【試乗記】テスラ・モデル3パフォーマンス(4WD)
- テスラ・モデル3パフォーマンス(4WD)
シンプルなのにワンダフル
EV専業メーカーのテスラが開発した、新たな4ドアセダン「モデル3」。ほかのテスラ車に比べて手の届きやすい価格設定だが、その走りや使い勝手はどうか? パワーとスタミナが自慢の最上級グレードで確かめた。
部長の椅子ってこんな感じ?
「まるで、いまどきの会社のオフィスのようだな」
話題のアフォーダブルテスラ、モデル3。その車内に腰を下ろして、最初に筆者が抱いた印象だ。自分はフリーランスだけれど、もし勤め先の会社にこのクルマで行くとしたら、「これからオフィスへ向かうのに“オフィスのようなクルマ”でというのはどうなのかしら?」と、少し不思議な気持ちになった。そのくらいモデル3のインテリアは“すっからかん”である。
水平基調のインパネは上部がブラックで、ダッシュボード中央のパネルが木目のシルバートリム。非常にクリーンな印象だが、あまりに簡素で事務机的ともいえる。オフィスライクな雰囲気を最も強く印象づけるのは、中央にドーンと鎮座する15インチのモニターだ。これも朝からいきなり仕事感を演出してくれる。ここにスタバのコーヒーでもあれば、会社に着く前から仕事スイッチが入るかもしれない。
ちなみにテスラ車は、このモニターを介してほとんどの操作をこなすため、インパネにはスイッチ類がほとんどない。あるのはステアリングコラム右のシフトレバー(アダプティブクルーズコントロール連動)と左のウインカーレバー、ステアリングホイールのスポーク部に付いた、2つのダイヤルくらいだ。だから一見すると最廉価版グレードに乗っているような気分になるのだが、今回試乗するのは最もハイパワーな「パフォーマンス」なのであった。
そんなシンプルさはモデル3最大の特徴だと思うが、シートはとても座り心地がよかった。体が触れるクッション部分はふっかりとしていて、サイドサポートのおかげでホールド性もきちんとある。このラグジュアリーさ強めのスポーツ感は独特で、まるで「部長の椅子」に座っているかのような気分になる。あ、やっぱりこのクルマは“オフィス”なんだな。
話題のアフォーダブルテスラ、モデル3。その車内に腰を下ろして、最初に筆者が抱いた印象だ。自分はフリーランスだけれど、もし勤め先の会社にこのクルマで行くとしたら、「これからオフィスへ向かうのに“オフィスのようなクルマ”でというのはどうなのかしら?」と、少し不思議な気持ちになった。そのくらいモデル3のインテリアは“すっからかん”である。
水平基調のインパネは上部がブラックで、ダッシュボード中央のパネルが木目のシルバートリム。非常にクリーンな印象だが、あまりに簡素で事務机的ともいえる。オフィスライクな雰囲気を最も強く印象づけるのは、中央にドーンと鎮座する15インチのモニターだ。これも朝からいきなり仕事感を演出してくれる。ここにスタバのコーヒーでもあれば、会社に着く前から仕事スイッチが入るかもしれない。
ちなみにテスラ車は、このモニターを介してほとんどの操作をこなすため、インパネにはスイッチ類がほとんどない。あるのはステアリングコラム右のシフトレバー(アダプティブクルーズコントロール連動)と左のウインカーレバー、ステアリングホイールのスポーク部に付いた、2つのダイヤルくらいだ。だから一見すると最廉価版グレードに乗っているような気分になるのだが、今回試乗するのは最もハイパワーな「パフォーマンス」なのであった。
そんなシンプルさはモデル3最大の特徴だと思うが、シートはとても座り心地がよかった。体が触れるクッション部分はふっかりとしていて、サイドサポートのおかげでホールド性もきちんとある。このラグジュアリーさ強めのスポーツ感は独特で、まるで「部長の椅子」に座っているかのような気分になる。あ、やっぱりこのクルマは“オフィス”なんだな。
慣れるほどに面白い
試乗車の走行性能を紹介すると、動力系は前後に2つのモーターを配置する4WD。テスラは全モデルにおいてそのシステム出力を明示していないが、0-100km/h加速はなんと3.4秒! と、もはやガソリンターボのDセグ高性能セダンを上回るスペックを得ている。
しかし普段の走りには、この力を誇示するようなイケイケ感はまったくない。内外装のシンプルさと同じで、その身のこなしまでもが至ってクールなのは、ちょっとすてきだった。サスペンションは上級セダンの「モデルS」とは違い、エアサスではなくオーソドックスなスプリング&ダンパーの組み合わせだが、20インチのスポーツタイヤを履く割に乗り心地はフラット。そしてステアリングを切れば、思った以上にすなおにクルマが曲がる。
その理由は、ピュアEV定番のアーキテクチャーによるもの。フロントにエンジンを積まないノーズの軽さや、バッテリーを床下に敷き詰める重心の低さが生み出す身のこなしだ。例えば「日産リーフ」はFFの従来型ガソリン車から乗り換えても違和感が出ないように、あえてそのハンドリングレスポンスをスローに取っているけれど、テスラ・モデル3は、このクルマならではの特性をまったく消そうとしていない。
だから最初は「曲がり過ぎる」と戸惑うほどだけれど、体がこの動きに慣れてくると自由自在になる感覚がグッと高まっていく。ハンドルを切ればすなおに曲がり、アクセルペダルを踏めばリニアにモーターパワーが立ち上がる。街中ではコンフォートモードを選んでおけば初期トルクは適度に絞られて、アクセルを不意に踏みこんでものけぞるようなこともない。慣れるほどに運転が面白くなり、クルマのキャラクターや特性を理解するほどに愛着のようなものが湧いてくるのはちょっと意外だった。
しかし普段の走りには、この力を誇示するようなイケイケ感はまったくない。内外装のシンプルさと同じで、その身のこなしまでもが至ってクールなのは、ちょっとすてきだった。サスペンションは上級セダンの「モデルS」とは違い、エアサスではなくオーソドックスなスプリング&ダンパーの組み合わせだが、20インチのスポーツタイヤを履く割に乗り心地はフラット。そしてステアリングを切れば、思った以上にすなおにクルマが曲がる。
その理由は、ピュアEV定番のアーキテクチャーによるもの。フロントにエンジンを積まないノーズの軽さや、バッテリーを床下に敷き詰める重心の低さが生み出す身のこなしだ。例えば「日産リーフ」はFFの従来型ガソリン車から乗り換えても違和感が出ないように、あえてそのハンドリングレスポンスをスローに取っているけれど、テスラ・モデル3は、このクルマならではの特性をまったく消そうとしていない。
だから最初は「曲がり過ぎる」と戸惑うほどだけれど、体がこの動きに慣れてくると自由自在になる感覚がグッと高まっていく。ハンドルを切ればすなおに曲がり、アクセルペダルを踏めばリニアにモーターパワーが立ち上がる。街中ではコンフォートモードを選んでおけば初期トルクは適度に絞られて、アクセルを不意に踏みこんでものけぞるようなこともない。慣れるほどに運転が面白くなり、クルマのキャラクターや特性を理解するほどに愛着のようなものが湧いてくるのはちょっと意外だった。
つくり慣れてる感じがする
モデル3に好感を持つようになったのには、その走りだけでなくルックスも大きく関係している。正面から見るとちょっと怒り顔のようだが、見つめているうちに、カワウソのような愛嬌(あいきょう)がある表情がかわいらしく思えてくる。低く構えたノーズとは対照的にキャビンがぴょこんと盛り上がり、“チョロQ感”が強調されている。モデルSのような威圧感がないだけに、モデル3は身近に感じられるのである。
それでいてまともに走らせると、その走りは本格スポーツカー並みの運動性能を発揮するから面食らう。スポーツモードでそのパワーを解き放つ。怒濤(どとう)の加速でうなりを上げるのは、モーターの作動音やインバーターの高周波ノイズだ。ブレーキのタッチは回生ブレーキの影響でややダイレクト感に乏しいが、減速はきちんとできる。こうしたフィーリングは、あと10年もすれば普通になっていくのだろうか?
減速を終えてステアリングを切っていくと、重量配分のよさが感じ取れる。カーブでは4つのタイヤに荷重が掛かり、これが路面をしっかり捉えてから、コーナリングスピードが高くても安心感がある。旋回を終えて加速体勢に移ると、タイムラグなしに前後方向へとGが変換される。この一連の動きにまったく段付き感がないのは、極めて理想的というほかない。これで車両重量が軽ければ、まさに言うことナシである。この動きは何かに似ている。なんだろう? としばし考えて浮かんだのは、ラジコンだった。
一方で、テスラといえば運転支援も気になるところ。何より、どんなクルマよりもアダプティブクルーズコントロール(ACC)が素早く行えるのは“らしさ”のひとつだと思った。操作はカンタン、シフトレバーを2回下にクリックするだけでアクティベート。そのあまりのイージーさに戸惑いながらも、やはり便利だと感心する。車間距離や車速の調整は、ステアリングホイールのローラーダイヤルで行う。BMWや日産に先を越されたのは意外だが、「ハンズオフ」機能はなし。
周囲の車両をアニメで示す(たまに軽トラを大型トラックと間違う)モニターアニメーションはかわいかったが、360度監視するカメラや160m前方を捉えるレーダー、超音波センサーによるモニタリングの精度は高く、今回、直線主体で緩いカーブが続く東名高速では、リラックスしながらコーヒーを飲みつつ運転する「優雅な朝の時間」を楽しむことができた。先進性に慢心さえしなければ、ACCはやはり便利で大いに魅力的だと実感する。
それでいてまともに走らせると、その走りは本格スポーツカー並みの運動性能を発揮するから面食らう。スポーツモードでそのパワーを解き放つ。怒濤(どとう)の加速でうなりを上げるのは、モーターの作動音やインバーターの高周波ノイズだ。ブレーキのタッチは回生ブレーキの影響でややダイレクト感に乏しいが、減速はきちんとできる。こうしたフィーリングは、あと10年もすれば普通になっていくのだろうか?
減速を終えてステアリングを切っていくと、重量配分のよさが感じ取れる。カーブでは4つのタイヤに荷重が掛かり、これが路面をしっかり捉えてから、コーナリングスピードが高くても安心感がある。旋回を終えて加速体勢に移ると、タイムラグなしに前後方向へとGが変換される。この一連の動きにまったく段付き感がないのは、極めて理想的というほかない。これで車両重量が軽ければ、まさに言うことナシである。この動きは何かに似ている。なんだろう? としばし考えて浮かんだのは、ラジコンだった。
一方で、テスラといえば運転支援も気になるところ。何より、どんなクルマよりもアダプティブクルーズコントロール(ACC)が素早く行えるのは“らしさ”のひとつだと思った。操作はカンタン、シフトレバーを2回下にクリックするだけでアクティベート。そのあまりのイージーさに戸惑いながらも、やはり便利だと感心する。車間距離や車速の調整は、ステアリングホイールのローラーダイヤルで行う。BMWや日産に先を越されたのは意外だが、「ハンズオフ」機能はなし。
周囲の車両をアニメで示す(たまに軽トラを大型トラックと間違う)モニターアニメーションはかわいかったが、360度監視するカメラや160m前方を捉えるレーダー、超音波センサーによるモニタリングの精度は高く、今回、直線主体で緩いカーブが続く東名高速では、リラックスしながらコーヒーを飲みつつ運転する「優雅な朝の時間」を楽しむことができた。先進性に慢心さえしなければ、ACCはやはり便利で大いに魅力的だと実感する。
スタミナと操作には要注意
いい気分で走っていると、バッテリーは結構減っていた。東京を出発するときにモニターに表示されていた航続可能距離は、ほぼ満充電状態で468km。そして243.6km走った残りの航続可能距離は、なんとたったの80kmだった。合わせて323.6kmというのは、もとの468kmの7割にも満たない。箱根のワインディングを“たったの1往復”したことや、エアコンを効かせながらちょこまかと街中を散策したとはいえ、これはちょっと少ない気がする。
ともかく出発点の東京まで安心して帰ることを考えるとやはり充電は必要だということで、神奈川の大磯プリンスホテルに立ち寄り、急速充電を小一時間ほどして帰路につくことにした。ちなみにこの時点での消費電力は54kWhで、電費は22.1kWh/100km(約4.5km/kWh)だった。
スイッチ類の多くをタッチパネル内に集約し、モニター以外に何にもないインテリアをつくったのはひとつのインパクトだ。しかし空調や各種のモード切り替え、サイドミラーの調節といった、運転中に微調整をしたくなる部分までもタッチパネル化したことによる操作性の悪さまで「先進性」という言葉で評価することはできない。ここは先進性よりもむしろ、つくり手のコスト削減の意図が強く感じられるところであり、早期に改善してほしいと思う。
しかしながら、こうしたシンプルさはピュアEVが持つクルマとしての素性のよさとリンクしていて、モデル3の魅力となっていることも事実。かわいくないのはその717万円という価格だけだと思う。
そういう意味では、バッテリー容量が少なくなってしまうのは残念だけれど、1モーター+リアドライブのベーシックモデル「スタンダードレンジ プラス」(511万円)の方が、モデル3本来のキャラクターに忠実なのではないかと思う。
(文=山田弘樹/写真=田村 弥/編集=関 顕也)
ともかく出発点の東京まで安心して帰ることを考えるとやはり充電は必要だということで、神奈川の大磯プリンスホテルに立ち寄り、急速充電を小一時間ほどして帰路につくことにした。ちなみにこの時点での消費電力は54kWhで、電費は22.1kWh/100km(約4.5km/kWh)だった。
スイッチ類の多くをタッチパネル内に集約し、モニター以外に何にもないインテリアをつくったのはひとつのインパクトだ。しかし空調や各種のモード切り替え、サイドミラーの調節といった、運転中に微調整をしたくなる部分までもタッチパネル化したことによる操作性の悪さまで「先進性」という言葉で評価することはできない。ここは先進性よりもむしろ、つくり手のコスト削減の意図が強く感じられるところであり、早期に改善してほしいと思う。
しかしながら、こうしたシンプルさはピュアEVが持つクルマとしての素性のよさとリンクしていて、モデル3の魅力となっていることも事実。かわいくないのはその717万円という価格だけだと思う。
そういう意味では、バッテリー容量が少なくなってしまうのは残念だけれど、1モーター+リアドライブのベーシックモデル「スタンダードレンジ プラス」(511万円)の方が、モデル3本来のキャラクターに忠実なのではないかと思う。
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