リットルガソリン+モーターのE-Four。エンジンで前輪を駆動し、モーターで後輪を駆動する4WDだが興味深いのは前後駆動配分を100対0から最大20対80まで可変する。後輪左右は50対50だが、やはりほとんど後輪駆動車になる前後の駆動配分が見もの。
と言う事で、じつに3タイプの4輪駆動システムを持つ特異な存在になったRAV4。ま、名称はもっと整理して欲しいものだが。
◆3タイプを雪上で乗り比べ、その性能に驚いた
肝心の走行性能はどうなのか、というと雪上とは思えない旋回性能を披露するのはやはり「ダイナミックトルクベクタリングAWD」装備のアドベンチャー。要するに驚く程良く曲がると言う意味で、とくに旋回中の後輪が外側に滑らない、振り出さない!! と言うと語弊はあるが、左コーナーのセンターラインを後輪が越えにくい点は、驚き以外の何ものでもない。
もちろん速度やタイヤと路面の喰い付き具合が深く関係するが、その動きを注視すると後輪から前輪を曲げに行くような印象を覚える。
同じ2リットルガソリンのGグレードは「ダイナミックトルクコントロール4WD」を搭載。駆動力として文句なく進むが「ダイナミックトルクベクタリングAWD」を知った後では、曲がる能力にモノ足りなさを感じてしまう。
挙動としてどう違うのかというと、極めて滑りやすい状況で、ステア操作に対してノーズがインに入るのを“待つ”必要がある。待てずにアクセルを踏み込むとアンダーステアが顔を出す。トルクベクタリングAWDのほうはアクセルオフで旋回を始めると、トルクベクタリングが機能して舵角の方向に積極的に曲げよう曲げようとする動きに対して、ごく普通の挙動を示すのがトルクコントロール4WDの特性だ。
一方、E-Fourはスムーズこの上ないモーター走行がハイブリッドならでは。2.5リットルの力強さは、2リットルガソリン仕様に対して60kg重いハイブリッドGの車重を考慮しても十二分に活きる。これもステア操作に対してノーズがインを向くのを待ってからと、以外なほどリアからの押し出しも強く、若干パワーオーバーステア気味の挙動も示す。2.5リットルエンジンとモータートルクは3モデルのRAV4のなかで最もエンジン回転と車速の伸びがダイレクト(空転感なし)で気持ち良い。
◆ドライでも明確にわかる「ダイナミックトルクベクタリングAWD」の恩恵
ということで今回は雪上試乗のみをお伝えするハズだったが、4月に入り公道試乗が可能になったので、その触りを少し。
雪上の滑りやすい路面だから判りやすい「ダイナミックトルクベクタリングAWD」の威力は、ドライの公道でも実に明確に作用する。ダート路面での試乗も叶ったが、そこでもやはり後輪から前輪を曲げに行く作用が強く、曲がり過ぎてカウンターステアで旋回の修整を行なうほど。この制御のオーバーシュート感は時間をかけて行き過ぎを抑える必要はありそうだ。
やはりハイブリッドGのドライでの走行性も魅力満載。しかし4輪駆動の制御に拘りを持つのなら、迷わずダイナミックトルクベクタリングAWDを選ぶべきだろう。
初対面のギョッ…とした状況から一転、トヨタ/レクサスで最高に良く曲がる4輪駆動システムの持ち主として、個人的に俄然気になる1台に昇格した。
桂 伸一|モータージャーナリスト/レーシングドライバー
1982年より自動車雑誌編集部にてレポーター活動を開始。幼少期から憧れだったレース活動を編集部時代に開始、「走れて」「書ける」はもちろんのこと、 読者目線で見た誰にでも判りやすいレポートを心掛けている。レーサーとしての活動は自動車開発の聖地、ニュルブルクリンク24時間レースにアストンマー ティン・ワークスから参戦。08年クラス優勝、09年クラス2位。11年クラス5位、13年は世界初の水素/ガソリンハイブリッドでクラス優勝。15年は、限定100台のGT12で出場するも初のリタイア。と、年一レーサー業も続行中。
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