【メルセデスベンツ Bクラス 新型試乗】割安な実用車と高級ブランドの関係…渡辺陽一郎

メルセデスベンツ Bクラス 新型(B180)
昔のメルセデスベンツは、日本車に比べると車種数を大幅に抑え、高級車路線に特化していた。ところが今は選択肢が大幅に増えている。好景気の頃と違って、高級なブランドイメージが行き過ぎると販売面でマイナスに作用するから、以前に比べるとコンパクトな車種を増やした。SUVも加わり、特に車名は昔に比べると複雑で分かりにくい。

フルモデルチェンジを受けた『Bクラス』は、現代的なメルセデスベンツの代表だ。全長/全幅/ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は、ベースの『Aクラス』と同じ数値だが、全高は1562mm(欧州参考値)とされ約140mm高い。

そのために前後席ともAクラスに比べると床と座面の間隔が広がり、空間効率を高めた。身長170cmの大人4名が乗車した状態で、後席に座る乗員の膝先空間は、Aクラスは握りコブシ1つ半と狭いがBクラスは2つ少々を確保する。着座姿勢も含めて快適になった。

その代わり峠道を走ると重心の高さを意識させる。通常のカーブを曲がる時には旋回軌跡を拡大させやすく、下り坂では後輪の接地性が物足りないと感じる場面がある。Aクラスに比べると、背の高いクルマにありがちな挙動を見せる。

試乗車のエンジンは1.4リットルガソリンターボで、2リットルのノーマルエンジンに匹敵する性能だが、加速力は少し物足りない。

「B180」の価格は384万円で、装備は相応に充実している。369万円の「A180スタイル」に近い内容だから、Aクラスに15万円程度を加えると、車内の広いBクラスのボディが得られるわけだ。

日本車的な実用性を備えた買い得車ともいえるが、日本のユーザーがそれをメルセデスベンツに求めるかは疑問だろう。AクラスやBクラスを割安にして普及させると、最初は喜ばれて売れ行きも伸びるが、次第にメルセデスベンツのブランドイメージが変わってくるのではないか。

2018年のメルセデスベンツの登録台数は、10年ほど前に比べると1.6倍に増えたが、プレミアムブランドの場合はその評価が難しい。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト
1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

(レスポンス 渡辺陽一郎)

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