【ジープ グランドチェロキー 新型試乗】“本命”登場で先代の圧倒的販売を超えられるか…中村孝仁

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いささか旧聞ではあるけれど、旧型のジープ『グランドチェロキー』を試乗した際に販売動向について聞かされ衝撃を受けたことを思い出す。

グランドチェロキーの仮想敵であるBMW『X5』やメルセデス『GLEクラス』、あるいはボルボ『XCX90』、ポルシェ『カイエン』などに対して当時グランドチェロキーは他を大きく引き離してダントツの販売台数を誇っていたという。俄に信じられなかったのだが、数字が物語っているのだから信じないわけにはいかない。

当時は今でいうところのショートバーションしかなく、ロングホイールベースモデルは5世代目のコードネームWLとなって初登場した。そのロングホイールベース版のWLについてはすでに試乗記を記した。今回はショートホイールベース版というか従来の市場をそのまま受け継ぐ標準モデルの試乗である。

◆グランドチェロキーの本命は4気筒搭載
ロングホイールベース版が3.6リットルのペンタスターと呼ばれるV6エンジンを搭載していたのに対し、日本仕様の標準モデルは2リットルの直4ターボエンジンを搭載する。しかし、このエンジン仕様は北米市場には存在しない。ネット上をあれこれと探してみると、日本市場に今後やってくるPHEV仕様についてはこの2リットル4気筒ターボが組み合わされているのだが、内燃エンジンの4気筒はどうもこのPHEVのものとは異なるらしく、直4内燃エンジンのみの仕様が販売されているのはどうやらインド市場だけのよう。つまりは日本仕様とインド仕様が同じということになるようだ。しかも生産国はアメリカとインドに限られるから、日本仕様はインドから導入されているとみるべきだろう。

まあそんなことはともかくとして、従来のグランドチェロキーの市場を引き継ぐモデルはこれだから、本命はこっちである。新しい第5世代のチェロキーはアルファロメオ『ステルビオ』と共有のプラットフォーム、「ジョルジョ」をベースに作られている。

日本仕様のグランドチェロキーLに試乗した時はエアサスペンションによるスムーズな乗り心地と上質な室内空間などから、およそ先代までのグランドチェロキーと比較してはいけない異次元な印象を持ったが、この標準仕様ともいうべきモデルはまさにWKのコードネームを持った先代の正常進化版であった。

先代でもエンジンはV6とV8に限られ、まさか4気筒など考えもできなかったが、今やラングラーだって4気筒を積む時代だから、時代は着実に変わっている。そんなわけで乗り出した時に4気筒特有のサウンドを発するその走りと立派な体格のボディを考えるとかなりの違和感を感じたのだが、それも数分のこと。すぐに軽快でキビキビと走るショートホイールベースのWLに、これはこれでよいではないか…と感じたものである。もっともグレードの違いもあって、Lの方は「サミットリザーブ」という最上級のグレードであったのに対し、今回の標準版は「リミテッド」グレード。このガソリン4気筒版にはサミットリザーブの仕様はなくこのリミテッドだけとなる。

◆オンロード志向を強めたジープの走り
まあ、エアサスのLとの比較ということにはなるが、やはりだいぶ印象は異なっていて、十分にスムーズではあるが路面からの突き上げ感などは比較的大きめに入力が入る。それでもステルビオと比較してもスムーズライドであってステルビオの場合は完全にスポーツライドの印象が強い。

ブラック系のウッドパネル風加飾は完全にステルビオと同じものが使われている。それにしても長いことクルマの世界にいるが、まさかアルファロメオとジープが兄弟の契りを結ぶなど想像もできなかったことである。

ハンドリングもWK時代とは大きく異なり、かなり正確でオンロード志向の強いハンドリングを持っている。ジープと言えば昔はオフロード車のイメージが強く、実際ハンドリングもオフロードを強く意識した中心付近で甘く、キックバックを食らわない設定とされてきたが、近年は確実にオンロード志向を強めて、転舵に対して忠実な反応を示す設定とされている。

◆先代のような圧倒的販売ができるか
他を引き離してダントツの販売台数を誇った先代は、ずばり価格的な優位性がモノを言っていた気がするが、今回のモデルは依然としてアドバンテージはあるもののその差は大きく縮まったので、果たして以前のように圧倒的販売ができるかはいささか予断を許さない気がする。それでも4気筒を積んで鼻も軽くなり、大きな図体ながら想像以上にキビキビ軽快に走るクルマであった。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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