【プジョー 508 新型試乗】ガソリンとディーゼルでキャラの違いは明確。おすすめは…井元康一郎
◆ファストバックに生まれ変わった508
プジョー『508』は2011年に第1世代が登場したプジョーの欧州Dセグメント(セダンでおおむね全長4.8m前後)クラスの乗用車で、2018年にフルモデルチェンジされ、第2世代が欧州デビューを果たした。もっとも「50x」というナンバーのモデルが登場したのは1968年。そこから数えれば途中で「40x」と「60x」に分化する形で途切れた時期もあったものの、ちょうど半世紀の歴史を刻んでいることになる。
第2世代508は中国を最大のターゲットとしていた第1世代から一点、欧州モデル的なキャラクターに立ち返った。純ノッチバックセダンではなく、リアは「ファストバック」とプジョーが呼ぶなだらかな傾斜のハッチバックとなり、全高は現代のセダンとしてはかなり低い1405mm。いわゆる4ドアクーペというやつである。
世界的なSUVブームのなかでセダンモデルの存在感が急落するなか、スペース重視のカスタマーはSUVで拾い、セダンは低重心、スタイリッシュなモデルとしてSUVと明確に区別するという、最近流行りはじめた商品戦略にのっとった格好。と同時に、本拠地EUでも廉価版を廃止するなどラインナップを大幅縮小。
ガソリンモデルの場合、最も低出力のもので133kW(180ps)。ディーゼルは1.5リットル96kW(130ps)がボトムにあるが、主力は120kW(163ps)、130kW(177ps)の2リットルである。また、ガソリン133kWをベースにした統合出力165kW(225ps)のPHEV(プラグインハイブリッド)も存在する。
日本に入るのはガソリン133kWとディーゼル130kWの2種類。今回はガソリンの「GT Line」とディーゼルの「GT Blue HDi」に乗った。試乗エリアは御殿場~沼津界隈で、うち7割を高速道路で過ごした。路面コンディションはウェット、1名乗車、エアコンAUTO。
◆ノンプレミアムとプレミアムの区分を無意味なものにしそう
まずは総合的な感想だが、欧州市場でもターゲットをアッパークラスに絞ったという割り切ったクルマ作りのためか、これまでのプジョーにくらべてえらく上等なクルマになった感があった。驚異的な静粛性の高さと当たりの柔らかい乗り心地、高速道路における直進感の素晴らしさは、ノンプレミアムとプレミアムの区分を無意味なものにしそうな勢い。
また、標準装備のフォーカル社製オーディオシステムが静かな室内に音楽を流す様もまた、ノンプレミアム離れしたものだった。
フル液晶のメーターパネルは指針方式、ボビン方式などいろいろなモディファイを楽しむことができ、グラフィックデザインそのものも非常に美しかった。
オプションに俗にノクトビジョン、あるいはナイトビジョンなどと呼ばれる赤外線暗視装置が設定されており、それを装着した時には液晶パネルに情報を映し出すことができるそうだ。路肩に人や自転車がいる時には黄色囲み、前方にいる場合は赤色+サウンドアラートを発する。今回は昼間のドライブであったためそれを試す機会はなかったが、10年あまり前はあまりに高すぎて普及しなかった赤外線暗視装置がオプションとはいえノンプレミアムDセグメントに付けられる時代になったのだなあと、しみじみ思うことだった。
◆ガソリンとディーゼルで乗り味に明確な違い
そんな基本的性格を持つ新508だが、ガソリンのGT LineとディーゼルのGT Blue HDiでは乗り味が結構異なる。シャシーの能力がより高いのはもちろん強化サスペンションを組んだGTのほうであろうが、滑らかさ、静粛性など、もはや高級車の域に足を突っ込んでるなと感心させられたのは、GT Lineのほうである。
180psの1.6リットルターボと8速ATからなるパワートレインの制御はきわめてよくチューニングされていて、言うなれば柔らかく速い。加速Gがドーンと立ち上がるのではなく、二次曲線的にふわっと高まる。この加速感の気持ち良さはやみつきになりそうだった。
乗り心地も優秀で、GT Lineはタイヤがボトムエンドのアリュールよりワイドな235/40R18を履いていたが、バタつきの類がほとんど感じられず、細かい道路の凹凸が連続するような箇所での滑らかさは特筆すべきものがあった。
GTのほうはGT Lineに比べると明らかに荒々しい。タイヤサイズは同一だが、サスペンションのバネレートはGTのほうが明らかに高く、ロールでサスペンションのジオメトリー変化が明瞭に発生する速度域はGTのほうがずっと上のようだった。荒れた山岳路をガシガシ攻めて走るタイプのユーザーならGTが断然良さそうだった。スロットルを踏んだときの力感もなかなかたくましい。半面、アンジュレーションや段差などの路面の不整箇所を乗り越えたときの衝撃吸収力はGT Lineに劣る。
◆ガソリンの「GT Line」がおすすめな理由
このようにキャラの違いが結構明瞭な両者だが、筆者個人の好み的にはGT Lineのほうを押したいところ。前述のように乗り心地やパワートレインの制御がスウィートで気持ちよいというのもあるが、1.6リットルガソリンターボの燃費が想像よりずっと良かったことが大きい。高速7割、市街地3割のドライブを終えた時点での平均燃費計値は16.9km/リットルと、Dセグメントとしては望外に良い数値であった。
同じコースをほぼ同じ平均車速で駆けたGTは18.5km/リットル。軽油とプレミアムガソリンでは燃料単価に結構な差があるが、それでもガソリンとディーゼルの間で一昔前のような大差はみられなかった。年間走行距離が1万km程度のユーザーであれば、ガソリンが大いにおススメである。
それにしても事実上クラスアップした508は思いもかけず秀逸なテイストのセダンであった。機会をみて、ロングツーリングを試してあらためてレポートをお届けしたいところである。
■5つ星評価(サルーンカー視点で)
GT Line(ガソリン)
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
GT Blue HDi(ディーゼル)
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
(レスポンス 井元康一郎)
プジョー『508』は2011年に第1世代が登場したプジョーの欧州Dセグメント(セダンでおおむね全長4.8m前後)クラスの乗用車で、2018年にフルモデルチェンジされ、第2世代が欧州デビューを果たした。もっとも「50x」というナンバーのモデルが登場したのは1968年。そこから数えれば途中で「40x」と「60x」に分化する形で途切れた時期もあったものの、ちょうど半世紀の歴史を刻んでいることになる。
第2世代508は中国を最大のターゲットとしていた第1世代から一点、欧州モデル的なキャラクターに立ち返った。純ノッチバックセダンではなく、リアは「ファストバック」とプジョーが呼ぶなだらかな傾斜のハッチバックとなり、全高は現代のセダンとしてはかなり低い1405mm。いわゆる4ドアクーペというやつである。
世界的なSUVブームのなかでセダンモデルの存在感が急落するなか、スペース重視のカスタマーはSUVで拾い、セダンは低重心、スタイリッシュなモデルとしてSUVと明確に区別するという、最近流行りはじめた商品戦略にのっとった格好。と同時に、本拠地EUでも廉価版を廃止するなどラインナップを大幅縮小。
ガソリンモデルの場合、最も低出力のもので133kW(180ps)。ディーゼルは1.5リットル96kW(130ps)がボトムにあるが、主力は120kW(163ps)、130kW(177ps)の2リットルである。また、ガソリン133kWをベースにした統合出力165kW(225ps)のPHEV(プラグインハイブリッド)も存在する。
日本に入るのはガソリン133kWとディーゼル130kWの2種類。今回はガソリンの「GT Line」とディーゼルの「GT Blue HDi」に乗った。試乗エリアは御殿場~沼津界隈で、うち7割を高速道路で過ごした。路面コンディションはウェット、1名乗車、エアコンAUTO。
◆ノンプレミアムとプレミアムの区分を無意味なものにしそう
まずは総合的な感想だが、欧州市場でもターゲットをアッパークラスに絞ったという割り切ったクルマ作りのためか、これまでのプジョーにくらべてえらく上等なクルマになった感があった。驚異的な静粛性の高さと当たりの柔らかい乗り心地、高速道路における直進感の素晴らしさは、ノンプレミアムとプレミアムの区分を無意味なものにしそうな勢い。
また、標準装備のフォーカル社製オーディオシステムが静かな室内に音楽を流す様もまた、ノンプレミアム離れしたものだった。
フル液晶のメーターパネルは指針方式、ボビン方式などいろいろなモディファイを楽しむことができ、グラフィックデザインそのものも非常に美しかった。
オプションに俗にノクトビジョン、あるいはナイトビジョンなどと呼ばれる赤外線暗視装置が設定されており、それを装着した時には液晶パネルに情報を映し出すことができるそうだ。路肩に人や自転車がいる時には黄色囲み、前方にいる場合は赤色+サウンドアラートを発する。今回は昼間のドライブであったためそれを試す機会はなかったが、10年あまり前はあまりに高すぎて普及しなかった赤外線暗視装置がオプションとはいえノンプレミアムDセグメントに付けられる時代になったのだなあと、しみじみ思うことだった。
◆ガソリンとディーゼルで乗り味に明確な違い
そんな基本的性格を持つ新508だが、ガソリンのGT LineとディーゼルのGT Blue HDiでは乗り味が結構異なる。シャシーの能力がより高いのはもちろん強化サスペンションを組んだGTのほうであろうが、滑らかさ、静粛性など、もはや高級車の域に足を突っ込んでるなと感心させられたのは、GT Lineのほうである。
180psの1.6リットルターボと8速ATからなるパワートレインの制御はきわめてよくチューニングされていて、言うなれば柔らかく速い。加速Gがドーンと立ち上がるのではなく、二次曲線的にふわっと高まる。この加速感の気持ち良さはやみつきになりそうだった。
乗り心地も優秀で、GT Lineはタイヤがボトムエンドのアリュールよりワイドな235/40R18を履いていたが、バタつきの類がほとんど感じられず、細かい道路の凹凸が連続するような箇所での滑らかさは特筆すべきものがあった。
GTのほうはGT Lineに比べると明らかに荒々しい。タイヤサイズは同一だが、サスペンションのバネレートはGTのほうが明らかに高く、ロールでサスペンションのジオメトリー変化が明瞭に発生する速度域はGTのほうがずっと上のようだった。荒れた山岳路をガシガシ攻めて走るタイプのユーザーならGTが断然良さそうだった。スロットルを踏んだときの力感もなかなかたくましい。半面、アンジュレーションや段差などの路面の不整箇所を乗り越えたときの衝撃吸収力はGT Lineに劣る。
◆ガソリンの「GT Line」がおすすめな理由
このようにキャラの違いが結構明瞭な両者だが、筆者個人の好み的にはGT Lineのほうを押したいところ。前述のように乗り心地やパワートレインの制御がスウィートで気持ちよいというのもあるが、1.6リットルガソリンターボの燃費が想像よりずっと良かったことが大きい。高速7割、市街地3割のドライブを終えた時点での平均燃費計値は16.9km/リットルと、Dセグメントとしては望外に良い数値であった。
同じコースをほぼ同じ平均車速で駆けたGTは18.5km/リットル。軽油とプレミアムガソリンでは燃料単価に結構な差があるが、それでもガソリンとディーゼルの間で一昔前のような大差はみられなかった。年間走行距離が1万km程度のユーザーであれば、ガソリンが大いにおススメである。
それにしても事実上クラスアップした508は思いもかけず秀逸なテイストのセダンであった。機会をみて、ロングツーリングを試してあらためてレポートをお届けしたいところである。
■5つ星評価(サルーンカー視点で)
GT Line(ガソリン)
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
GT Blue HDi(ディーゼル)
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
(レスポンス 井元康一郎)
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