【試乗記】ダイハツ・タントカスタムRS(FF/CVT)/タントX(FF/CVT)
- ダイハツ・タントカスタムRS(FF/CVT)/タントX(FF/CVT)
時代とともに 人とともに
軽スーパーハイトワゴンの元祖「ダイハツ・タント」が4代目にフルモデルチェンジ。DNGA世代の新プラットフォームや充実した運転支援システム、機能性を高めたシートアレンジなど、大幅な進化を遂げた新型の出来栄えを確かめた。
出来のいいDNGAプラットフォーム
話題が盛り沢山なニューモデルである。新型ダイハツ・タントには、3つのアピール要素がある。「ミラクルウォークスルーパッケージ」による使い勝手のよさ、全車速対応ACC(アダプティブクルーズコントロール)を含む先進運転支援技術の次世代「スマートアシスト」、「DNGA(Daihatsu New Global Architecture)」による新開発のプラットフォームだ。
この3つに優先順位はなく、どれもが重要なセリングポイントだというが、最も革新的なのは新世代に向けたダイハツのクルマづくりを定めたDNGAだろう。トヨタのTNGAと同様に、自動車メーカーとしてのフィロソフィーを意味する言葉なのだ。開発や製造、調達、さらには事業計画まで含めた新たな戦略で、そこから生まれたのがタントで初採用されたプラットフォームである。
高張力鋼板の活用などにより曲げ剛性が約30%向上し、ボディー骨格全体で約40%の軽量化を実現したという。このシャシーがとてもいい。ちょっとしたワインディングロードを走ってみたのだが、タイトなコーナーをほとんどロールもなくきれいな軌跡を描いてクリアする。プロトタイプをサーキットで試乗していたので出来のよさは知っていたのだが、あらためて実感した。これだけしっかりしたシャシーなら、NAとターボの2種類あるパワートレインのうちターボを選ばなければもったいない気がする。
このプラットフォームは、いずれ「ミラ」系、「ムーヴ」系のモデルにも使われることになるはずだ。タントが初となったのは、「軽自動車のど真ん中に位置するモデルだから」なのだそうだ。スーパーハイトワゴンは、今や軽自動車の主流になっている。2003年に誕生した初代タントが切り開いたジャンルだが、現在は「ホンダN-BOX」にすっかりお株を奪われてしまった。元祖としては負けられないという気持ちが強いだろう。
この3つに優先順位はなく、どれもが重要なセリングポイントだというが、最も革新的なのは新世代に向けたダイハツのクルマづくりを定めたDNGAだろう。トヨタのTNGAと同様に、自動車メーカーとしてのフィロソフィーを意味する言葉なのだ。開発や製造、調達、さらには事業計画まで含めた新たな戦略で、そこから生まれたのがタントで初採用されたプラットフォームである。
高張力鋼板の活用などにより曲げ剛性が約30%向上し、ボディー骨格全体で約40%の軽量化を実現したという。このシャシーがとてもいい。ちょっとしたワインディングロードを走ってみたのだが、タイトなコーナーをほとんどロールもなくきれいな軌跡を描いてクリアする。プロトタイプをサーキットで試乗していたので出来のよさは知っていたのだが、あらためて実感した。これだけしっかりしたシャシーなら、NAとターボの2種類あるパワートレインのうちターボを選ばなければもったいない気がする。
このプラットフォームは、いずれ「ミラ」系、「ムーヴ」系のモデルにも使われることになるはずだ。タントが初となったのは、「軽自動車のど真ん中に位置するモデルだから」なのだそうだ。スーパーハイトワゴンは、今や軽自動車の主流になっている。2003年に誕生した初代タントが切り開いたジャンルだが、現在は「ホンダN-BOX」にすっかりお株を奪われてしまった。元祖としては負けられないという気持ちが強いだろう。
安全設計のロングスライド機構
2007年の2代目から採用されているのが「ミラクルオープンドア」である。助手席側のピラーをドアに内蔵することによって大開口を実現し、乗降性を飛躍的に高めた。この構造を生かしてさらに利便性を追求したのがミラクルウォークスルーパッケージだ。運転席を最大540mmスライドさせることで、シートアレンジの可能性が大幅に広がる。一番後ろに下げてしまえば、助手席側のスライドドアから運転席に乗り込むのもラクラクだ。後席のチャイルドシートにも座ったまま手を伸ばせるので、小さい子供のいる家庭にはありがたい装備になる。
運転席からも後席からも操作できるようになっていて、いずれもスイッチを押してからレバーを使ってスライドさせる。誤操作への対策も練られていて、クルマが動く状態では使用できないよう、シフトをPレンジに入れないとロックされてしまう仕組みとなっている。考えてみれば当然だ。運転中にいきなり最後部まで下がってしまうようなことがあれば大変なことになる。安全第一で設計されているのだ。
もうひとつのアピール要素となるACCは、今回は高速道路を走れなかったので使っていない。プロトタイプの試乗ではサーキットでACCを少しだけ試している。反応は少し遅めだったが、スムーズに前車を追尾して確実に停止した。止まってから2秒以内に前車が動き出せば、勝手に追尾を再開する。渋滞時の疲労軽減に役立つだろう。
ACCで先行していたのはホンダである。N-BOXはもちろん「N-VAN」にも「ホンダセンシング」が採用されていて、ACCも使うことができる。とてもよくできたシステムだが、惜しむらくは全車速対応ではなかった。日産・三菱連合が「プロパイロット/マイパイロット」で全車速追従を打ち出してきて、ホンダも新型「N-WGN」では同様の機能を搭載した。ダイハツとしても、この分野で負けるわけにはいかなかったのだ。
運転席からも後席からも操作できるようになっていて、いずれもスイッチを押してからレバーを使ってスライドさせる。誤操作への対策も練られていて、クルマが動く状態では使用できないよう、シフトをPレンジに入れないとロックされてしまう仕組みとなっている。考えてみれば当然だ。運転中にいきなり最後部まで下がってしまうようなことがあれば大変なことになる。安全第一で設計されているのだ。
もうひとつのアピール要素となるACCは、今回は高速道路を走れなかったので使っていない。プロトタイプの試乗ではサーキットでACCを少しだけ試している。反応は少し遅めだったが、スムーズに前車を追尾して確実に停止した。止まってから2秒以内に前車が動き出せば、勝手に追尾を再開する。渋滞時の疲労軽減に役立つだろう。
ACCで先行していたのはホンダである。N-BOXはもちろん「N-VAN」にも「ホンダセンシング」が採用されていて、ACCも使うことができる。とてもよくできたシステムだが、惜しむらくは全車速対応ではなかった。日産・三菱連合が「プロパイロット/マイパイロット」で全車速追従を打ち出してきて、ホンダも新型「N-WGN」では同様の機能を搭載した。ダイハツとしても、この分野で負けるわけにはいかなかったのだ。
ブレない“カスタム顔”
- 「カスタム」に標準装備されるアダプティブドライビングビーム機能付きヘッドランプ。複数のLED光源を個別に点消灯して照射範囲をコントロール。前走車や対向車を眩惑(げんわく)させることなく、広い照射範囲を実現している。
- パワースライドドアの利便性も向上しており、クローズ時に自動で施錠する「タッチ&ゴーロック機能」や、カードキーを持ってクルマに近づくだけでドアが解錠、オープンする「ウェルカムオープン機能」などが採用されている。
ACCは便利機能だが、先進安全技術全体を見れば衝突回避支援ブレーキや誤発進抑制機能などの予防安全機能も重要だ。軽自動車でもこういった装備が当たり前のものになってきた。新型タントには軽自動車初のADB(アダプティブドライビングビーム)も採用されている。ハイビームで走行中に対向車を検知すると自動で部分的に消灯する装備で、ちょっと前はよほどの高級車にしか採用されていなかった。安全装備の民主化は恐ろしい勢いで進んでいる。
ただ、ACCについては、まだユーザーに広く認知されるには至っていないのだという。便利なのは間違いないが、知られていなければ購入動機にはならない。DNGAはもっと知られていないだろうから、3つの要素の中で最もアピール力が高いのは、おそらくミラクルウォークスルーパッケージなのだ。ミラクルオープンドア、両側スライドドアと、タントは使い勝手のよさを進化させることで人気車種の地位を保ってきた。
そういう意味では、駐車支援システムの「スマートパノラマパーキングアシスト」も高得点である。「パノラマモニター」を利用したシステムで、ステアリング操作を自動で行ってくれる。シフトとブレーキの操作は自分で行わなければならないが、シンプルな仕組みだから直感的に使える。“自動”をうたっているのに自分で修正しなければ使えないシステムも多いなかで、この割り切った簡便さは誠実なソリューションだと思う。
従来どおりボディーデザインは2タイプが用意される。標準モデルとカスタムモデルだ。三菱が「eKクロス」でSUVライクなフォルムを採用し、ホンダN-WGNが無機質で未来的なフロントマスクをまとっている中で、あくまで王道を行く。カスタム顔の起源が「ムーヴ」にあるのだから、ダイハツとすればブレることはできない。キープコンセプトであるのは間違いないが、先代と比べるとゴテゴテ感が薄くなっていることがわかる。
ただ、ACCについては、まだユーザーに広く認知されるには至っていないのだという。便利なのは間違いないが、知られていなければ購入動機にはならない。DNGAはもっと知られていないだろうから、3つの要素の中で最もアピール力が高いのは、おそらくミラクルウォークスルーパッケージなのだ。ミラクルオープンドア、両側スライドドアと、タントは使い勝手のよさを進化させることで人気車種の地位を保ってきた。
そういう意味では、駐車支援システムの「スマートパノラマパーキングアシスト」も高得点である。「パノラマモニター」を利用したシステムで、ステアリング操作を自動で行ってくれる。シフトとブレーキの操作は自分で行わなければならないが、シンプルな仕組みだから直感的に使える。“自動”をうたっているのに自分で修正しなければ使えないシステムも多いなかで、この割り切った簡便さは誠実なソリューションだと思う。
従来どおりボディーデザインは2タイプが用意される。標準モデルとカスタムモデルだ。三菱が「eKクロス」でSUVライクなフォルムを採用し、ホンダN-WGNが無機質で未来的なフロントマスクをまとっている中で、あくまで王道を行く。カスタム顔の起源が「ムーヴ」にあるのだから、ダイハツとすればブレることはできない。キープコンセプトであるのは間違いないが、先代と比べるとゴテゴテ感が薄くなっていることがわかる。
- 「カスタム」に標準装備されるアダプティブドライビングビーム機能付きヘッドランプ。複数のLED光源を個別に点消灯して照射範囲をコントロール。前走車や対向車を眩惑(げんわく)させることなく、広い照射範囲を実現している。
- パワースライドドアの利便性も向上しており、クローズ時に自動で施錠する「タッチ&ゴーロック機能」や、カードキーを持ってクルマに近づくだけでドアが解錠、オープンする「ウェルカムオープン機能」などが採用されている。
シルバー需要に対応したラインナップ
ダイハツとしては、長らく人気を保ってきたいかつい顔つきが、そろそろ飽きられてきているという判断らしい。トヨタのミニバン群がメッキで飾り立てているのを見ればそういう傾向が失われたのではないことがわかるが、誰もがオラオラ系を好むわけでもない。基本はシンプルめな作りにして、デコラティブなディテールを好む層には用品で対応するということだ。
さらに、タントのターゲットが広がってきていることも影響している。広くて便利なハイトワゴンは子育てファミリーから圧倒的な支持を得てきたが、最近ではシルバー需要も増えているのだ。若い夫婦にとって使い勝手がよければ、お年寄りにも優しいクルマになるだろう。あまりにギラギラした見た目では、シルバー層に敬遠されてしまう可能性がある。
タントと同時に、福祉車両の「タント スローパー」と「タント ウェルカムシートリフト」もフルモデルチェンジされる。背が高くて室内空間の広いスーパーハイトワゴンは、車いすや要介護者の乗降に対応しやすいのだ。助手席を回転シートにした「タント ウェルカムターンシート」も新設定される。
さらに、通常のタント/タントカスタムにもオプションで新装備が用意される。助手席やシートバックに取り付けられる大型グリップの「ラクスマグリップ」と、ミラクルオープンドア開口部の下から出現する「ミラクルオートステップ」の2つだ。いずれもディーラーオプションで、手軽にオーダーできる。福祉車両までは必要がないフレイル高齢者や軽度の要介護者にとってはうれしい選択肢だ。
ACCやロングスライドなどのわかりやすいアピールポイントだけでなく、時代の流れに沿ったきめ細やかな配慮がなされている。タントが長きにわたって人気モデルであり続けているのは、こうした真摯な努力のおかげなのだ。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
さらに、タントのターゲットが広がってきていることも影響している。広くて便利なハイトワゴンは子育てファミリーから圧倒的な支持を得てきたが、最近ではシルバー需要も増えているのだ。若い夫婦にとって使い勝手がよければ、お年寄りにも優しいクルマになるだろう。あまりにギラギラした見た目では、シルバー層に敬遠されてしまう可能性がある。
タントと同時に、福祉車両の「タント スローパー」と「タント ウェルカムシートリフト」もフルモデルチェンジされる。背が高くて室内空間の広いスーパーハイトワゴンは、車いすや要介護者の乗降に対応しやすいのだ。助手席を回転シートにした「タント ウェルカムターンシート」も新設定される。
さらに、通常のタント/タントカスタムにもオプションで新装備が用意される。助手席やシートバックに取り付けられる大型グリップの「ラクスマグリップ」と、ミラクルオープンドア開口部の下から出現する「ミラクルオートステップ」の2つだ。いずれもディーラーオプションで、手軽にオーダーできる。福祉車両までは必要がないフレイル高齢者や軽度の要介護者にとってはうれしい選択肢だ。
ACCやロングスライドなどのわかりやすいアピールポイントだけでなく、時代の流れに沿ったきめ細やかな配慮がなされている。タントが長きにわたって人気モデルであり続けているのは、こうした真摯な努力のおかげなのだ。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
あわせて読みたい「ダイハツ車」関連記事
最新ニュース
-
-
メルセデスベンツ『CLA』次期型、新開発の48Vハイブリッドも設定へ
2024.12.05
-
-
-
もてぎで愛車とサーキット走行、自然体験も「JAFデー」12月15日、21日開催へ
2024.12.05
-
-
-
トヨタ、認知症患者の自由な移動を支援するデバイス「ツギココ」開発中
2024.12.05
-
-
-
「ZR-Vより好み」アキュラの新型SUV『ADX』のデザインにSNSは高評価
2024.12.04
-
-
-
「自分で燃料電池を作る」トヨタ、小学生向け水素ワークショップを12月8日開催へ
2024.12.04
-
-
-
「オタク心をくすぐる!」スバル『WRX』の高性能グレード、SNSでは国内導入を求める声も
2024.12.04
-
-
-
トヨタ『ヤリス』、「GR SPORT」のスポーツ度がアップ…2025年型を欧州発表
2024.12.03
-
最新ニュース
MORIZO on the Road