【ホンダ ステップワゴン 新型試乗】シフト操作はそろそろユニバーサルデザインにすべきだ…中村孝仁
何とも外連味がなく、清々しい
このところ、都会の至る所で黒塗りの大型ミニバンを多数見かける。それらはすべて、まあ見事な鉄仮面マスクでその存在を誇示するモデルだ。敢えてどこのメーカーとは言わないが、この巨大クロームグリルが世の中のユーザーに受け入れられて、日本のミニバンは多くがこのクロームベタ塗りのどや顔モデルが多くなってしまった。
まあ、売れているわけだから反論のしようも無いのだが、そんな時ニューモデルとして誕生したホンダ『ステップワゴン』のデザインに、とてつもなく新鮮さを感じてしまった。というのもそのフロントフェイスはなんともシンプルでさわやかである。イメージとしてはまさに初代…と言いたいところだが、実は2代目のモデルが今回のステップワゴンに近いデザインを持つ。何とも外連味がなく、清々しい。だから、外観のデザインは今あるミニバンの中で最も好ましいと個人的には思うわけである。
サイズは全長4800×全幅1750×全高1840mm。このカテゴリーのライバルはトヨタ『ノア/ヴォクシー』、日産『セレナ』。かつては5ナンバーサイズを死守していたジャンルだが、ついに全モデルが3ナンバーとなった。そんなわけだから室内がかなり広い印象を受ける。それもコンパクトミニバンだとまず窮屈過ぎて使えない3列目で大人がゆったりできるほどのサイズである。
そしてホンダが優れていると感じるところは3列目のシートを床下に収納でき、巨大な荷室スペースを作れるところにもある。この3列目シートに対するアプローチは様々で、床下収納を選んでいるのはホンダだけ。背景にあるのは4WDモデルの有無だと思うのだが、今後電動四駆が主流になると床下収納でも4WDが作れるのではないかと思ってしまい(無理なのかもしれないが)、床下収納が便利だと思うわけである。
「e:HEV」というホンダのハイブリッドシステムはホンダ曰く、EVに近いハイブリッドなのだそうで、確かに電動で動く確率が以前よりも増していると感じる。モーターを二つ搭載し、駆動用と発電用と使い分けることで効率を上げている。この二つは並列に並べられて駆動用はドライブシャフトに直結し、発電用はエンジンに直結する。
シフト操作はそろそろユニバーサルデザインを採用した方が良いのでは?
そんなメカニズムの話はともかくとして、広くて快適、それに静粛性も高く、運動性能も伊達じゃないレベルとくれば何の不満もない…と言いたいところだが一つだけどうしても許せない部分があった。それはシフト操作の方法である。近年自社への囲い込みをしたいがためか、各メーカーともにてんでんバラバラなシフトの操作方法を提案している。昔ながらのPRNDと1列に並んだオートマチックのシフトレバーなど滅多に見ない。中には押しボタン式やダイヤル式などもあって、それらはすべてユーザーが乗り換えた時に単純な混乱を引き起こすだけの要素に過ぎないと思っている。
最近パーキング、即ちPのポジションをボタンで済ますメーカーが主流になりつつあって、それはそれなりの市民権を得たように思うのだが、ホンダのいけないところはこのパーキング以外にD即ちドライブのポジションも押しボタンにしてしまったことだ。しかもその間にスライドスイッチのR即ちリバースがある。
スイッチ風のシフトレバーは例えばフォルクスワーゲン『ゴルフ』などにもみられる。ドライバーが手前に引けばDに入る。この方法を採用するメーカーも内外を問わず多い。ところが同じ操作をするとホンダの場合はリバースに入ってしまうのだ。日頃から毎週違うクルマに乗っているような我々には、体に染み付いた動作として、どうしてもこのスイッチ風シフトレバーを手前に引けばDに入ると思い込んでいるから、無意識でその操作をしていきなり車両が後退し、慌ててブレーキを踏んだこと数回。そろそろ、この辺りの操作方法はメーカー横断的にユニバーサルデザインを採用した方が良いのでは?と思った次第である。
せめて手前に引くのではなく、車両前側に押す方式をとってもらえば間違いが減るかもしれない。もしこれでいきなりバックしてクルマをぶつけてしまえば、それは「アクセルとブレーキの踏み間違い」ということになるのだろうが、別にアクセルとブレーキは踏み間違えていないのである。まさに危険はこんなところにも潜んでいる。この辺りの操作系をデザインするエンジニアには是非そのあたりを再考していただきたいものである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
このところ、都会の至る所で黒塗りの大型ミニバンを多数見かける。それらはすべて、まあ見事な鉄仮面マスクでその存在を誇示するモデルだ。敢えてどこのメーカーとは言わないが、この巨大クロームグリルが世の中のユーザーに受け入れられて、日本のミニバンは多くがこのクロームベタ塗りのどや顔モデルが多くなってしまった。
まあ、売れているわけだから反論のしようも無いのだが、そんな時ニューモデルとして誕生したホンダ『ステップワゴン』のデザインに、とてつもなく新鮮さを感じてしまった。というのもそのフロントフェイスはなんともシンプルでさわやかである。イメージとしてはまさに初代…と言いたいところだが、実は2代目のモデルが今回のステップワゴンに近いデザインを持つ。何とも外連味がなく、清々しい。だから、外観のデザインは今あるミニバンの中で最も好ましいと個人的には思うわけである。
サイズは全長4800×全幅1750×全高1840mm。このカテゴリーのライバルはトヨタ『ノア/ヴォクシー』、日産『セレナ』。かつては5ナンバーサイズを死守していたジャンルだが、ついに全モデルが3ナンバーとなった。そんなわけだから室内がかなり広い印象を受ける。それもコンパクトミニバンだとまず窮屈過ぎて使えない3列目で大人がゆったりできるほどのサイズである。
そしてホンダが優れていると感じるところは3列目のシートを床下に収納でき、巨大な荷室スペースを作れるところにもある。この3列目シートに対するアプローチは様々で、床下収納を選んでいるのはホンダだけ。背景にあるのは4WDモデルの有無だと思うのだが、今後電動四駆が主流になると床下収納でも4WDが作れるのではないかと思ってしまい(無理なのかもしれないが)、床下収納が便利だと思うわけである。
「e:HEV」というホンダのハイブリッドシステムはホンダ曰く、EVに近いハイブリッドなのだそうで、確かに電動で動く確率が以前よりも増していると感じる。モーターを二つ搭載し、駆動用と発電用と使い分けることで効率を上げている。この二つは並列に並べられて駆動用はドライブシャフトに直結し、発電用はエンジンに直結する。
シフト操作はそろそろユニバーサルデザインを採用した方が良いのでは?
そんなメカニズムの話はともかくとして、広くて快適、それに静粛性も高く、運動性能も伊達じゃないレベルとくれば何の不満もない…と言いたいところだが一つだけどうしても許せない部分があった。それはシフト操作の方法である。近年自社への囲い込みをしたいがためか、各メーカーともにてんでんバラバラなシフトの操作方法を提案している。昔ながらのPRNDと1列に並んだオートマチックのシフトレバーなど滅多に見ない。中には押しボタン式やダイヤル式などもあって、それらはすべてユーザーが乗り換えた時に単純な混乱を引き起こすだけの要素に過ぎないと思っている。
最近パーキング、即ちPのポジションをボタンで済ますメーカーが主流になりつつあって、それはそれなりの市民権を得たように思うのだが、ホンダのいけないところはこのパーキング以外にD即ちドライブのポジションも押しボタンにしてしまったことだ。しかもその間にスライドスイッチのR即ちリバースがある。
スイッチ風のシフトレバーは例えばフォルクスワーゲン『ゴルフ』などにもみられる。ドライバーが手前に引けばDに入る。この方法を採用するメーカーも内外を問わず多い。ところが同じ操作をするとホンダの場合はリバースに入ってしまうのだ。日頃から毎週違うクルマに乗っているような我々には、体に染み付いた動作として、どうしてもこのスイッチ風シフトレバーを手前に引けばDに入ると思い込んでいるから、無意識でその操作をしていきなり車両が後退し、慌ててブレーキを踏んだこと数回。そろそろ、この辺りの操作方法はメーカー横断的にユニバーサルデザインを採用した方が良いのでは?と思った次第である。
せめて手前に引くのではなく、車両前側に押す方式をとってもらえば間違いが減るかもしれない。もしこれでいきなりバックしてクルマをぶつけてしまえば、それは「アクセルとブレーキの踏み間違い」ということになるのだろうが、別にアクセルとブレーキは踏み間違えていないのである。まさに危険はこんなところにも潜んでいる。この辺りの操作系をデザインするエンジニアには是非そのあたりを再考していただきたいものである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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