【試乗記】トヨタ・ハリアー ハイブリッドZ“レザーパッケージ”(FF/CVT)

  • トヨタ・ハリアー ハイブリッドZ“レザーパッケージ”(FF/CVT)

    トヨタ・ハリアー ハイブリッドZ“レザーパッケージ”(FF/CVT)

刺激よりも安心感

発売1カ月後の受注台数が、月販目標の3100台を大きく上回る4万5000台に達したというトヨタの新型SUV「ハリアー」。その人気の秘密を探るべく、最上級グレード「ハイブリッドZ“レザーパッケージ”」を郊外に連れ出した。

クリーンで洗練されている

遠目に見るとブラックアウトされた6ライト風のサイドウィンドウグラフィックがクールで流麗だ。クーペのように寝かされたCピラーに向かってシュッと後端がとがったクオーターウィンドウの処理はまるでレクサスのようだ。

もっとも、近づいてよく見ると、ウィンドウフレームはレクサスほどにはフラッシュサーフェス化されてはいない。その代わりというわけではないだろうが、リアフェンダーとコンビネーションライトまわりは大胆に抑揚がついた立体的な造形だ。これはずいぶんと手間暇が、ということはコストがかかっているようだ。

インテリアも同様、クリーンですっきり洗練された仕立てである。メーターパネル中央の情報表示を除けば、ちまちまとした煩雑さは感じない。トヨタ車にしては珍しく、できるだけスイッチ類の数を抑えて整理整頓が行き届いた雰囲気だ。

ただしその分、せっかくのブラウンのレザートリムなのに、華やかというほどではなく、ちょっと地味というかビジネスライクな雰囲気もある。よくよく見れば意外に安っぽい素材を使っているなという部分もあるのだが、全体としては“いいもの感”を漂わせながら、レクサスよりは一歩引いて順列を守るというか、コスト管理が徹底しているというか、こういうところはさすがの手腕を見せる。

と眺めまわしていたら、ドアの内張りに歴代ハリアーのトレードマークだったタカの仲間になる“チュウヒ”のエンブレムが型押しされているのを見つけた。いささか取って付けた感があるが、ハリアーを乗り継ぐお客さまを忘れてはいないとの主張だろうか。

今やトヨタのメインストリーマー

自粛ムードの真っただ中の2020年6月に発売された新型ハリアーだが、その直後のおよそ1カ月間で4万5000台もの受注という大人気ぶりが話題になった。いまだ不安感に包まれた世の中で誠に景気の良い話である。

低く抑えた計画台数の何倍というような大きく“盛った”数字をアピールしているのではないようで、実際、路上でも見かける機会が増えた(ハリアーの月販目標は3100台という)。

ハリアーの場合は既存オーナーも多く、また同年5月から本格的にディーラーごとの専売制が撤廃されたから(トヨタ系全ネットワークで取り扱う)、トヨタにしてみれば、これぐらいは内心期待通りというところではないだろうか。ちなみにグリルから例のチュウヒのエンブレムが消えたのもこれが理由である。

ラインナップの整理が進んだ結果、「マークX」のようなアッパーミドルクラスのモデルが姿を消し、今では「カムリ」の次は「クラウン」ぐらい。その穴を埋めるのがハリアーと考えれば人気も納得である。国内市場向けと海外向けの車種開発の折り合いをつけるのに苦労している他のメーカーとは対照的に、市場別につくり分けられるところにトヨタの地力をうかがわせる。

「RAV4」以上「RX」未満

意外なことに、この4世代目で初めてハイブリッドモデルにもFWD仕様が加わった。試乗車のZ“レザーパッケージ”はその最上級グレードで、本体価格は482万円である(ベーシックモデルは約300万円からとレンジも広い)。

ご存じのように、新型ハリアーは現行型カムリから導入されたGA-Kプラットフォームを採用。昨年国内発売された「RAV4」とは兄弟車の関係にあり、ホイールベースもパワートレインも同一である。RAV4よりも140mm長い全長は前後オーバーハングのせいで、その分は突き出したノーズ部分と立体的なリアデザインに充てられている。

「レクサスRX」までは手が出せないけれど、それに近いほどほどのプレミアム感があり、いっぽうで林道の奥のキャンプ場には行かないからRAV4ほどのタフな道具感は必要ではないというユーザー向けには、なるほどうってつけの都市型SUVである。SUVのラインナップではいささか出遅れた感もあったが、さすがトヨタ、気がつけば小から大まで水も漏らさぬ布陣である。

ハリアーはスタイル優先で荷室容量などはある程度割り切ったと明言されているものの、実際にはそれほど心配はいらない。後席は開放感にはやや欠けるものの、レッグルームもヘッドルームにも十分余裕がある。ラゲッジスペース容量も408リッターと国内のユーザーには満足できるものだし、ゴルフバッグも3個積めるという。他のメーカーにはもっと大胆に室内スペースを犠牲にしたおしゃれSUVもあるし、身内に限っても、新型「ヤリス」や「C-HR」のほうがよっぽど割り切ったパッケージングである。

実家にあったら安心

新型ハリアーは自然吸気2リッター4気筒と、同じく2.5リッター4気筒にモーターを加えたハイブリッドの2本立て。エンジンはどちらも40%以上の高い熱効率が自慢のダイナミックフォースエンジンシリーズだ。

2.5リッターエンジンは最高出力178PS(131kW)/5700rpm、最大トルク221N・m(22.5kgf・m)/3600-5200rpmを発生、それに加えて120PSと202N・mを生み出す電動モーターを合計したシステム最高出力は218PSという。街なかや郊外路を普通に走る分には2リッター4気筒ガソリンエンジン(同171PS/同207N・m)モデルでもまあ不満はないが、さすがにこれだけのサイズのSUVとなると高速道路や山道では物足りなさを感じることも多い。常に余裕が欲しいという向きは、ハイブリッド一択だろう。エンジンそのもののパワーには大きな違いはないが、モーターアシストのおかげでなかなかパワフルに走る。

ハンドリングや乗り心地についても不満はない。取り立ててシャープというわけではないが、頼りない感じは皆無で、アクティブコーナリングアシストと称するブレーキによるベクタリングコントロールも装備されているせいか、安定して嫌みなくクリアに走る。むしろレクサスRXや「NX」よりもすっきりと洗練されているように思う。そつなく手堅く、でもSUVだからちょっぴり冒険している雰囲気も持つハリアーは絶妙のポジションを占めている。よほどのこだわりがなければ、あるいはSUVでは不都合だという人でなければ、ハリアーにしておけば間違いない、と思わせる。その分レクサス各車はもっと頑張らなければならないはずだ。

ひさしぶりに実家に帰ったら、マークXがハリアーに変わっていた。しかもおやじよりもおふくろのほうが気に入っている、などという光景が想像できる。刺激的ではないが安心できるトヨタ車である。

(文=高平高輝/写真=花村英典/編集=櫻井健一)

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