【試乗記】フォルクスワーゲン・ポロTSI Rライン(FF/7AT)

フォルクスワーゲン・ポロTSI Rライン(FF/7AT)【試乗記】
フォルクスワーゲン・ポロTSI Rライン(FF/7AT)

ポジティブな真ん中

新型「フォルクスワーゲン・ポロ」のモデルラインナップに、1.5リッター直4直噴ターボエンジンを搭載した「TSI Rライン」が加わった。気筒休止機構やコースティング機構など最新のテクノロジーを手にデビューした、中間グレードの出来栄えやいかに!?

最新ハイテクのEvoエンジン

1リッターエンジンを積んだベーシックモデル、ハイパフォーマンスモデル「GTI」に続いて導入された「ポロTSI Rライン」。車両本体価格は298万円。
1リッターエンジンを積んだベーシックモデル、ハイパフォーマンスモデル「GTI」に続いて導入された「ポロTSI Rライン」。車両本体価格は298万円。
フロントにはワイド感を強調する専用フロントバンパーが装着される。
フロントにはワイド感を強調する専用フロントバンパーが装着される。
専用のルーフスポイラーとバンパー、2本出しのマフラーなどは「Rライン」専用。スポーティーさをアップさせるだけでなく、エアロダイナミクスを高める効果もあるという。
専用のルーフスポイラーとバンパー、2本出しのマフラーなどは「Rライン」専用。スポーティーさをアップさせるだけでなく、エアロダイナミクスを高める効果もあるという。
「ボンネビル」と名付けられた5スポークホイールを標準装備する。テスト車には「コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5」タイヤが装着されていた。
「ボンネビル」と名付けられた5スポークホイールを標準装備する。テスト車には「コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5」タイヤが装着されていた。
6代目フォルクスワーゲン・ポロに乗るのはこれで3度目。最初に「TSIハイライン」、次に「GTI」という順番だ。ベーシックモデル、高性能スポーティーモデルと来て、今回は真ん中のグレード。すしやうなぎで言えば松竹梅の竹にあたる。日本人が好んでオーダーする2番目の位置だから、ポロでも一番の売れ筋になるのは間違いない。儒教の中庸、仏教の中道という価値観は、われわれの心に染み付いているのだ。

298万円という価格もだいたい真ん中で、エンジンは1リッター3気筒と2リッター4気筒に挟まれた1.5リッター4気筒。最高出力は150psで、これまた95psと200psの中間、1リッターあたり17.8kmという燃費も19.1kmと16.1kmの間に位置するという見事な並びだ。迷ったら、TSI Rラインを選んでおけば誰でもそこそこの満足を得られると考えればいいのだろう。

そういう言い方をするとただの無難な選択のように思われてしまいそうだが、Rラインには積極的に選びたくなる理由がある。エンジン名に“Evo”という称号が付けられているのはこのモデルだけなのだ。気筒休止機構のアクティブシリンダーマネジメント(ACT)とコモンレール直噴技術を採用した最新ハイテクエンジンである。

内外装にもRラインだけの装備が用意されている。前後のスポイラーやツインエキゾーストフィニッシャーに特別感があり、「R-Line」のバッジも付けられているからわかりやすい。試乗車のボディーカラーは有償オプションの「エナジェティックオレンジメタリック」で、ダッシュパッドとセンターコンソールも同色となる。ほかにも「Discover Proパッケージ」「テクノロジーパッケージ」「セーフティーパッケージ」がトッピングされていて、お値段はポロらしからぬものになってしまった。

1リッターエンジンを積んだベーシックモデル、ハイパフォーマンスモデル「GTI」に続いて導入された「ポロTSI Rライン」。車両本体価格は298万円。
1リッターエンジンを積んだベーシックモデル、ハイパフォーマンスモデル「GTI」に続いて導入された「ポロTSI Rライン」。車両本体価格は298万円。
フロントにはワイド感を強調する専用フロントバンパーが装着される。
フロントにはワイド感を強調する専用フロントバンパーが装着される。
専用のルーフスポイラーとバンパー、2本出しのマフラーなどは「Rライン」専用。スポーティーさをアップさせるだけでなく、エアロダイナミクスを高める効果もあるという。
専用のルーフスポイラーとバンパー、2本出しのマフラーなどは「Rライン」専用。スポーティーさをアップさせるだけでなく、エアロダイナミクスを高める効果もあるという。
「ボンネビル」と名付けられた5スポークホイールを標準装備する。テスト車には「コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5」タイヤが装着されていた。
「ボンネビル」と名付けられた5スポークホイールを標準装備する。テスト車には「コンチネンタル・コンチスポーツコンタクト5」タイヤが装着されていた。

上質感でアドバンテージ

最高出力150ps、最大トルク250Nmを発生する「1.5 TSI Evo」ユニットを搭載する「ポロTSI Rライン」。特に最大トルクは1500-3500rpmという低回転域かつ広範囲で発生する。
最高出力150ps、最大トルク250Nmを発生する「1.5 TSI Evo」ユニットを搭載する「ポロTSI Rライン」。特に最大トルクは1500-3500rpmという低回転域かつ広範囲で発生する。
ボディーカラーが「エナジェティックオレンジメタリック」(テスト車)と「リーフブルーメタリック」の場合、インストゥルメントパネルとセンターコンソールがボディーと同色でコーディネートされる。
ボディーカラーが「エナジェティックオレンジメタリック」(テスト車)と「リーフブルーメタリック」の場合、インストゥルメントパネルとセンターコンソールがボディーと同色でコーディネートされる。
ボディーカラーやインストゥルメントパネルなどに合わせて、シートの座面と背もたれを縦断するラインもオレンジとなっている。
ボディーカラーやインストゥルメントパネルなどに合わせて、シートの座面と背もたれを縦断するラインもオレンジとなっている。
リアシートは4:6の分割可倒式。センターコンソールの後端にはUSBソケットが2つ備わる。
リアシートは4:6の分割可倒式。センターコンソールの後端にはUSBソケットが2つ備わる。
最初に見た時は先代よりもはるかに立派で大人っぽくなったキャラクターに戸惑ったが、1年たってすっかり慣れた。エッジの効いたプレスラインはモダンでシャープな印象を与え、過剰な装飾を廃したスッキリとしたフォルムが都会的で落ち着いた空気をまとわせる。気さくでおおらかなイメージが失われた代わりに、スポーティーさと洗練を手に入れた。実用性を重視したまじめ路線は、以前から変わらない。

TSIハイラインは、発進で少しもたつく感じがあった。1.0 TSIエンジンは山道でフル加速するには明らかに力不足で、1速と2速がすぐに吹けきってしまう。街なかや高速巡航では不満がないものの、スポーティーに走るには物足りなかったような気がする。よく抑えられてはいたものの、3気筒エンジンの微振動が気になる場面もあった。

Rラインには、そういったストレスが一切ない。1.5 TSI Evoエンジンは低回転域でも十分なトルクがあり、発進には余裕がある。ローギアード化して無理に速さを演出する必要がないので、自然な加速が得られるのだ。4気筒だから振動対策にも有利だし、アイドリングストップからのエンジン始動で大きな揺れがないのもありがたい。上質感という点では、1リッター3気筒エンジンに比べて明らかなアドバンテージを持つ。

もちろん、力強さでは2.0 TSIエンジンのGTIにかなわない。GTIはスポーツモードを選ぶとアイドリングから勇ましげな重低音を発し、ひとたびアクセルを踏み込めば爆音を響かせながらロケットスタートを決める。ワインディングロードでは減速時に派手な中ブカシを入れてシフトダウンしてくれるから、パドルを使わずともスポーティーな走りを楽しめた。ただし、エコモードを選ぶとエンジンもトランスミッションも格段におとなしい設定になり、まったく違う性格のクルマになる。

最高出力150ps、最大トルク250Nmを発生する「1.5 TSI Evo」ユニットを搭載する「ポロTSI Rライン」。特に最大トルクは1500-3500rpmという低回転域かつ広範囲で発生する。
最高出力150ps、最大トルク250Nmを発生する「1.5 TSI Evo」ユニットを搭載する「ポロTSI Rライン」。特に最大トルクは1500-3500rpmという低回転域かつ広範囲で発生する。
ボディーカラーが「エナジェティックオレンジメタリック」(テスト車)と「リーフブルーメタリック」の場合、インストゥルメントパネルとセンターコンソールがボディーと同色でコーディネートされる。
ボディーカラーが「エナジェティックオレンジメタリック」(テスト車)と「リーフブルーメタリック」の場合、インストゥルメントパネルとセンターコンソールがボディーと同色でコーディネートされる。
ボディーカラーやインストゥルメントパネルなどに合わせて、シートの座面と背もたれを縦断するラインもオレンジとなっている。
ボディーカラーやインストゥルメントパネルなどに合わせて、シートの座面と背もたれを縦断するラインもオレンジとなっている。
リアシートは4:6の分割可倒式。センターコンソールの後端にはUSBソケットが2つ備わる。
リアシートは4:6の分割可倒式。センターコンソールの後端にはUSBソケットが2つ備わる。

快活な走りとエコ性能を両立

足まわりには専用のスポーツサスが与えられており、「ノーマル」「スポーツ」の可変ダンピング機構も備えている。
足まわりには専用のスポーツサスが与えられており、「ノーマル」「スポーツ」の可変ダンピング機構も備えている。
ドライブモードセレクターはシフトレバーの右側にレイアウトされる。足まわりだけでなく、エンジン特性や変速プログラムなども変更可能。
ドライブモードセレクターはシフトレバーの右側にレイアウトされる。足まわりだけでなく、エンジン特性や変速プログラムなども変更可能。
気筒休止システムはエンジン回転数が1400-4000rpmの範囲内で作動する。作動時にはメーターパネル内の最上部に「eco」マークがともる。
気筒休止システムはエンジン回転数が1400-4000rpmの範囲内で作動する。作動時にはメーターパネル内の最上部に「eco」マークがともる。
エコモードではギアポジションが「E1」「E2」というように表示される。
エコモードではギアポジションが「E1」「E2」というように表示される。
Rラインにも「ドライビングプロファイル機能」が搭載されている。シフトセレクターの脇にあるスイッチで、エコ、ノーマル、スポーツ、そして好みに合わせて設定できるカスタムの4つから選択。ダンピング特性を2段階に切り替えることができ、エンジン特性、トランスミッション、ステアリングの制御プログラムも変更される。

スポーツモードを選んでも、変化はあくまで良識の範囲内だ。GTIのように大音響と強烈な加速がもたらされるわけではない。キビキビと快活に走るのは確かで、クイックなステアリングレスポンスとあいまってコーナリングが楽しい。電子制御式ディファレンシャルロックの「XDS」が装備されており、本気モードで走れば内輪に適度なブレーキをかけて回頭性を向上させる。

軽快な走りを実現した上で、エコ性能を高めているのが1.5 TSI Evoエンジンの真骨頂である。エコモードでは、気筒休止システムが作動するとともにコースティング走行が可能になる。スポーツモードが極端なパワフル仕様になっていないこともあってか、エコモードでもガマンを強いられるような気分にはならない。日常使いには十分な動力性能がある。

エコモードでは、メーターの表示も変化する。7段DSGがどのポジションに入っているかは通常「D1」「D2」といった表し方なのだが、「E1」「E2」に変わる。ドライバーはエコモードを選んでいることを常に意識するのだ。加えて、エンジンとトランスミッションの状態もメーター内に示されるようになる。

足まわりには専用のスポーツサスが与えられており、「ノーマル」「スポーツ」の可変ダンピング機構も備えている。
足まわりには専用のスポーツサスが与えられており、「ノーマル」「スポーツ」の可変ダンピング機構も備えている。
ドライブモードセレクターはシフトレバーの右側にレイアウトされる。足まわりだけでなく、エンジン特性や変速プログラムなども変更可能。
ドライブモードセレクターはシフトレバーの右側にレイアウトされる。足まわりだけでなく、エンジン特性や変速プログラムなども変更可能。
気筒休止システムはエンジン回転数が1400-4000rpmの範囲内で作動する。作動時にはメーターパネル内の最上部に「eco」マークがともる。
気筒休止システムはエンジン回転数が1400-4000rpmの範囲内で作動する。作動時にはメーターパネル内の最上部に「eco」マークがともる。
エコモードではギアポジションが「E1」「E2」というように表示される。
エコモードではギアポジションが「E1」「E2」というように表示される。

コースティングはゲーム感覚

エコモードを選択するとアクセルオフ時にコースティングするようになる。わずかな上り坂に差しかかっただけで自然に復帰するなど、その制御は見事。
エコモードを選択するとアクセルオフ時にコースティングするようになる。わずかな上り坂に差しかかっただけで自然に復帰するなど、その制御は見事。
トランスミッションは7段のデュアルクラッチ式AT「DSG」を採用。「GTI」と同様、ステアリングホイールにはシフトパドルが装着される。
トランスミッションは7段のデュアルクラッチ式AT「DSG」を採用。「GTI」と同様、ステアリングホイールにはシフトパドルが装着される。
アダプティブクルーズコントロールはセットオプション「セーフティーパッケージ」に含まれている。全車速に対応するが、「ゴルフ」などが採用する操舵支援機能は用意されていない。
アダプティブクルーズコントロールはセットオプション「セーフティーパッケージ」に含まれている。全車速に対応するが、「ゴルフ」などが採用する操舵支援機能は用意されていない。
デジタルメーターパネル「アクティブインフォディスプレイ」は、スマートフォンのワイヤレスチャージ機能とセットで「テクノロジーパッケージ」として提供される。
デジタルメーターパネル「アクティブインフォディスプレイ」は、スマートフォンのワイヤレスチャージ機能とセットで「テクノロジーパッケージ」として提供される。
気筒休止システムが作動していることは簡単には実感できないが、メーターにはっきりと文字で表示される。ある程度のスピードで巡航状態に入ると、自動的に2気筒が休止し、燃料消費とポンピングロスを軽減する仕組みだ。低速走行でも同様に作動する。気筒数が半減するのに気づかないのは情けないが、それだけうまく制御されているということなのだろう。フォルクスワーゲン初の気筒休止システムを使う1.4リッターエンジンを搭載した先代ポロの「ブルーGT」に乗った時もわからなかったから、熟成された技術なのだ。

コースティングに入るのは、アクセルをオフにした時だ。駆動力はかからず、エンジンはアイドリング状態になる。うまくコースティングを使えるようになれば、燃費向上につながるはずである。気筒休止とコースティングをボタンなどで選ぶことはできないので、使いこなすには経験が必要だ。作動する条件を体で覚えてしまえば、自在にエコ運転をすることができる。スキルを磨くのはゲーム感覚もあって楽しい作業だ。

TSIハイラインは先代の1.2リッターから1リッターにダウンしていて、GTIは逆に1.8リッターから2リッターにアップ。排気量がちょうど2倍、最高出力は2倍以上になってしまったのだから、間を埋めるモデルが必要だったのは当然である。最初に述べたように、真ん中に位置するRラインはやはりベストバランスのモデルだった。なんとも予定調和のつまらない結論だが、仕方がない。

先代ポロのキャラクターなら、アンダーパワーのエンジンをぶん回して振動など気にしないで乗るのもアリだったと思う。しかし、MQBの骨格を手に入れた6代目ポロは、洗練を身につけた大人だ。エコと走りを両立させて節度のあるマナーをまとうべきなのだろう。真ん中のRラインは万人にオススメできる。平凡とか普通ということではなく、中庸の徳を備え中道の境地に達しているというポジティブな意味なのである。

(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)

エコモードを選択するとアクセルオフ時にコースティングするようになる。わずかな上り坂に差しかかっただけで自然に復帰するなど、その制御は見事。
エコモードを選択するとアクセルオフ時にコースティングするようになる。わずかな上り坂に差しかかっただけで自然に復帰するなど、その制御は見事。
トランスミッションは7段のデュアルクラッチ式AT「DSG」を採用。「GTI」と同様、ステアリングホイールにはシフトパドルが装着される。
トランスミッションは7段のデュアルクラッチ式AT「DSG」を採用。「GTI」と同様、ステアリングホイールにはシフトパドルが装着される。
アダプティブクルーズコントロールはセットオプション「セーフティーパッケージ」に含まれている。全車速に対応するが、「ゴルフ」などが採用する操舵支援機能は用意されていない。
アダプティブクルーズコントロールはセットオプション「セーフティーパッケージ」に含まれている。全車速に対応するが、「ゴルフ」などが採用する操舵支援機能は用意されていない。
デジタルメーターパネル「アクティブインフォディスプレイ」は、スマートフォンのワイヤレスチャージ機能とセットで「テクノロジーパッケージ」として提供される。
デジタルメーターパネル「アクティブインフォディスプレイ」は、スマートフォンのワイヤレスチャージ機能とセットで「テクノロジーパッケージ」として提供される。

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