トヨタ MIRAI 新型試乗 意外な誤算?走りが楽しいプレミアムセダンに生まれ変わった…片岡英明

  • トヨタ MIRAI 新型(プロトタイプ)
世界で初めての量産FCV(燃料電池車)であるトヨタの『MIRAI(ミライ)』が12月に第2世代にバトンタッチする。そのプロトタイプは2019年秋の東京モーターショーで公開された。実車を見たときに、後輪駆動と知らされ、驚いたものだ。

あの衝撃の対面から約1年、量産車に限りなく近い最終プロトタイプに試乗する機会に恵まれた。試乗の舞台として与えられたのは、タイトコーナーが続く富士スピードウェイのショートコースである。


◆新型ミライは何が変わったのか

ご存じのように、FCVは高圧タンクに充填した水素と大気中の酸素を化学反応させて水と電気に分解し、EV(電気自動車)と同じように電気によってモーターを回し、走行する乗り物だ。排出するのは水だけだから、「究極のエコカー」とも呼ばれている。EVのように重いバッテリーをたくさん積む必要がないし、充填に要する時間も数分で済む。初代ミライは1万1000台あまりが生産され、その3分の2近くが海外に渡った。

簡単に新型ミライのプロフィールを紹介しておこう。開発コンセプトは「EDGE for FUN FUTURE」だ。従来の環境車イメージを払拭する、クルマ本来の魅力にこだわったエッジの効いた存在価値を徹底的に追及した。掲げたのは、感性に訴えるデザイン、唯一無二の走り、一歩先を行くあふれる先進性、距離を気にしない安心の走行の4つである。これらの項目を高いレベルで実現するために、プラットフォームとFCユニットのレイアウトを一から見直し、刷新した。

トヨタでは高級車だけに使われるGA-Lプラットフォームを採用し、燃料電池システムも第2世代のものを搭載して、FCスタックと水素タンクの性能を向上させた。ボンネットの中にFCスタックを、センタートンネルとリアシート下、その後方にあるモーターの前にも水素タンクを配して50:50の理想的な重量配分を実現している。また、航続可能距離は初代の約650kmから約850kmに延びた。

駆動用モーターの最高出力は初代ミライの113kW(154ps)から134kW(182ps)へとパワーアップされている。最大トルクは300Nm(30.6kg-m)だ。FCスタックの体積出力密度は世界トップレベルの4.4kW/リットルを達成した。タンク貯蔵性能も6.0wt%(従来は5.7)と、こちらも世界トップレベルを実現している。

スタイリングは、ワイド&ロースタンスのエモーショナルなフォルムだ。全長は先代より85mm長くなり、4975mmに達している。ホイールベースも2920mmと、140mmも延びた。全幅も1885mmと、70mmも広げられている。だが、全高だけは65mmも低くなった。だから4ドアクーペと言える伸びやかなシルエットだ。フロントマスクも迫力を増した。


◆FRならではの加速、サウンド・コントロールもいい

最初にステアリングを握ったのは、245/45 ZR20サイズのファルケン「アゼニス」を履いた上位グレードの「Z」だ。アクセルを開けると、レスポンスが鋭く瞬時にパワーとトルクが立ち上がる。滑らかな加速フィールも内燃機関には真似のできない美点のひとつ。モーターならではの気持ちいいパワーフィールである。また、後ろから押されるような力強い加速フィールは、後輪駆動ならではだ。ゆっくり流すような走りでもワクワクした気分になり、ステアリングを握っているのが楽しい。

加速していくときのパワートレーンのノイズや20インチタイヤのパターンノイズも上手に抑え込んでいた。試乗した日は雨で、水たまりもあったが、初代ミライより遮音が行き届いているようで、あまり気にならない。また、100km/hを超えるスピードでも風切り音は低く抑えられていた。巡航時だけでなく加速時もキャビンが静かに保たれているのがFCVのいいところだ。

が、それだけで終わらないのが新しいミライの凄いところである。FCVやEVは内燃機関と違って静かだが、味気ないと思っている人も少なくない。こういったヘソ曲りのために、チーフエンジニアの田中義和さんは粋な演出をしてくれた。それが「アクティブ・サウンド・コントロール」だ。スイッチの位置は分かりづらいが、これをオンにするとアクセル操作とリンクしてスピーカーから擬似サウンドが流れる。スポーツモードでは快音を放ち、その気にさせてくれた。


◆驚くほど良くなった操舵フィール

サスペンションは前後ともマルチリンク式コイルスプリングだ。ブレーキは4輪にベンチレーテッドディスクをおごっている。走り出してすぐにクルマがしっかりしていることが分かった。強靭なボディだが、速いスピードでコーナーに飛び込んでも足の動きは軽やかだ。適度のロールは許すものの、ウエット路面でもしたたかにタイヤが食らいつき、滑ったときのコントロール性も優れている。トラクションコントロールの介入も合格点だ。

操舵フィールも驚くほど良くなっている。ボディの大きさを意識させないほど自然な感じで曲がり、狙ったラインに乗せやすい。タイトコーナーで切り増しして、追い込んでいってもリアが気持ちよく付いてくる。サスペンションの動きがいいから懐の深いコーナリングを披露した。ブレーキの制動フィールも安心感がある。

ただし、重さを感じさせる場面もあった。19インチタイヤを履く「G」グレードは235/55 R19サイズのダンロップ製スポーツマックスだったが、こちらのほうがグリップレベルは低いから操っている感じが強い。軽快感を好む人には19インチタイヤがいいだろう。

静粛性とともに高く評価できるのが乗り心地だ。路面のいいサーキットでの試乗だったが、快適性は高かった。後席に座っても満足度は高いだろう。


◆ステアリングを握るのが楽しいクルマへと成長した

もうひとつ、特筆したいのが発電のために走行時に空気を取り入れるFCVだけの特徴を生かし、吸入した空気をきれいにして放出する空気清浄システムを採用していることだ。ゼロエミッションの先を行く「マイナスエミッション」である。しかも右側の見やすい一等地に空気清浄メーターを装備した茶目っ気も好印象だ。環境保全に貢献していることを実感できる。

2代目のミライは、グランドツアラーとしての魅力を増し、ステアリングを握るのが楽しいクルマへと成長した。これは意外な誤算だ。これくらい走りがよければ、法人需要だけでなく『クラウン』やレクサスのオーナーをも取り込めるだろう。新型ミライはたくさんの引き出しを持つ魅力的なプレミアムセダンに生まれ変わった。

食わず嫌いの人も、一度、試乗してみることをお勧めする。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

片岡英明|モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。
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