【ダイハツ タント 新型試乗】これが軽ハイトワゴン!? “小は大を兼ねる”ダイハツの新技術…島崎七生人
◆小は大を兼ねる、ダイハツの「DNGA」
小は大を兼ねる。そんな思いのもと開発された、ダイハツのまったく新しいアーキテクチャーが「DNGA」だ。1mm、1g、1円、1秒など最小単位を極める姿勢で開発、日本国内独自の軽自動車カテゴリーを起点としながら、グローバルを見据え、A、Bセグメントのコンパクトカーも視野に入れているのを大きな特徴とする。
注目したいのは、ダイハツ初の「一括企画・開発」の手法を新採用した点。エンジンを始め、サスペンション、アンダーボディ、トランスミッション、シートといった構成要素をゼロベースから同時に新規開発、刷新。軽自動車とA、Bセグメントで設計思想を共通化し、“相似形”で全車種を開発するというのである。
これにより性能目標の達成と開発効率化が両立させられ、ダイハツによれば、たとえば部品共用化率は軽自動車を基準に75%以上に高められるという。新型車の投入ペースも現在の1.5倍に引き上げられる見込みで、2025年までに15ボディタイプ・21車種の展開を予定している。
もちろん先進技術の普及も推し進める。電子プラットフォームは、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)を見据えて刷新。さらに安全支援のための「スマートアシスト」もさらに機能を高めながら進化させる。全車速追従機能付きACC、ブレーキ制御付き誤発進抑制機能(前方・後方)、標識認識機能(進入禁止)を始め、駐車支援機能、レーンキープコントロール、車線逸脱抑制制御機能などは、最新の「スマートアシストIII」で追加される機能だ。
ダイハツでは“良品廉価”なクルマを提供するために車両、パワートレーン、先進安全の3つの分野を新技術により進化させ、ユーザーにとって一層安全、安心で心地いいクルマの開発に邁進していくという。そのキーになっているのがDNGAという訳だ。
◆新型タントはまるで欧州コンパクトカーのような走り
ところで今回は、クローズドコースでの限られた時間内での試乗だったが、期待のDNGA第1弾となる新型『タント』のプロトタイプに接することができた。実車の正式発売はこの7月ということで、年内にはDNGAの第2弾モデルも登場するという。
デザイン、装備、価格等の取材は別途発表の機会まで待つように……とのことで、残念ながら今回は詳細には触れられない。従って、動的印象がどうだったか?がメインのレポートになることをお断りしておく。
走り出してまず肌で実感したのは「まるで欧州コンパクトカーのような走りではないか!」ということ。説明のなかに、ボディの曲げ剛性約30%向上、上下曲げ変位量約22%ダウン、シートロール角約9%ダウン、ロール慣性モーメント約12%ダウンなどとある。一方でクルマ全体で80kgもの軽量化も達成しているとも書かれていた。が、とにかく安定感タップリの足回りと、シッカリとした操舵感のステアリングフィールは「これがハイト系の軽自動車か!?」と思わせられるほど。
サーキットでは路面の平滑性が高いため、一般公道での確認も必要だが、乗り味はピッチングが気にならない心地いいものに仕上がっているようだ。タイヤはターボ(カスタム)が15インチ、ノンターボが14インチだったが、サスペンションのチューニングは基本的に共通とのことで、15インチでも乗り味に不満は感じず、片や14インチも頼りなさは実感しなかった。
大開口のミラクルオープンドアは今回も踏襲されるが、背が高く、ドア開口も大きなクルマとはとても思えないボディ剛性が、そうしたしっかりした走りと乗り味を生み出しているのは間違いない。
◆現行オーナーなら黙っていてもわかる進化
エンジンは低速トルクにこだわった設計だそうで、走らせてみると、ターボのパワフルさに対し、NA(自然吸気)も、ターボに大きく見劣りしない……というより、コレでも十分と思わせられる性能を発揮している。
見逃せないのは組み合わせられるCVTで、「D-CVT」と呼ばれるそれは、伝達効率の高いギヤとCVTを組み合わせた世界初のメカだということ。やや活発な走らせかたをしてみればよくわかるが、力強く加速させたい時にもストレスがなく、コンパクトなクルマの限られたパフォーマンスを無駄なく使うのに適した伝達装置に仕上げられている。
前述のとおり安全支援関係の機能が進化しており、追従機能は停止まで働くなど、実際の交通事情に合ったものになった。また駐車支援もワンボタンで機能がかけられるシンプルな操作性と、ステアリングアシストも備わるなど、実力に磨きをかけている。
従来型(現行)タントのユーザーが乗り換えたなら、その良さ、進化ぶりが黙っていてもわかるに違いない。“小は大を兼ねる”とはつまり“大は小を兼ねる”ことでもあり、これによって今までとレベルの違う走りを軽自動車のタントは手に入れている。
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
(レスポンス 島崎七生人)
小は大を兼ねる。そんな思いのもと開発された、ダイハツのまったく新しいアーキテクチャーが「DNGA」だ。1mm、1g、1円、1秒など最小単位を極める姿勢で開発、日本国内独自の軽自動車カテゴリーを起点としながら、グローバルを見据え、A、Bセグメントのコンパクトカーも視野に入れているのを大きな特徴とする。
注目したいのは、ダイハツ初の「一括企画・開発」の手法を新採用した点。エンジンを始め、サスペンション、アンダーボディ、トランスミッション、シートといった構成要素をゼロベースから同時に新規開発、刷新。軽自動車とA、Bセグメントで設計思想を共通化し、“相似形”で全車種を開発するというのである。
これにより性能目標の達成と開発効率化が両立させられ、ダイハツによれば、たとえば部品共用化率は軽自動車を基準に75%以上に高められるという。新型車の投入ペースも現在の1.5倍に引き上げられる見込みで、2025年までに15ボディタイプ・21車種の展開を予定している。
もちろん先進技術の普及も推し進める。電子プラットフォームは、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)を見据えて刷新。さらに安全支援のための「スマートアシスト」もさらに機能を高めながら進化させる。全車速追従機能付きACC、ブレーキ制御付き誤発進抑制機能(前方・後方)、標識認識機能(進入禁止)を始め、駐車支援機能、レーンキープコントロール、車線逸脱抑制制御機能などは、最新の「スマートアシストIII」で追加される機能だ。
ダイハツでは“良品廉価”なクルマを提供するために車両、パワートレーン、先進安全の3つの分野を新技術により進化させ、ユーザーにとって一層安全、安心で心地いいクルマの開発に邁進していくという。そのキーになっているのがDNGAという訳だ。
◆新型タントはまるで欧州コンパクトカーのような走り
ところで今回は、クローズドコースでの限られた時間内での試乗だったが、期待のDNGA第1弾となる新型『タント』のプロトタイプに接することができた。実車の正式発売はこの7月ということで、年内にはDNGAの第2弾モデルも登場するという。
デザイン、装備、価格等の取材は別途発表の機会まで待つように……とのことで、残念ながら今回は詳細には触れられない。従って、動的印象がどうだったか?がメインのレポートになることをお断りしておく。
走り出してまず肌で実感したのは「まるで欧州コンパクトカーのような走りではないか!」ということ。説明のなかに、ボディの曲げ剛性約30%向上、上下曲げ変位量約22%ダウン、シートロール角約9%ダウン、ロール慣性モーメント約12%ダウンなどとある。一方でクルマ全体で80kgもの軽量化も達成しているとも書かれていた。が、とにかく安定感タップリの足回りと、シッカリとした操舵感のステアリングフィールは「これがハイト系の軽自動車か!?」と思わせられるほど。
サーキットでは路面の平滑性が高いため、一般公道での確認も必要だが、乗り味はピッチングが気にならない心地いいものに仕上がっているようだ。タイヤはターボ(カスタム)が15インチ、ノンターボが14インチだったが、サスペンションのチューニングは基本的に共通とのことで、15インチでも乗り味に不満は感じず、片や14インチも頼りなさは実感しなかった。
大開口のミラクルオープンドアは今回も踏襲されるが、背が高く、ドア開口も大きなクルマとはとても思えないボディ剛性が、そうしたしっかりした走りと乗り味を生み出しているのは間違いない。
◆現行オーナーなら黙っていてもわかる進化
エンジンは低速トルクにこだわった設計だそうで、走らせてみると、ターボのパワフルさに対し、NA(自然吸気)も、ターボに大きく見劣りしない……というより、コレでも十分と思わせられる性能を発揮している。
見逃せないのは組み合わせられるCVTで、「D-CVT」と呼ばれるそれは、伝達効率の高いギヤとCVTを組み合わせた世界初のメカだということ。やや活発な走らせかたをしてみればよくわかるが、力強く加速させたい時にもストレスがなく、コンパクトなクルマの限られたパフォーマンスを無駄なく使うのに適した伝達装置に仕上げられている。
前述のとおり安全支援関係の機能が進化しており、追従機能は停止まで働くなど、実際の交通事情に合ったものになった。また駐車支援もワンボタンで機能がかけられるシンプルな操作性と、ステアリングアシストも備わるなど、実力に磨きをかけている。
従来型(現行)タントのユーザーが乗り換えたなら、その良さ、進化ぶりが黙っていてもわかるに違いない。“小は大を兼ねる”とはつまり“大は小を兼ねる”ことでもあり、これによって今までとレベルの違う走りを軽自動車のタントは手に入れている。
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
(レスポンス 島崎七生人)
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