【ダイハツ タント 新型試乗】NAとターボの違いは? 公道試乗で再発見した新型の魅力…島崎七生人
以前プロトタイプ車をクローズドコース(サーキット)で走らせ動的性能をチェック、新プラットフォームDNGAの並々ならぬポテンシャルは実感できた。今回は一般公道での試乗から、ダイハツ新型『タント/タントカスタム』について見えてきたこと、発見についてお伝えしておこう。
◆NAとターボの違いはフィーリング
試乗車は2台で、いずれも2WDでノンターボの「タント X」とターボの「タントカスタム RS」。プロトタイプ車と変わらぬ印象の部分でいえば、どちらも新しいプラットフォームによる、従来の軽のイメージを超えたしっかり感のあるステアリングフィールが味わえるということ。タントのような背が高く、お子様が同乗したりといった機会が多いクルマでは、この“安心感”はとくに嬉しいところだ。
一方で乗り味は、プロトタイプ取材時の関係者の証言では「足は基本的に共通」とのことだった。今回の試乗車はともに2WD車のため、どちらもスタビライザーは前後に付く。要するに目に見えるタイヤサイズの差(14インチか15インチか)が違いとなるが、サーキットとは違う一般路面の段差や継ぎ目を通過した際のショックはカスタムRSのほうが強く硬く感じた。
NAはその点で総じてマイルドにいなしてくれ、かといってコーナリング時の姿勢の安定感も十分だから、快適性重視派にはNAの「X」が相応しいと思う。
エンジン性能もNA(52ps/6.1kg・m)とターボ(64ps/10.2kg・m)とでは、パワーの伸び感ではターボが一枚上手なのは事実。しかし今回はギヤを併用したユニークなCVT「D-CVT(デュアルモードCVT)」のおかげで、通常走行ではNAでもパワーを振り絞って……といった状態を感じることなく、ストレスなく走らせられる。ターボとNAは今回の場合、性能違いというよりフィーリング違いといった印象で、故にNAを選んで「やっぱりターボにしておけばよかった」と後悔することはなさそうだ。
◆“時短”コンセプトにさらに進化した使い勝手
実用性では、助手席イージークローザーや、クルマから離れてから施錠してくれドアが閉じるまで待たずに済むパワースライドドアタッチ&ゴーロック機能と近づくと自動オープンしてくれるウェルカムオープン機能が目をひく。“時短”は開発テーマのひとつだったそうだが、夕方の忙しい時間帯にスーパーでサクッと買い物を済ませて帰りたい……そんな場面で、これらの機能のありがたみが実感できそうだ。
もちろんタントならではの片側ピラーレス、間口幅1490mmのミラクルオープンドアはやはり乗降しやすいし、540mmストロークの運転席ロングスライドは、後端まで下げれば、ドライバーが左スライドドアから降りられたりと、タントならではの使い勝手、利便性をもつ。
後席も左右分割で240mmスライドが可能で操作もワンタッチなのが良いが、贅沢を言えば倒した状態でラゲッジスペース床面とフラットな状態になれば、なおスッキリする。前~後席のフルフラット、長尺物の積載が可能になる片側スルーのフラット化など、機能性にかけては用意は手抜かりはない。
運転席に座ると、2本構成のAピラーの太さが吟味され、前方視界がより広がったのがわかる。インパネは大型のアナログ式センターメーターだった先代から様変わりし、中央に今風のタブレット型操作パネルを備えるも、注目したいのはメーター表示部と手元の操作系が、ほぼ上下に一直線の関係で整理して配置されている点。自分の操作の状態、結果を視線をさまよわせることなく確認できるのがいい。
質感では、ドアのインサート部分や助手席前トレイに使われたキルティング風パーツは、樹脂製だが布地風のやさしい感触に仕上げられているのがユニークだ。
◆新車で買える“最安価な福祉車両”としての魅力
それと今回は「フレンドシップシリーズ」として、福祉車両が同等の標準車として用意される点も注目したい。そのためにカタログも、タントおよびタントカスタムで1冊、フレンドシップシリーズで1冊と作られているほどだ。
なかでも「ウェルカムターンシート」は、助手席が30度回転させられる専用シートを搭載した仕様で、骨盤骨折&入院を経験したばかりのレポーターが入院時の面持ちを思い出しながら実車で試してみたが、Aピラー下方にセットされた専用のグリップに自然に掴まりながら、30度という絶妙な角度設定により、ドアは最初のワンノッチで小さく開いた状態でもとにかく楽に自然に乗り降りできることを実感した。
この仕様では、ラゲッジスペース側にホイールチェアの積み下ろしをアシストする電動のパワークレーンも装備。タントのハイトを活かし、クレーンをルーフ部にセットしている(フロアから生えた邪魔な支柱がない)のが特徴だ。
ほかにスライドドア連動のロングサイドステップも用意される。“要介護2”以下で、杖などを使い自分で歩いている、加齢、怪我などで(レポーターもそうだった)足関節の可動域が少し狭まり少し日常生活に不便を感じている……そんな家族がいる場合、とてもありがたい存在であり、ADL(Activities of Daily Living=日常生活動作)のリハビリの一助にもなると思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
(レスポンス 島崎七生人)
◆NAとターボの違いはフィーリング
試乗車は2台で、いずれも2WDでノンターボの「タント X」とターボの「タントカスタム RS」。プロトタイプ車と変わらぬ印象の部分でいえば、どちらも新しいプラットフォームによる、従来の軽のイメージを超えたしっかり感のあるステアリングフィールが味わえるということ。タントのような背が高く、お子様が同乗したりといった機会が多いクルマでは、この“安心感”はとくに嬉しいところだ。
一方で乗り味は、プロトタイプ取材時の関係者の証言では「足は基本的に共通」とのことだった。今回の試乗車はともに2WD車のため、どちらもスタビライザーは前後に付く。要するに目に見えるタイヤサイズの差(14インチか15インチか)が違いとなるが、サーキットとは違う一般路面の段差や継ぎ目を通過した際のショックはカスタムRSのほうが強く硬く感じた。
NAはその点で総じてマイルドにいなしてくれ、かといってコーナリング時の姿勢の安定感も十分だから、快適性重視派にはNAの「X」が相応しいと思う。
エンジン性能もNA(52ps/6.1kg・m)とターボ(64ps/10.2kg・m)とでは、パワーの伸び感ではターボが一枚上手なのは事実。しかし今回はギヤを併用したユニークなCVT「D-CVT(デュアルモードCVT)」のおかげで、通常走行ではNAでもパワーを振り絞って……といった状態を感じることなく、ストレスなく走らせられる。ターボとNAは今回の場合、性能違いというよりフィーリング違いといった印象で、故にNAを選んで「やっぱりターボにしておけばよかった」と後悔することはなさそうだ。
◆“時短”コンセプトにさらに進化した使い勝手
実用性では、助手席イージークローザーや、クルマから離れてから施錠してくれドアが閉じるまで待たずに済むパワースライドドアタッチ&ゴーロック機能と近づくと自動オープンしてくれるウェルカムオープン機能が目をひく。“時短”は開発テーマのひとつだったそうだが、夕方の忙しい時間帯にスーパーでサクッと買い物を済ませて帰りたい……そんな場面で、これらの機能のありがたみが実感できそうだ。
もちろんタントならではの片側ピラーレス、間口幅1490mmのミラクルオープンドアはやはり乗降しやすいし、540mmストロークの運転席ロングスライドは、後端まで下げれば、ドライバーが左スライドドアから降りられたりと、タントならではの使い勝手、利便性をもつ。
後席も左右分割で240mmスライドが可能で操作もワンタッチなのが良いが、贅沢を言えば倒した状態でラゲッジスペース床面とフラットな状態になれば、なおスッキリする。前~後席のフルフラット、長尺物の積載が可能になる片側スルーのフラット化など、機能性にかけては用意は手抜かりはない。
運転席に座ると、2本構成のAピラーの太さが吟味され、前方視界がより広がったのがわかる。インパネは大型のアナログ式センターメーターだった先代から様変わりし、中央に今風のタブレット型操作パネルを備えるも、注目したいのはメーター表示部と手元の操作系が、ほぼ上下に一直線の関係で整理して配置されている点。自分の操作の状態、結果を視線をさまよわせることなく確認できるのがいい。
質感では、ドアのインサート部分や助手席前トレイに使われたキルティング風パーツは、樹脂製だが布地風のやさしい感触に仕上げられているのがユニークだ。
◆新車で買える“最安価な福祉車両”としての魅力
それと今回は「フレンドシップシリーズ」として、福祉車両が同等の標準車として用意される点も注目したい。そのためにカタログも、タントおよびタントカスタムで1冊、フレンドシップシリーズで1冊と作られているほどだ。
なかでも「ウェルカムターンシート」は、助手席が30度回転させられる専用シートを搭載した仕様で、骨盤骨折&入院を経験したばかりのレポーターが入院時の面持ちを思い出しながら実車で試してみたが、Aピラー下方にセットされた専用のグリップに自然に掴まりながら、30度という絶妙な角度設定により、ドアは最初のワンノッチで小さく開いた状態でもとにかく楽に自然に乗り降りできることを実感した。
この仕様では、ラゲッジスペース側にホイールチェアの積み下ろしをアシストする電動のパワークレーンも装備。タントのハイトを活かし、クレーンをルーフ部にセットしている(フロアから生えた邪魔な支柱がない)のが特徴だ。
ほかにスライドドア連動のロングサイドステップも用意される。“要介護2”以下で、杖などを使い自分で歩いている、加齢、怪我などで(レポーターもそうだった)足関節の可動域が少し狭まり少し日常生活に不便を感じている……そんな家族がいる場合、とてもありがたい存在であり、ADL(Activities of Daily Living=日常生活動作)のリハビリの一助にもなると思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
(レスポンス 島崎七生人)
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