【DS 7 海外試乗】驚くほどキープコンセプト!ながら出刃包丁のような“用の美と切れ味”だった…南陽一浩

  • DS 7 E-TENSE 4X4 360(海外仕様)
モデルチェンジ毎に先代モデルとの断絶や落差を強調したり、あるいはシルエット的にもトールボーイとロー&ワイドを繰り返したりするフランス車にあって珍しいほど、新しい『DS 7』はキープコンセプトで現れた。

名前の上では「DS 7クロスバック」から「DS 7」と、「クロスバック」が外された。初代が開発された頃、つまり2010年代半ばほど今やSUVという車型が珍しいものではなくなり、フラッグシップに『DS 9』というサルーンを頂く以上、当然のことかもしれない。

初代DS 7クロスバックにも後期フェイズからE-TENSEこと、FFベースのリアモーターによるパートタイム4×4、1.6リットルターボのPHEV版は存在したし、外観のシルエットはほぼ踏襲している。だが今回試乗に供されたのは「E-TENSE 4X4 360」。日本市場で従来から発売されていたE-TENSE 4X4 300こと300ps・520Nmという、プジョー『3008ハイブリッド4』と同じスペックのパワートレインではない。

520Nmは横並びながらシステム総計で最大出力は360psにまで引き上げられ、むしろ日本で未導入のプジョー『508PSE(プジョー・スポール・エンジニアード)』と基本パワートレインを同じくするトップ・オブ・レンジ仕様なのだ。ほとんど神話レベルかもしれないが公式には、DS 7 E-TENSEのパワートレインはフォーミュラEでタイトル経験もあるDSレーシングの手でチューンされた、とされる。プジョー・スポールとDSレーシング、いずれのレース部門もヴェルサイユ・サトリーの同じファクトリー内にあるのは公然の秘密といったところだが、制御プログラムやロジックの違いは当然あるだろう。

◆ほとんど変わらない、けど変わったジオメトリー&エクステリア
欧州発表値でE-TENSE 4X4 360の外寸は全長4593.3×全幅1906(フロントフェンダー。リアフェンダーは1890.8)×全高1625.2mmなので、旧DS 7クロスバックの全長4590×全幅1895×全高1635mmに対し、サイズ感はほとんど変わりない。だがホイールベースは旧2730mmに対して新2738mmと、+8mm伸長。高速安定性や乗り心地に有利に働きやすい部分ではある。

またトレッドもフロント側が旧1625mmから新1621mm、リア側は旧1605mmから新1598mmと、全体で僅かに狭められたが、これは360ps仕様では装着タイヤが21インチへと大径化&ワイド化されているがためだ。実質的にフロント側を相対的に拡げつつ、車高ならびに重心高は20mm近く落とされたと考えられるので、パフォーマンス志向のジオメトリー変化といえるだろう。

デザイン面での新たなフィーチャーとしては、まずフロントマスクを一新した「DSピクセルLEDヴィジョン3.0」と「DSライトヴェール」に注目。前者は84個のLEDで照射範囲を細かく制御するのみならず、速度に応じて最大で前方385m、低速時に65mワイドに照らすなど、とにかく照射範囲が広く明るい。後者はバンパー内側より透過光を放つ、独特の日中走行灯だ。またリアビューでも、ハッチゲートのナンバープレートのスペース上に水平のプレスラインが追加され、ロゴの位置を下げることでビジュアル上の重心も低められている。

フランス本国でDSはとくに「パフォーマンスライン」が人気で、外装のクロームパーツはセミグロスブラック仕上げで引き締められ、21インチタイヤ&ホイールを履くとはいえ、全体としての踏ん張り感というか力感の漲るポスチャーの造り込みは、見事という他ない。ちなみにDSのチーフデザイナーのティエリー・メトロズはルノー在籍時代、かの『アヴァンタイム』のエクステリアを手がけた張本人なので、「前衛」は代名詞のようなものだが、先代のデザインを否定せずに進化させる手並みも流石だ。

◆変化のための変化を敢えてつけないインテリア
ナッパレザーをふんだんに用いたDSならではのリュクスな内装も、健在だ。撮影車には「ノワール・バサルト」という、火山岩をイメージした温かみあるブラックの内装色だったが、スイッチONとともにぐるりと回転して現れるB.R.Mのダッシュボードウォッチはそのままに、外装と同様にクルー・ド・パリをはじめ加飾パネルはブラックで引き締められる。

ダッシュボードやドアパネル上のレザーには放射状ストライプがエンボスで施され、ポワン・ペルルと呼ばれるパールステッチとの控えめなコントラストも見事。4.5m長のナッパレザーの一枚革を60cmにまで畳み上げて造り上げるという、時計のブレスレットのような分節クッションを備えた、往年のシトロエン『SM』を彷彿させるシートといい、スポーティ・エレガンスのお手本のような質感に揺るぎはない。もう少し変化があってもいいという意見もありそうだが、変化のための変化を敢えてつけないのが、DSらしさでもある。

むしろ大胆にアップデートされたのは、インフォテイメント・システムや駆動用バッテリーの容量といった部分にある。まずはプレミアムCセグのSUVの中でもクラス随一の画面サイズに拘ったと思われる、12インチワイドのタッチスクリーンに注目。画面自体も高解像度で視認性が大幅に向上し、『DS 4』と同じく「DSイリス」という音声認識コマンドやスマートフォンのエミュレート機能が備わる。受信中のFM局から曲やアーティスト名を表示するといった日本では対応し切らなさそうな機能もあるし、DS 4には備わる手元のショートカット・ローンチャーこそないが、デジタルインターフェイスが最新鋭であることはニューモデルとして今や最重要項目なのだ。

もうひとつ大きなアップデートは、リチウムイオンバッテリーが旧11.72kWhから新たに14.2kWhに容量を増した点。ゼロエミ状態ので最大レンジはWLTPのミックスモードで57kmを確保しているという。実際には交通量の少ないフランスの郊外路ではもっと早く使い果たした印象だったが、市街地モードでは62kmとあるので、アイシン製e-EAT8速の効率を疑う余地はない。電費のよさだけではなく、プレミアムPHEVとしての動的質感を実現するのに、電気モーターとどう協調制御するか、そこがDS 7 E-TENSEの天王山といえる。

◆“従順”の裏に力漲るものがある
果たして走りについてはどうか? まずゼロ発進時、後輪の電気モーターから駆動力が伝わってくる反応の速さはEVめいて現代的だが、踏み始め数ミリの微妙さと、その先の大袈裟過ぎない小気味よさは、アナログ的ですらある。ICEに繋がる局面では走行状況にもよるが、感覚的には40~60km/hで3速か4速に叩き込まれるのは近頃のPHEVの定石通りの作法ながら、ICEが起動してなおトルクの力強さが途切れないところがいい。

平たくいえば「docile(従順な、素直で大人しいの意)」ということだが、その裏づけに力漲るものがあって、忠実さよりは甘やかさが際立つ感触のパワートレイン制御だ。ノーマルやエコモードでアクセルオフしたら基本はコースティングだが、Bモードでアクセルオフにした際の減速Gの立ち上がり方も違和感がなく、加減速ともにしっとりしている。

ハンドリングについても、初代より剛性感が各段に増しており、操舵に対するノーズの反応から旋回に入る素直さ、後車軸側の追従のラグの無さ、さらには立ち上がり加速の鋭さまで、パフォーマンスSUVとして申し分ない。曲がっている最中の剛性感や加速の鋭さと、ゆるりと走らせた時の安穏さが、ほとんど矛盾していると感じさせるほどだ。明らかにロールは抑える方向のボディコントロールながら、しなりのある足まわりで、1.9トン近い(欧州値で1885kgとなっている)ボディが、その気になれば機敏な挙動すら示す。ヒラリヒラリではなく、キチンと握った出刃包丁がスッ、スッと切れ込んでいく感触にも似た、そういうハンドリングの切れ味なのだ。

高速巡航でのスタビリティやフラット感ある乗り心地も、申し分ない。コンフォートモードを選べば、例によってアクティブスキャンサスが数十m先の路面を読み取り、サスの減衰力をアクティブ制御するため、乗り心地はより上下にたゆたうような柔らかなタッチに変わる。スポーツモードにすれば、ギアの選択が低められてエンジンパワーを引っ張る傾向となるが、吠えるのではなく、あくまでスムーズにグイグイと巨躯のボディを引っ張り上げる。そこは508PSEとの大きな違いだ。

◆パフォーマンス系にしてエレガンスをも究めたDS 7
ただし巨躯と書いてはたと気づくのは、DS 7の車内にいると大きな車に乗っているように感じるが、実際には全長4.6m弱しかない。その遮音性と静粛性の高さは無論、380mmの大径ディスクを採用したフロントブレーキのキャパシティに裏付けられた、余裕ある制動タッチも相まって、いい意味で矛盾した感覚、ダイナミックだがエレガントという感覚をあらゆる局面で覚えるのだ。

いわばPHEVがトップ・オブ・レンジになった今世代のDS 7は、電動化の宿命といえる重量増に対し、「走る・止まる・曲がる」の質を徹底的に磨き上げ、進化かつ深化させてきた。これらひとつだけ優れていればとか単独で際立っていればいいものではなく、3要素が密に絡み合って乗り味そのものが構成・醸成されることはいうまでもない。

DS 7の場合はロック・トゥ・ロックで約3回転ほどしかない、しかしシトロエンほど古典的な大径でもなく、プジョーほど際立って小径でもないステアリングも、独特の優れたバランスをもたらしていると思う。しかも恐るべきは、21インチで35扁平ものタイヤを履いていながら、イヤらしい突き上げとか乗り心地の硬さを、ほぼ皆無なことだ。スピードバンプなど低速でストローク量が要る局面ではさすがにゴツンとしたハーシュネスは出るが、剛性の高いボディが音を上げることはない。

パフォーマンス系にしてエレガンスをも究めるという、どちらか一方ではなく、どちらも欲張った結果として、しっとりした動的質感が、図太くしかも軽やかに存在している。言い方に矛盾があるのは百も承知だが、本当にそういう車がある、ということだ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

南陽一浩|モータージャーナリスト
1971年生まれ、静岡県出身。大学卒業後、出版社勤務を経て、フリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・服飾等の分野で日仏の男性誌や専門誌へ寄稿。現在は活動の場を日本に移し、一般誌から自動車専門誌、ウェブサイトなどで活躍している。

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