【試乗記】マツダ2 XDホワイトコンフォート(FF/6AT)
プレミアムコンパクトと呼びたい
俺のマツダ
そんなアテンザが、日本でも2019年からマツダ6に変わり、それと前後して「アクセラ」が「マツダ3」に、デミオがマツダ2に変わったのは皆さんもご存じだろう。“マツダブランドを鮮明化する”という大義のもと、車名が変更されたこの3台だが、気がつけば英数字を並べた名前でないのは、乗用車では「ロードスター」だけになってしまった。
1996年から2019年まで23年続いたデミオの名前が消滅したのは寂しいが、その一方で、バッジが替えられたアテンザのように、海外の名前に憧れる気持ちもわかる気がする。
ちなみに、マツダの公式サイトの「よくあるお問い合わせFAQ」で見つけた名前の由来によれば、デミオは「私の〜」という意味を表すスペイン語からの造語で、英語の「of mine」にあたるものだという。ということは、マツダ・デミオは“俺のマツダ”ということになり、その由来を知ると、慣れ親しんだ日本名を捨てたのが、とても惜しまれる。
デミオとは何が違う?
ということで、今回の試乗は、資料片手にデミオとマツダ2の違いをチェックするところから始めてみた。早速プレスリリースを見ると、「エクステリアデザインは、見る人の心を動かすエレガントさを目指しました。余計な要素をそぎ落とし、研ぎ澄ますことでシンプルかつ豊かさのある彫りの深い造形を創り出し、路上で見かけたときの新鮮さと存在感を高めています」とあるが、正直なところこれでは違いがわからない。そこで別の資料を見ると、デミオとマツダ2を見分けるポイントが見つかった。
最新のマツダデザインでは、ラジエーターグリルの下からヘッドラインにつながる翼のようなラインを「シグネチャーウイング」と呼んで、フロントマスクの特徴としているのだが、マツダ2ではこのシグネチャーウイングを端まで伸ばし、フロントバンパー下部の水平なメッキのバーとともに、ワイド感を強調。さらに、メッシュパターンのラジエーターグリルにスタッド(飾りびょう)を配置している。
また、フロントバンパー脇のフォグランプが姿を消したのもマツダ2の特徴で、このあたりを押さえておけば、もしもマニアなオーナーによってバッジが交換されていたとしても、デミオとマツダ2を間違えることはないはずだ。
上質な雰囲気の仕立て
グレード名につながる白のレザーを用いたシートは、表皮に張りがあり、適度なサポートによりしっかりと体を支えてくれる。パワーシートはシートポジションの微調整が利くのもうれしいところだ。このシートに加えて、グレーのソフト素材にベージュのステッチで仕上げたダッシュボードなど、上質な雰囲気に仕立て上げられているのもこのクルマの特徴だ。
一方、中央部に大きなアナログのエンジン回転計を配し、その中にデジタルの速度計を埋め込んだメーターや、すっきりとしたデザインのセンタークラスターなど、シンプルなデザインにも好感が持てる。液晶メーター全盛のいまだからこそ、妙に落ち着くコックピットである。
さて、このクルマには、1.5リッター直列4気筒ディーゼルターボエンジンが搭載される。最高出力105PS、最大トルク250N・m(25.5kgf・m)を発生する「スカイアクティブD 1.5」エンジンには、6段ATが組み合わされ、前輪を駆動。車両重量は1150kgと軽いだけに、スペックを見ただけでも、活発に走ることは容易に予想できる。
ヨーロッパ車のような仕上がり
ディーゼルエンジンだけに、加速時はそれなりにエンジンからのノイズは高まるが、振動はよく抑えられており、また、アイドリングも比較的静かだ。
乗り心地はやや硬めで、目地段差などを通過したときのショックが気になることもあるが、走行時の安定感は高い。剛性感あるボディーのおかげで、コンパクトなサイズながら守られているという感覚が強いのも印象的だ。特筆すべきは、弱アンダーステアのハンドリングで、ドライバーの意図したとおりにクルマが向きを変え、ドライブを楽しくしてくれる。
派手な演出こそないが、シンプルなデザインと上質な仕上がり、そして、自然な走りを手に入れたマツダ2。日本車離れしたクルマが好みなら、グローバルな名前を含めて、すんなりと受け入れられそうなコンパクトカーである。
(文=生方 聡/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
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