【プジョー 2008 新型試乗】クルマはやっぱり新しい方がよくできている…中村孝仁
ステランティス自慢のEVモデル、フィアット『600e』とジープ『アベンジャー』に立て続けに試乗した。この2台、「CMP」と呼ばれるプラットフォームを持つ。
まぁ、正確には「e-CMP」と呼ぶようだが、基本はコンパクト・モジュラー・プラットフォームを略したCMPである。そして、その生みの親的なクルマと言えるのがプジョー『2008』ということで、久しぶりに果たしてどんなクルマであったかを検証するために引っ張り出してみた。
とはいうものの、私自身2008に試乗するのは3年ぶりのことで、実はこの間に大きなマイナーチェンジを経て今に至っている。そのマイナーチェンジは2023年の暮れに行われていた。つまり現行モデルが出てからすでに1年が経過しているというわけである。因みにフェイスリフト前の現行モデル誕生は本国では2019年。この時初めて件のCMPというプラットフォームが採用された。
◆マッチングの良さが感じられたCMP
改めて2008に乗ってみると、都会的な匂いがプンプンするいわゆるアーバンSUVという印象がとても強く、この4桁の車名となる2008が最初にデビューした時は、グリップコントロールなる悪路走破性を重視した走行モード切替や、グッドイヤーのオールシーズンタイヤ、ベクターを装備するなど、かなりオフロードを意識したモデルとして誕生した。
それが現行世代となって、そのグリップコントロールは「GT」と呼ばれるグレード(今回もGTである)に残ったものの、下級グレードの「アリュール」にはすでになく、今回マイナーチェンジを受けて以後のモデルには、GTでもそのグリップコントロールは消えていた。要するにもうオフロード走行は前提としていないということで、ドライ路面のSUVになったことが明白であった。
問題のCMPであるが、奥深いストローク量を誇る足の良さはそれなりにプジョーらしさを保っているが、昔のプジョーに比べるとサスペンションが伸びたり縮んだりする様を手に取るようにわかるという乗り味ではなく、入力されたショックをできるだけ早く収束させる方向に変わっている。もっともこれは一時的にドイツ車のように硬くなった足回りからの反省を経て、今の状況に落ち着いた新たなプジョー流であって、昔と比べて高速になった移動スピードに対処するものとして、妥当なストローク量と感じる。
剛性感は十分確保されていて、速い転舵に際しても気持ちよくクルマの向きを変えてくれる。これらはステアリング、シャシー剛性、サスペンションのマッチングの良さを表していると感じた。ただ、フラットライド感は少々薄く、凹凸の大きな路面を走ると比較的ぴょこぴょこと跳ねる傾向にあった。ここが実は同じCMPでもeが付くBEV系モデルとは大きく異なるところであり、やはりバッテリーを多く搭載し、車重的に250~31kgも重いBEVと比較するとどうしても気になる跳ね感である(因みに2008の車重は1320kg)。
◆前世紀に生まれた熟成のターボディーゼル
ブルーHDiのターボディーゼルは設計年次的には相当に古いエンジンだが、恐らく改良を重ねた結果か、今もって全く通用するエンジンに仕上げられている。因みにこのエンジン、元々は当時のPSAグループとイギリスフォードのジョイントベンチャーで開発されたもので、完成は前世紀、即ち1998年のことである。
2023年にマイナーチェンジでは主として外装の変更が行われ、とりわけフロントからの印象が大きく変わっている。リアでは古いライオンエンブレムが消えて、PUGEOTのロゴも字体が変わっていた。
というわけで、CMPというプラットフォームの基本的な成り立ちは結構優れものであることが分かった。因みにこのプラットフォーム、今後日本にも登場するかもしれない最新のアルファロメオ『ジュニア』や、ニューランチア『イプシロン』などにも採用されているステランティスコンパクトモデルの主要プラットフォームである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来47年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
まぁ、正確には「e-CMP」と呼ぶようだが、基本はコンパクト・モジュラー・プラットフォームを略したCMPである。そして、その生みの親的なクルマと言えるのがプジョー『2008』ということで、久しぶりに果たしてどんなクルマであったかを検証するために引っ張り出してみた。
とはいうものの、私自身2008に試乗するのは3年ぶりのことで、実はこの間に大きなマイナーチェンジを経て今に至っている。そのマイナーチェンジは2023年の暮れに行われていた。つまり現行モデルが出てからすでに1年が経過しているというわけである。因みにフェイスリフト前の現行モデル誕生は本国では2019年。この時初めて件のCMPというプラットフォームが採用された。
◆マッチングの良さが感じられたCMP
改めて2008に乗ってみると、都会的な匂いがプンプンするいわゆるアーバンSUVという印象がとても強く、この4桁の車名となる2008が最初にデビューした時は、グリップコントロールなる悪路走破性を重視した走行モード切替や、グッドイヤーのオールシーズンタイヤ、ベクターを装備するなど、かなりオフロードを意識したモデルとして誕生した。
それが現行世代となって、そのグリップコントロールは「GT」と呼ばれるグレード(今回もGTである)に残ったものの、下級グレードの「アリュール」にはすでになく、今回マイナーチェンジを受けて以後のモデルには、GTでもそのグリップコントロールは消えていた。要するにもうオフロード走行は前提としていないということで、ドライ路面のSUVになったことが明白であった。
問題のCMPであるが、奥深いストローク量を誇る足の良さはそれなりにプジョーらしさを保っているが、昔のプジョーに比べるとサスペンションが伸びたり縮んだりする様を手に取るようにわかるという乗り味ではなく、入力されたショックをできるだけ早く収束させる方向に変わっている。もっともこれは一時的にドイツ車のように硬くなった足回りからの反省を経て、今の状況に落ち着いた新たなプジョー流であって、昔と比べて高速になった移動スピードに対処するものとして、妥当なストローク量と感じる。
剛性感は十分確保されていて、速い転舵に際しても気持ちよくクルマの向きを変えてくれる。これらはステアリング、シャシー剛性、サスペンションのマッチングの良さを表していると感じた。ただ、フラットライド感は少々薄く、凹凸の大きな路面を走ると比較的ぴょこぴょこと跳ねる傾向にあった。ここが実は同じCMPでもeが付くBEV系モデルとは大きく異なるところであり、やはりバッテリーを多く搭載し、車重的に250~31kgも重いBEVと比較するとどうしても気になる跳ね感である(因みに2008の車重は1320kg)。
◆前世紀に生まれた熟成のターボディーゼル
ブルーHDiのターボディーゼルは設計年次的には相当に古いエンジンだが、恐らく改良を重ねた結果か、今もって全く通用するエンジンに仕上げられている。因みにこのエンジン、元々は当時のPSAグループとイギリスフォードのジョイントベンチャーで開発されたもので、完成は前世紀、即ち1998年のことである。
2023年にマイナーチェンジでは主として外装の変更が行われ、とりわけフロントからの印象が大きく変わっている。リアでは古いライオンエンブレムが消えて、PUGEOTのロゴも字体が変わっていた。
というわけで、CMPというプラットフォームの基本的な成り立ちは結構優れものであることが分かった。因みにこのプラットフォーム、今後日本にも登場するかもしれない最新のアルファロメオ『ジュニア』や、ニューランチア『イプシロン』などにも採用されているステランティスコンパクトモデルの主要プラットフォームである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来47年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
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