【ジープ グラディエーター 新型試乗】ピックアップである前にジープ=遊びのギアなのである…中村孝仁

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折角だから、こいつでホームセンターに行って買い物をしよう。でもってラフに荷台に荷物を積んで…なんて考えてノーズを行きつけのホームセンターに向けた。

ラフに荷物を積んで…なんて言って買ったものは犬の餌とペットシートである。まあ、後部座席にも入る。で、わざわざ人気のない屋上に止めたのだが、たまたまエレベーターで乗り合わせた家族のうちその奥様が、屋上駐車場に出て目の前の『グラディエーター』を見つけるなり「カッコいい!素敵!」ときた。そして少し困惑気味に車に近づいてドアを開けると今度は「クルマ、カッコいいですねぇ!私こういうの大好きなんですぅ!」と声をかけてきた。

思わず自分のクルマでもないのに「有難うございます」と返したが、その時はまんざらでもない気分で、そこからは街中に乗り出すと周囲が気になるようになってしまった。やはり目立ち度では相当な指数に上る気がする。確実に周囲から見られている。でもって調子こいて少し鼻高々な気分でいる自分に気が付いて少々気恥ずかしくなった。とにかく目立つことこの上ないようだ。

◆シャープに切れるステアリングに驚かされる
正面から見れば普通のジープなのだが、横に回れば長大な荷台付きのピックアップトラックである。しかもホイールベースは3490mmもある。何とこの中に軽自動車ならすっぽりと収まる長さだから、如何に長いかお分かりだろう。そんなわけだから流石に内輪差が大きく、狭い四つ角などは気を付ける必要がある。

ただ、それさえ理解すれば乗るのは至って楽。突き出たフェンダーと四角いトラックベッドの四隅のおかげで車両感覚はとても掴みやすく、一度その感覚を掴んでしまえば、かなりの狭い道でも不安なく入っていける。もっとも全長は5600mmもあるから駐車スペースには難儀する。おまけに1ナンバーだから高速道路も高い。まあそのあたりを念頭に入れる必要はある。

初めて乗り出してしばらく走ると、かなりシャープに切れるステアリングに少々驚かされた。というのも悪路走破性を高くしたジープのステアリングは、意図的に遊びを大きくしてラフな道路でのキックバックを減らす味付けがなされているからなのだが、こいつは意外なほどシャープに切れた。

よく見ると走行モードは4WD Autoであった。オートとはいってもオンデマンドだから通常はRWD(後輪駆動)で走っているかと思いきや、どうもそうではないようで、こいつを2H、即ちRWDに切り替えるとステアリングのフィールは一気に緩いジープのそれに戻る。高速でも4WD Autoと2Hの間には顕著な差があって、とかく修正舵を必要とする2Hに対し4WD Autoならしっかりと高い直進安定性を保持してくれる。ただ、それなりにフリクションも出るから、燃費を気にするなら2Hでの走行をお勧めするところだ。

◆ピックアップである前にジープなのである
BFグッドリッチのマッドテレインタイヤのトレッドパターンからは、それがオンロード向きでないことは一目でわかるし、実際ものの30km/hも出ればタイヤは唸りをあげる。乗り心地もそれなりに硬いしとにかくパターンノイズとロードノイズは終始非常に大きい。乗り心地もそれなりに硬いとは書いたものの、それをピックアップトラックと考えれば、これほど快適なトラックは少なくとも日本製のキャブオーバー型と比較したら天国。実に快適な乗り心地だともいえる。

だから、日常的にこいつを足に使っても全然OK。引っ越しなどで借りるレンタカーの日本製トラックの乗り心地の酷さときたら、あれを仕事とは言え普段から使う人々が可哀そうに思えるのだが、すべては積載重量重視の設計がそうさせているのだと思う。とにかくこのサイズなら日本製だと4トントラックあたりだろう。ところがこいつの積載重量はたったの250kg。だからサスペンションに負担をかけずに済むのだと思う。

こうなると、じゃあトラックベッドに一体何を積むのか?ということにもなるわけだが、要はアメリカ中西部なら載せても乾草のように軽いものということなのだと思う。アメリカではいわゆるライトデューティーのピックアップトラックでも積載量はハーフトン、つまり500kgなのだから、まあ考え方が違うということだと思う。ピックアップではあるがピックアップである前にこのクルマはジープなのである。つまり遊びのギアというわけである。

3.6リットルV6と8ATの組み合わせは静粛性も高いし快適でスムーズである。だからその分タイヤのノイズが気になる。ファーストカーとして使うなら走破性を少し犠牲にしてももう少しトレッドパターンの大人しいタイヤをチョイスする方が良いかもしれない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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